細い体に2鰭の背びれ、独特の目つきが特徴。大きめの胸びれを上に向けて、よく泳ぐ。
姿はダツ目のトビウオやメダカに似ていて、図鑑でもボラ目とダツ目は近い位置にある。
口は小さく、泥中の藻類や小型ベントス・プランクトンを食べる。「東京湾の魚類」(平凡社出版)によると、デトリタスはあまり食べないらしい。
熱帯に種類が多く、日本では約16種が見られる(うち本土で見られるのは11種)。
基本的に海水魚で、干潟、砂浜の波打ち際、磯の潮だまりと様々な環境で見られる。汽水域にも現れる種類が多い。
普通のボラは1匹でも気持ち悪いという人がいるが、ときどき大量発生してグロ度を増す。
以前はスズキ目ボラ亜目とされた。ここには近縁のトウゴロウイワシはともかく、カマスやツバメコノシロまで入っていた。現在ではカマスはタチウオ、ツバメコノシロはニベに近いと判明している。
その後もボラ目にトウゴロウイワシが入っている、などの場合がある。
基本的に目立つ模様がなく、正確な同定には細かい部位を用いる。目を覆う脂瞼という組織の大きさで区別できると図鑑によくあるが、多くは図がないし、そもそも幼魚だと見えない。実用的な簡易区別法はそこまで難しくない。
見た目、識別の感覚が淡水魚っぽいためか、海水魚図鑑より淡水魚図鑑の方がだいたい多く載っている。
ボラはまずい、臭いと思われていることが多い。
しかし、江戸時代には一般的に食されていたばかりか、重宝されていた。まずくなったのは産業が発達して生息域の水が汚染されたためである。
現在でも、水のきれいな沖などで捕獲すれば、臭みがなく美味であることが多い。また、臭いのは皮と内蔵であるとも。
沖縄や熱帯域ではタイワンメナダなどの漁獲がよくあり、主要な食用魚である。
また、汚い水にいると思われているが、実際に汚染などの負荷に強いのはボラ、メナダ、セスジボラ、コボラ程度で他の種類はそれほど強健でない(飼育情報のない種類はいる)。
釣りや磯遊びをする諸兄もボラの種数など考えたことがないであろうが、身近でも2種類はいる可能性が高い。
次の各種解説を忙しい人向けにすると、ボラ、セスジボラ、オニボラ、フウライボラ、ワニグチボラは出会う可能性があるかつ区別しやすい。とは言っても上から見て区別するのは厳しい。
日本で最も普通の種で、海があればたいていいる魚。
生息域も広く、内湾から外洋にまで見られ、熱帯~温帯域の海に世界的に分布する。
淡水域に侵入することが多く、飼育下で純化もできるという。
出世魚で、ハク→オボコ→イナ→ボラ→トド、などと名前が変わる。「おぼこ」「いなせ」「とどのつまり」の由来となっている。
別名マボラ、メジロ、イセゴイなど。メナダの別名アカメに対して、クロメという別名がある。
卵巣は高級食材のカラスミの主な原料である。胃の一部はボラのへそとかそろばん玉と呼ばれ、珍味。
胸びれの根本(基部)に青い斑があるため、識別は容易だが、消えることもある。さらに3cm程度ではこの青斑はなく、鱗が見えないなどかなり違う。他に体にうっすら縦縞があることや、慣れれば顔が特徴である。
冬に繁殖し、春に全長3cm程度の子供(ハク)が多数現れる。全長60cmで、最大80cmになるという。
よく水面から跳ねるが、その理由は解明されていない。
ボラの中では北に分布し、北日本や日本海で多い。
体は細く、目や唇がオレンジ色であることが多い。
多くの書籍で全長1mになっているが、実際は70cmも稀。いったい1mとはどういう情報だろう?
ボラのようにメナダも出世魚で、コスリ→トウブシ→メナダ、などと名前が変わる。
別名アカメ、シュクチ、スクチなど。なお、沖縄で大きなボラの仲間をシャクチと呼ぶ。
ボラとよく同じ場所にいるが、全長30cmと小さい。
西日本だと場所によってはボラより多い。北では少ないが、北海道までに見られる。
背中に隆起縁があるため、背中を水から出せば容易に区別できる。
春繁殖のため、子供はボラより遅れて現れる。
名前通り、小型で全長30cm。沖縄で多いという。
体は太短い方で、吻がやや長い。胸びれ基部に金色の斑があるが、目立たないか消えることが多い。
同じメナダ属のアンピンボラ(琉球列島以南に分布)、ヒルギメナダ(八重山諸島以南に分布)はコボラと細かい違いしかなく、区別は困難。
胸びれが黒く(和名では角に見立てている)他のひれは黒や黄色と、ボラの中では初心者向け。
海水魚ショップでときどき販売されており、水族館の節分企画で幼魚がよく展示されるという、最も優遇されている種類であろう。ただし全長40cmになり、あまり小さくない。
熱帯に多く、和歌山県以南で見られる。本土で成魚は見られない。
見慣れない名前だと思うが、幼魚が関東でも見られる。例によって本土で成魚は見られない。全長50cm。
上唇が大きく、小さくてもそれがわかるので区別は易しいほう。大きいと口が切れたようになっており、上唇に突起がたくさんある(閲覧注意?)。逆に口が見えないと、大人はタイワンメナダと区別しにくいらしい。胸びれ基部に小さな黒斑があるが、この特徴をもつ種類は他にもいる。
大人はひれがシャープで、特に尾びれが長い。水中での姿はボラより爽やかではないだろうか?
