これができない理由がいくつかあります。
◆交通や箱の問題
交番は箱さえあればよく、省スペースでどこでも設置できます。一方で専門の装備と駐車スペース、更に緊急車両の走行や出入りができる場所を都市部で確保することは難しいです。
特に救急車は救急車単独では機能せず、予備装備の確保や日々整備できるスペースが必要で、パトカーのように置いておけばOKというわけにも行きません。従って病院または消防署などの大きい建物に設備を設置し、集約することで機能するようになります。
例えば六本木交差点のど真ん中に交番はありますが、ここに救急車出動拠点を設置することはかなり無理があると分かるでしょう。
◆費用面
救急車を動かすためには、救急隊員のほか後方での整備や受け入れのための人間なども必要で、つまるところ人材と設備が結構大規模になります。
例えば交番のようにして各地に1台ずつ置いていくとその場所ごとに大きな費用や設備が必要になってしまいます。そのため、集約して置いておくことで台数をより増やすことができます。
例えば、ド田舎に点々と高齢者が住んでいて全部訪問介護する場合と、老人ホームで集中管理する場合、どちらが多くの老人の世話ができるかというと後者です。同様に、消防車や救急車は集約したほうが多くの台数を確保でき、むしろ遠くの人にもメリットがあります。
◆代替
場所や設備の制約から救急車や消防車はバス停のように設置できません。そこでクリニックや消防団といった初動や初診が行える設備が各地に揃っています。
◆性質の違い
警察との大きな違いは、警察や消防は基本的に現場に「出向く」ことが多いのに対し、救急は「集める」必要があります。つまり現場で解決するのではなく、患者を輸送しないとならず、輸送先が確保できないとなりません。輸送先は救急対応ができる設備のある病院等に限られるため、救急車を各地に配備しても、病院自体は大きいものが必要で各地に設置が難しいです。
結果的に救急車が物理的に台数が足りたとして、受け入れ先が無いとどのみち無駄になってしまいます。
事実、救急車に乗ったものの受け入れができずそのまま死亡してしまう例も報道されています。救急車の台数よりも、受け入れができる医療体制の保全が大事です。