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キヤノンITS、西東京データセンターで液冷対応サーバーが実稼働開始

 キヤノンITソリューションズ株式会社(以下、キヤノンITS)は13日、同社の西東京データセンターで、サーバーの液冷設備が12月から実稼働を開始したと発表した。

 キヤノンITSでは、CPUやGPUの直上に取り付けたコールドプレートまで冷却液ホースを引き込み、チップを冷却する直接冷却方式(DLC:Direct Liquid Cooling)に対応。12月から、顧客が所有する、DLCに対応した高密度型サーバー「HPE Cray XD2000」を複数台搭載したラックの運用を開始した。

 DLCへの対応では、サーバー室向けの空調機で利用する、空冷モジュールチラーで生成する冷水を活用。冷水の配管を分岐してサーバー室内の床下に引き込み、ラック内の熱交換ユニット(CDU:Coolant Distribution Unit)に供給している。CPU/GPUの熱はCDUで冷水と熱交換され、屋外に排出される。サーバー排熱の70~80%をCDUで回収し、残りの20~30%は通常の空冷方式で冷却する。この仕組みにより、1ラックあたり100kWの超高負荷サーバーの冷却に対応できるとしている。

液冷サーバーのラック設置イメージ。床下の配管から冷水をCDUに供給する
水冷設備外観図
冷水を生成する空冷モジュールチラー

 キヤノンITS 取締役常務執行役員の吉田啓氏は、キヤノンITSのITプラットフォーム事業部門全体でも売り上げを順調に伸ばしており、その成長の中でもとりわけデータセンター事業が重要な成長ドライバーとなっており、事業部門全体売り上げの約40%を担っていると説明。今回、第1号となった顧客は製造業で、機密性の高いデータを扱っている顧客だとして、高性能サーバーは生成AIなどのAI用途だけでなく、製品の設計やシミュレーションなどの需要も大きいとした。

 ITサービス技術統括本部 統括本部長の郡田江一郎氏は、西東京データセンターでは空調機の運転を台数制御から周波数制御に変更することで、空調機電力を約30%削減、冷凍機の冷却水の温度を設計値よりも1℃下げてききの効率改善を図ることで、熱源機器電力を約10%削減するなど、省エネルギーの取り組みを進めていると説明。一方、IT機器の消費電力増大、高負荷化への対応として、液冷方式によるサーバー冷却サービスを開始したと語った。

 今回、西東京データセンターで稼働を開始した液冷対応サーバーは、製造業の顧客が利用するもので、3月頃にサーバー設置の打診があり、その後実際に設置が決まってから、4カ月程度で冷却設備を整えており、顧客の意志決定から非常に早くサービスを提供できたと思うとして、こうした顧客からの要望に柔軟に対応できる点も、キヤノンITSのデータセンターサービスの強みだと語った。

 データセンターサービス本部 プロジェクト長の武田智史氏は、西東京データセンターでは日本データセンター協会(JDCC)が定めるティア4レベルの安全性を備えた設備を提供しており、液冷設備でもこの設計思想を踏襲していると説明。冷水配管は2Nの冗長構成で、サーバー床下に設置した冷水配管はループ構成となっており、万が一漏水が発生した場合でも、障害点を止水することで冷水の供給が継続できるようになっているなど、「顧客システムを止めない」をコンセプトに、細部にまで安全性に配慮した冷却設備を提供するとしている。

キヤノンITS 取締役常務執行役員の吉田啓氏
ITサービス技術統括本部 統括本部長の郡田江一郎氏
 データセンターサービス本部 プロジェクト長の武田智史氏