個人株主の獲得に企業が動き出している。先進企業は、個人株主の獲得でPBR向上を狙う。
東京証券取引所が上場企業に「PBR改善要請」を発出して以降、多くの企業が政策保有株式いわゆる持ち合い株の売却を進めている。そこで多くの企業が注目しているのが、個人株主の存在だ。
2024年から始まった新NISA(少額投資非課税制度)を利用して、個別企業の株式を買う個人投資家が増えている。東証によると、23年度末時点の個人の株式保有金額は170兆円となり、過去最高を更新した。個人株主の獲得は企業のPBR(株価純資産倍率)にどのような影響をもたらすのか。
PBRは、ROE(自己資本利益率)とPER(株価収益率)の掛け算で表される。ROEは、株主資本からどれだけ効率的に利益を生み出したかを示し、企業による過去から現在の実績を表す。要は、「どれだけもうけたか」である。もう1つのPERは、企業のリスクと成長性を表し、将来どれだけ利益が向上するかという期待を表わす。要は、「どれだけ期待できるか」である。
結論を言うと、個人株主の獲得は、ROEとPERの両方に効いてくる。個人株主の獲得を、PBR向上につなげることができる。
売上拡大につなげる
個人株主の獲得を売り上げや利益の拡大につなげているのがカゴメだ。同社は、個人株主を積極的に獲得する「ファン株主」戦略を実践している。23年12月末時点で、個人株主は19万5362人である。株主数ベースで99.5%を占めている。
狙いは、業績への貢献だ。同社が個人株主と一般消費者のカゴメ商品の年間購入額を調べたところ、個人株主は一般消費者と比べて10倍以上の商品を購入していることが分かった。23年2月には、主力商品の原料であるトマトをはじめとした農産物の高騰に伴い、主力商品を値上げした。同社のIR(投資家向け広報)担当者は、「値上げで競争環境が厳しい中でも自社を選び続けてくれておりファン株主の存在が業績の下支えになっている」と話す。ファン株主が、消費者離れや売上減少を抑える役割を果たしている。
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