キセル乗車とは (キセルジョウシャとは) [単語記事]

キセル乗車とは、（本来）鉄道における不正乗車手口の一つである。単に「キセル」と呼ばれることも多い。
不正乗車全般を指すこともあるが、こちらは「広義の『キセル乗車』」として簡単に説明する。

狭義の「キセル乗車」

手口

不正乗車の中でも、「乗車可能なキップ」と「目的地で降車可能なキップ」を用い、途中の運賃を払わないで乗車する行為を指す。

要するに、「出かけた帰りに初乗りのキップで乗車し、地元の駅は普段使っている定期で降りてしまう」ような行為のことである。改札口のそばに初乗りキップが落ちているのは、これによる可能性が高い。

語源

この言葉の語源は喫煙具の「煙管（きせる）」で、由来はその吸い口と雁首（煙草を乗せる部分）、つまり両端が金属（カネ）で、真ん中が竹製や木製（=カネじゃない）であることから。つまりはシャレである。

キセル乗車	乗車駅からのきっぷ（金を払って購入）	無賃乗車（金を払っていない）	降車駅までのきっぷ（金を払って購入）
煙管	煙草を乗せる部分（金属）	管（金属を使っていない）	吸い口（金属）

対策

かつて自動改札機がなかった時代はこの手口を抜本的に取り締まる術がなく、あちこちで横行していた。そのため鉄道各社は頻繁に車内検札を実施し、厳しい態度で取り締まりを行った。これが旅客の側から非難されることもあったが、それだけ深刻な問題だったということである。

その後自動改札機の普及により、降りるときに使うキップに「乗車記録」を加えてチェックするなど各社が対策を強化した。さらに近年広く普及したICカード式乗車券は「どこで乗り、どこで降りたか」に基づき運賃計算をしているため、事実上この手口は封じられている。但し降りる駅が無人駅で改札のバーも無いような駅ではその限りではない。（防犯カメラも有るのでいずれバレるが）

JR九州ではこういった行為の横行に業を煮やし小倉駅で券売機の初乗り運賃発売を中止し、必要であれば駅員に対応して発券してもらう方式になった。但しこの方法では初乗りの次の運賃でキセルされるのではという声も上がる。

罰則

これらの行為は旅客営業規則などでの処罰対象となり、最大で運賃の3倍相当の罰金^[1]が科せられる（各社規定により異なる）。定期券を併せて使った場合、その有効期間内に毎日不正したと見なされるため、100万円以上の高額にのぼることもある（JR東海管内の各駅でよく掲示が見られる）^[2]。悪質な場合は詐欺罪として刑事罰に処されることもあるので、このような行為は絶対にしないこと。

広義の「キセル乗車」

上記の「狭義のキセル乗車」以外にも、「鉄道不正乗車全般」を「キセル（乗車）」と呼称する事例が広く見られる。上記の由来通り、本来は「2枚の乗車券を使い運賃の一部をごまかす」行為以外は指さないのだが、例えば「そもそもキップを買わずに乗る」「対象でないのに割引運賃で乗る」などの不正乗車全般を指すことがある。
ニコニコ大百科においても、例えば「2ちゃんねるの歴史」の中ほど、2007年 8月の項に「埼玉大生がキセル乗車～」とあるが、この行為は「改札口のすり抜け」であり、狭義の「キセル乗車」には当たらない。

とはいえ、現在では鉄道における不正乗車全般が「キセル（乗車）」と呼ばれることが非常に多くなっているのが実情である。狭義の手口が一般的でなくなったことも一因だろう。

撮り鉄趣味が、同じく撮り鉄趣味の男性を通報したことで
「キセルを通報するなんて撮り鉄界のタブーを犯した」と集団暴行した事件もある。（後述リンク）

また、ラッシュ時などにおいて終点に近い駅から確実に座るため、敢えて逆方向の列車に乗って折り返し乗車をする行為も不正乗車である（大回り乗車が認められている区間であっても折り返しは違反になる）。どうしても折り返し乗車したいのであれば、きちんと折り返し分の切符を買うか、終点までの区間の定期券を（差額は自腹を切って）予め買っておくべきである。

他にもネット予約の座席指定サービスなどを使って特急列車で検札を受けない指定席の座席を確保し、特急の利用できない青春18切符で乗車するのもキセルである。（下車駅で駅員さんにバレるのでやめておこう）

悪質な撮り鉄連中の中には改札のセンサーを体で塞いで通り抜けたり切符を通す人に張り付いたりしてそもそも運賃を支払わない例もある模様。（普通に通った場合と比べ、IC カードをかざした時のピピっという音や切符を通す時のカチャカチャ言う音がしないので駅員さんにすぐバレる）

アイドルのおっかけグループなどで乗車駅で入場券を使って新幹線ホームに入り新幹線に乗り込み、何らかの方法で検札をやり過ごし、下車駅で二枚以上の入場券を持って新幹線ホームに入場している仲間と改札から出るという方法もあったという。（当たり前だが入場したときと出場した時で人数が違うこと、入場したときに一人なのに2枚分の入場券記録が残るのでどうやっても不自然にみえて直ぐにバレてしまう）

期限切れの定期券の使用は意図せず不正乗車となってしまう可能性のある行為であり注意が必要である。自動改札ならそもそも使用できないので問題ないが、地方の自動改札のない路線で駅員や運転手、車掌に提示する場合に発生しうる。

近年ではどこかの外国人 Youtuberが長崎から青森まで競争しながら無料で日本を縦断するという企画をやっていたがその際に特急電車・新幹線などでトイレに篭って無賃乗車を行い。駅員さんに連れ出されるも仮病を装って倒れ込み隙を突いて逃げて別の電車に乗り込むという馬鹿げた行為を行う動画を上げ炎上したこともあった。動画内では他にもバスで運賃が足りず警察署に連行され警察が運賃を肩代わりする。高速バスに勝手に乗り込もうとし気づいた運転手が止めると言った一幕もあった。（他にも高級ホテルの朝食を適当な部屋番号を告げ無料で食べるシーンもあった）当たり前だが外国人でも不正乗車は許されない。ジャパンレールパスを買って移動していただきたい（日本に来る金あるならジャパンレールパス代5万なんて安いでしょ？ましてや有名Youtuberならなおさら）

2024年 7月26日にはハピラインふくいの小川社長が社員用の職務乗車証を持たず車掌が検札した際も名刺を見せ続けて対応しようとする「不正乗車」を行っていた事が毎日新聞により報道されている。社員用の乗車券を持っていたので不問にした模様である。自社とはいえ鉄道会社の社長が不正乗車をする例はここくらいであろう。