西表島(石垣島にもいたが、長年見つかっていない)の川には淡水性のナガレフウライボラが生息する。形態上の違いは上唇の形状であるが、大きな個体を捕獲しないと厳しい。
フウライボラは海に、ナガレフウライボラは川に生息するため、普通は採集地で識別してよい。
これも見慣れない名前であろうが、紀伊半島以南で幼魚がわりといるそうである。採集記録は静岡県でもある。
その簡易区別法は、吻がやや短く「他の種類となんか違う」。どうやって区別しろというのか納得いかないかもしれないが明確な特徴がない。
大きくなるとひれがシャープでかっこいい。特に尾びれが長い。あと、胸びれ基部に小さな黒斑が出る。全長50cm。
琉球列島に生息し、紀伊半島以南で幼魚がまれに見つかるカマヒレボラは第二背びれと尻びれが鎌状になる・・・が、大きな個体でないと発達せず、タイワンメナダもひれがシャープなため区別が難しい。次のナンヨウボラにも似る。
タイワンメナダ属でやはり南方系。本土では幼魚のみが見られ、関東にもいる。
他種より体が横に薄く、鱗が大きいが区別は難しい部類。大きいと胸びれ基部に小黒斑がある。
全長30cmのようだが、20cmとか15cmという情報もある。
ナンヨウボラに似ていて、胸びれ基部に紋がないモンナシボラが南西諸島に生息し、紀伊半島以南でも幼魚がまれに見つかる。しかし小さいナンヨウボラも紋なしなので、区別は難しい。
ワニ口!?と思うかもしれない。しかし、口が大きく裂けているように見えるものの、実際の口は小さい。
ボラの口は、藻類をはぎ取るために前から見て「へ」の字型になっているが、ワニグチボラの口は「へ」の字型でない。本種も胸びれ基部に小黒斑がある。
1~2cmの子供が多く、もっと大きいものは潮だまりに現れないようである。成魚は本土では見られない。
小さいときはまばゆい銀色に輝くため、横から見なくても区別は容易。暗色の斑紋が出るときがある。
全体的に丸っこくてかわいらしいが、大きくなると古代魚のような形態になる。全長40cm。
日本では小笠原諸島にのみ生息するため、多くの人にとってレア。
とにかく口が細いため、真横から見れば区別は容易。また、胸びれ基部に黄色い斑がある。全長40cm。
稀にインドヨツメボラという種類が観賞魚として販売されている。ヨツメウオに似ていて、汽水でも飼える淡水種らしいが全長40cmになる。
他に南米淡水ボラという種類もいるが詳細不明。
普通のボラがとても頑丈なため、子供の頃に飼った人がまあまあいるようである。
確かに3cm程度のボラは鱗が見えず銀色に輝いていて、数が多いほど美しい。
しかし、数秒でも水から出るとすぐ死にやすい。汚染・高低温・低比重には強いくせに 飼育できないわけではなく、クラゲのごとく水ごと移動すればよいが、網の中で出水して事故死もする。
鱗が目に見える段階なら、そこまで死なないようであり安心。
観賞魚としてはときどきオニボラが売っている程度であるが、おとなしく人工飼料を食べるので、大きさ以外は飼育に問題はない(後述の注意点も参照)。
水槽にいると以下の作用があるため、飼っている人は地味に多いようである。
この機能を目的に飼う場合は、狭い場所には入れないので注意。他にも注意点はある。
採集するなら、春の海に行けば普通のボラの幼魚がたくさんいるだろう。初夏から所によってはコボラ、セスジボラも現れる。しかし、取り放題のようで意外と捕まえられない。
これは全身で振動を感知し、超反応をするためである。狭い場所で見つけて網に追い込んでも、なかなか入らない。
1匹で飼っている人はいるが、群れでないと水槽に慣れにくいので4、5匹は欲しい(単体でいい種類もいる)。
夏、死滅回遊魚がいる季節には多くの種類が期待できる。※ただし太平洋側に限る?
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最終更新:2024/12/23(月) 10:00
最終更新:2024/12/23(月) 09:00
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