東京五輪・パラリンピック期間中の首都圏の宿泊施設の料金がすでに高騰し始めている。宿泊予約サイト「ブッキングドットコム」で、開会式が開催される2020年7月24~25日の都心部の宿泊施設を調べると、軒並み通常時よりも高い料金だった。10万円を超える民泊も多く、東京・四ツ谷駅から徒歩10分のアパートの一室を利用した民泊は45万円だった。通常は2万円程度の部屋だ。

東京では、五輪・パラリンピックを前にホテルの建設ラッシュが続く。みずほ総合研究所は、供給増などにより2020年はホテルが不足しないと試算しているが、8月に限れば不足するとしている(写真:PIXTA)
東京では、五輪・パラリンピックを前にホテルの建設ラッシュが続く。みずほ総合研究所は、供給増などにより2020年はホテルが不足しないと試算しているが、8月に限れば不足するとしている(写真:PIXTA)

 料金高騰の要因の1つは、主要ホテルの多くがすでに大会組織委員会や旅行会社などに押さえられているからだ。ブッキングドットコムで調べると、20年7月24日~25日の東京都心で宿泊可能な施設数は623軒。19年12月20日から1泊2日で宿泊可能な施設は1549軒だから、その半分以下ということになる。宿泊施設の種類も、19年12月20日~21日ではホテルが4割を占めるが、20年7月24日~25日は6割がアパートタイプ(民泊)で、ホテルは1割程度だ。ホテルはほとんど予約できず、そのあおりで民泊の料金も高騰している。

 大会組織委員会が仮押さえしている宿泊施設は1日最大4万6000室程度のようだ。一部旅館などもあるが、多くがホテルだ。五輪の規則で、開催国は五輪関係者のために宿泊施設を用意することが決められている。14年の組織委発足以来、各ホテルと順次交渉を始め、契約をしていったという。国際オリンピック委員会(IOC)の関係者が泊まる都内高級ホテルの中には、全館貸し切りになっているものもある。

 一方で、組織委は19年9月末から仮押さえした部屋の一部を順次手放している。組織委が各国関係者にヒアリングし、現時点で不必要だと分かる客室は、ホテル側に戻しているという。どの程度の客室がリリースされたかについて組織委は公表していない。

 だが、ホテルに戻された客室が市場に出回っているかというと「まだ動きは鈍い」(業界関係者)ようだ。「市場に出すタイミングや価格を決めかね、競合の出方を見ている」(同)。また、旅行会社が押さえることもあるうえ、全館貸し切りの高級ホテルだと、「セキュリティーの観点から、一部がリリースされても一般の人を泊めるのは難しい」(ホテル関係者)という事情もあるようだ。

 もちろん、ホテル側としてはいつまでも空室にしておくわけにもいかないので、組織委が手放した客室を今後、徐々に市場に出すだろう。東京五輪・パラリンピック観戦のためにこれから宿泊施設を予約する人にとっては、どのタイミングで予約するのが最適なのか、判断が難しい状況になっている。

このシリーズの他の記事を読む
まずは会員登録(無料)

登録会員記事(月150本程度)が閲覧できるほか、会員限定の機能・サービスを利用できます。

こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。フォローすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。