高射砲とは、敵航空機を撃墜するために地上に設置された砲のことである。他にも「対空砲」とか「高角砲」と呼ばれたりする。
一言でいえば「砲弾の空中炸裂に巻き込むことで敵の飛行機を落とす大砲」。
現在は長射程で敵を追いかけてくれる地対空ミサイルにほとんど立場を譲っているが
発射装置と弾薬が小型化し連射速度の上がったものは「高射機関砲」「対空機関砲」ともよばれ現在も運用されている(運用中・退役済など国による)
飛んでくる敵機に対し何も対策を取らねばあっという間に機銃掃射や爆弾投下によってやられてしまう。しかし、空高く飛んでいる敵機に地上から小銃を撃っても届かない。そこで登場するのが地上から空に向かって発射する高射砲だ。
ただし、高射砲の照準は容易ではない。敵機の飛行高度、速度、高射砲弾の初速、限界到達射高、風速、弾丸の時限信管の調整といった、刻々と変わる射撃諸元の調整は煩雑を極める。砲弾が機体の至近距離で爆発して飛散する破片が機体を破壊できることを含めても、高射砲の命中率は1パーセント以下であるのが当たり前である。[1]
命中させなくても、敵機付近に弾を飛ばすことによって、撃破こそ出来無いものの、敵戦闘機による爆弾の投下位置をズラしたり、機銃射撃を阻止したり、陣地に接近させないなどといった妨害・牽制効果が期待できる。
高射砲は、状況に応じて対地上戦闘に転用され、戦車を攻撃したり、対人で使用することもある。(対人使用すると被弾者が酷い有様になるし、場合によっては国際条約でしょっぴかれることもあるが…)
設置型の兵器ではあるが、運搬面もちゃんと考慮されており、本体にタイヤが付いているものやトラックに引っ張らせるための牽引装置が付いたもの、或いはダイレクトにトラックや装甲車に搭載されているものなどがある。
大戦中は特にナチスドイツの高射砲が有名で、連合側に「アハト・アハト」と呼ばれて恐れられた「8.8cm FlaK」や、映画プライベート・ライアンの後半で連合軍兵士を次々になぎ倒した"20mm機関砲"こと「2cm FlaK」、2cm FlaKを4門並べた「2cmFlakvierling38」といったものが挙げられる。
軍用機がジェット化するにつれて、高射砲は急速に価値を失い、誘導ミサイルに置き換えられていった。
例えば高度5000メートルを飛行している標的を攻撃する場合、高射砲弾がこの高度に到達するには発射後約10秒かかるが、標的がマッハ1で移動していれば、この間に3キロメートル以上移動してしまう。高射砲がいったん発射した弾丸の飛行経路を変更できない以上、どんな方法で目標の未来位置を予測しても、命中させるのが至難の業であることは明白だった。
高射砲は口径120ミリ級、90ミリ級、75ミリ級の順で姿を消していき、ミサイルでは対応が難しい低空の目標を狙う口径30ミリ前後の機関砲だけが今も残っている。
…こう書かれていると「120ミリ → 30ミリ前後って、なんか弾薬が小さくなってない?」と思うかもしれないが、射程・射高は劣るとはいえ30ミリでも一定の装甲車を撃破しうる威力はあるため地上目標や歩兵の掃討は可能。小型化によって連射速度も向上しているため「高射機関砲」「対空機関砲」とも呼ばれる。また小型化したため車両に搭載・牽引しての運用もしやすくなった。
ただミサイルより低空・近距離、地上目標にも対応できるとはいえ、機関砲の射程外から地対空ミサイルを撃ち込まれては身も蓋もないという重大な欠点があるため、互いの射程を補えるよう地対空ミサイルも同時装備しているものもある。
「主役はミサイルに持ってかれたけど、若干異なる需要を満たしてる」
「長射程のミサイルと比べて一長一短」あたりが適切だろうか。
中にはさらに小口径の20mm機関砲を対空用として運用する例(VADSやCIWS)や、12.7mmや14.5mmの重機関銃を、仰角を大きく取れる対空銃架や対空照準器を用いて対空用としたもの、特に連装銃架によって2連装・4連装し高射機関砲の代わりとした例もある。(ブローニングM2、ZPU-1→ZPU-2、ZPU-4など)さすがに重機関銃レベルでは戦闘機の撃墜は困難だが、歩兵や低空を飛行するヘリコプターには十分な脅威となりうる。
20mm以上は測距センサーや弾道計算機といった照準をコンピュータがやってくれる、補佐してくれるものが多い。重機関銃を連装したものは国によってはあまり重要視されない。(運用中の国もあるが、既に退役済、第一線から退役済、ミサイルに置き換えなど)
ドイツの8.8cm FlaKが地上目標に対しても絶大な効力を発揮し戦車砲が開発されるに至ったことは殊に有名だが、他の国でも同様の試みが行われた。
たとえばソ連軍のT-34-85中戦車の主砲「ZiS-S-53 85mm戦車砲」は「52-K 85mm高射砲」が、アメリカ軍のM26パーシング重戦車の主砲「M3 90mm戦車砲」は「M1 90mm高射砲」がそれぞれ元となっている。
8.8cm FlaK
2cm FlaK
2cmFlakvierling38
ドイツ | 日本 |
掲示板
31 ななしのよっしん
2022/11/19(土) 23:27:19 ID: kY0tyhSP14
高射砲が対戦車で多用されたのは高初速の直射砲だから必要な能力が自然と被るんじゃない?
32 ななしのよっしん
2022/12/26(月) 21:47:14 ID: B8LwUTIurQ
ドイツの88mmFlakは元々水平射撃を考慮した作りになっていて開戦時陸軍用に配備された物などは対空用の照準装置も対空榴弾もない対戦車専用の物だった
ロンメルがアフリカで使ったのが陸軍用か空軍用か知らないが転用のための機材やノウハウは元々あったと言っていいだろう
高仰角用のために背が高過ぎたり重かったり人手が要ったり地上撃ち合い用の防盾がなかったり専門化してない故の不備は細々とあったようだ
砲はともかく防空用の炸裂弾では対戦車用に使えないので88mm以外で現地野戦軍が高射砲を転用した例は実際ほとんどないらしい
開発段階で高射砲をベースに野砲や戦車砲に転用する場合は工場で作り変えるからそもそも問題はないだろう
33 ななしのよっしん
2022/12/26(月) 21:54:07 ID: B8LwUTIurQ
というかすぐ上に十年前から(>>4)書かれてるじゃないか
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最終更新:2025/01/03(金) 10:00
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