カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタール(ACT)の買収提案に直面する、セブン&アイ・ホールディングス(HD)。ACTによる買収か、創業家によるMBO(経営陣が参加する買収)か、独立を維持して成長を目指すのかーー。前回(「米国セブンイレブン、DXで日本より進化 クシュタールに勝る5.99ドル弁当」)記事に続き、米店舗のリポートを届けながら、岐路に立つセブン&アイHDの未来を占う。

米セブンイレブン店内にあるメキシコ料理ファストフード「ラレド・タコ・カンパニー」
米セブンイレブン店内にあるメキシコ料理ファストフード「ラレド・タコ・カンパニー」

 次に訪れたのは、全米に9カ所ある「エボリューションストア」。新たなテクノロジーやサービスの検証を行う実験的な店舗という位置づけだ。この店では、葉巻の販売や、大量のビールを冷蔵する売り場「ビアーボックス」、飲料用商品棚の新たなガラス戸など、大小様々な工夫を凝らしていた。

 最大の特徴が、店内にあるメキシコ料理のファストフードレストラン「ラレド・タコ・カンパニー」だ。米国のZ世代やミレニアル世代の間では、メキシコ料理の人気が高まっている。手軽に食べられて、野菜や豆など健康的な食材が若者を引き付けている。

 ラレド・タコ・カンパニーは、セブン&アイHDが2018年に米スノコLPからコンビニ約1000店舗を買収した際、手に入れた。21年に買収したコンビニ「スピードウェイ」の店内にある「スピーディ・カフェ」や、「レイズ・ザ・ローストチキン&ビスケッツ」を加えた3つのファストフードを併設した店舗は約1100店舗に達する。

米セブンイレブンのレストランブランド「レイズ・ザ・ローストチキン&ビスケッツ」の商品
米セブンイレブンのレストランブランド「レイズ・ザ・ローストチキン&ビスケッツ」の商品

 米セブン―イレブン・インクのシニアバイスプレジデント、ウィリアム・アームストロング氏は、「ここ5年ほど、どのコンビニもレストラン事業に注力している」と話す。背景には、「米国コンビニの最大の課題である目的地化」(商社幹部)がある。全米コンビニエンスストア協会(NACS)によると、ガソリンスタンド(GS)併設店で、給油したドライバーが入店する割合は58%にとどまる。収益の底上げには入店を促す魅力が不可欠で、その1つがレストランというわけだ。

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