コンビニエンスストア大手のセブン&アイ・ホールディングス(HD)の買収を狙うカナダのアリマンタシォン・クシュタール(ACT)。前回(セブン狙うクシュタール店舗ルポ 「日本最強説」揺るがす食とテック)に続いて、ACTが創業地で展開するコンビニブランド「クシュタール」の店舗や、セブン&アイHD買収の狙いをリポートする。

店内キッチンでは朝から午後まで2~3人がサンドイッチやカット野菜、フルーツの詰め合わせなどを調理している
店内キッチンでは朝から午後まで2~3人がサンドイッチやカット野菜、フルーツの詰め合わせなどを調理している

 前回取材した1店舗目は、カナダ・モントリオールのダウンタウンに位置する都心の路面店だった。2店舗目は、同じく都心ではあるが、高層オフィスビルの地下にあるという点で立地が異なっている。最大の特徴は、店内キッチンだ。朝から午後まで2~3人がサンドイッチやカット野菜、フルーツの詰め合わせなどを調理し、オフィスに出勤するビジネスパーソンの朝食やランチ需要に対応している。バックヤードで総菜を調理する日本の食品スーパーに近いだろうか。店内にクイックサービスレストラン(ファストフード)も併設しており、店舗売り上げの59%は食品が占めているという。

 北米のコンビニは、郊外在住で日常的に自動車を使う消費者のためにガソリンスタンド(GS)に併設していることが多い。ACTがカナダに持つ約1700店舗のうち、GS併設型は1150店で7割弱に相当する。米国は7100店舗のうち、約8割の5700店とGS併設型の割合は更に高い。2024年4月期の連結収益でも、4分の3が燃料で、燃料以外の商品・サービス(フランチャイズ料含む)は4分の1にとどまっている。

 一方、粗利益を見ると、非燃料が2分の1を超えている。燃料分野はどうしても油価など外部環境に左右されやすく、非燃料分野の成長は経営基盤の安定につながる。ACTは「勝てる顧客戦略」と題し、新鮮な食料品の充実、自社飲料の品ぞろえ強化、プライベートブランドの拡大を経営戦略に掲げている。

 ACT創業者のアラン・ブシャール会長は約20年前の05年にも、セブン&アイHDに買収を提案したが、「当時はセブン&アイが持つ北米のコンビニ事業が対象だった」と語る。日本のセブンイレブンが持つ食分野の強みを手に入れるため、事業全体の買収提案に発展した可能性がある。

ファストフードとの競争

 クシュタールの店内キッチンを見て、日本のファミリーレストランの草分け、横川竟氏へのインタビューを思い出した。ファミレスの前に食品スーパーを経営していた横川氏は、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、「家庭に密着した生活者向けビジネスが生き残る」と話した。よろず屋から百貨店や総合スーパー、更にコンビニに進化した日本の小売業は、「(食品)スーパーに戻る」と予想。コンビニは便利さや生活密着度で優位に立つが、「店内で加工できないという弱点がある」と指摘した。(関連記事:すかいらーく創業の横川竟氏「外食の安売りは僕の反省でもある」

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