「もうええでしょう」
2024年に話題になった言葉に贈られる「ユーキャン新語・流行語大賞」でこの言葉がトップ10に選ばれた。米ネットフリックスが日本で制作したオリジナル映像作品「地面師たち」で生まれたセリフだ。不動産詐欺グループを題材にしたドラマ内で、俳優のピエール瀧が演じる元司法書士の詐欺師が、強引に話を進めようとする場面で何度もこの言葉を口にする。
作品のヒットに加え、SNSではインパクトの強いセリフそのものが話題になった。およそ10年前、動画配信サービスの「黒船」と呼ばれながら日本市場に参入したネットフリックスは今や、流行を生み出す一大メデイアとなった。
こうした潮流は数字にも表れる。24年1~6月期、同社の日本国内の会員数は1000万人を突破した。契約者の世帯数を示すため、実際の視聴者数は2000万人程度と見られる。6人に1人がネットフリックスの視聴者という計算だ。
世界全体では、24年9月末時点で会員数が2億8272万人に達した。新型コロナウイルス禍が始まって会員数が急激に伸びた反動から、22年の1~6月期に同社として初めて減少に転じるも、広告付きの低価格プランの導入といった施策で再び成長軌道に戻った。
23年12月期の売上高は337億ドル(約5兆1600億円)、純利益は54億ドル(約8200億円)とそれぞれ過去最高を更新した。
ネットフリックスの成長を支えてきたのが、独自制作のオリジナル作品だ。特に、各国・地域の拠点で制作される“ローカルコンテンツ”の存在が大きい。制作した国の視聴者獲得に直結するだけでなく、他国のユーザーにも配信することでコンテンツを多様化し、サービスの魅力を高めている。
ローカルオフィスに権限委譲
例えば冒頭の「地面師たち」。24年7月末の配信以降、日本の視聴ランキングで6週連続首位の大ヒットを記録した。その一方で、台湾や香港、韓国、タイ、シンガポールといったアジア圏の国・地域でも軒並みトップ10に入った。
原作漫画を実写化した映画「シティーハンター」も、フランスやイタリアといった欧州圏、さらにはケニアやナイジェリアなどアフリカ圏でも人気を集め、50カ国以上でトップ10入りを果たした。
ネットフリックスの独自作品は、世界各地に置かれた制作チームが主導する。現在、本社以外に29のローカルオフィスがあり、約50カ国で作品制作を進めている。
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