「本の現場」
「本の現場」(永江朗)は、どんな人がこういう本を買って読むのだろうという興味だけで図書館から借りてきた。10年近く前、この人の「不良のための読書術」が長男の本棚にあったので拾い読みしたことがあるのだが、私とは波長が合わなかったので、結局熟読することなく終わってしまった。目次を紹介すると
<本はどう生まれているか
01 新刊洪水
02 本を出したい
03 ネット発の本
04 ライターの事情
05 編プロのいま
06 情報の無料化
本はどう読まれているか
07 アサドクとドクソン
08 「読書」ばなれの根拠
09 新書ブーム
10 書店をディレクションする
11 本屋大賞と読ませ大賞
12 ベストセラーは誰が読んでいるのか?>
面白く読めたのは、「新刊洪水」と「本を出したい」。
2009年の「出版指標年報」(社団法人全国出版協会・出版科学研究所)によれば、88年から08年までの20年間で、新刊発行点数は倍増。販売部数は2割強減少している。数字で言うと、発行点数1点につき平均すると88年に2万5千部売れていたものが、08年では1万部しか売れなくなっている。いわゆる「半値八掛け」だ。では、売れないのにどうして新刊の発行が増えていくのか? その一因として新たなビジネスモデルとして登場した「共同出版・協力出版」の現実は? そして「本を読む人が減った」というのは本当か?
ところで、こういう本はどのくらいの人が読むのだろうと裏を見ると「第一版二刷」となっていた。ちゃんと「増刷」されている。ただ、最初の発行部数が分からないので実際にどのくらい売れたのかは分からないのだけれど。ネットで小説を書き、本にして出版したいと思っている方は一度目を通しておくことをお勧めする。
参考までに「共同出版・協力出版」には「営業トーク」の定型があり、お客とのやりとりをご紹介すると。
<「まず、初見ですごく褒めます。すごく褒めて、でも残念ながら企画出版で出すのは難しい。共同出版・協力出版をお勧めします、と続けます。
そのときの殺し文句が「企画出版は無理だけど、このまま埋もれさせてしまうのは惜しい」「この本は社会に必要な本だ」「多くの人の目に触れてもらうべきだ」など。
すると客は「なんだ、企画出版では出してもらえないのか」とがっかりするのではなく「そうか、やっぱりオレ(ワタシ)の文章にもいいところがあるんだ。認めてくれる人がいるんだ」と嬉しくなるというのである。>
「もうすでに本はたくさんあるのだから、著者にお金を払ってまで新しい本を作る必要はない。これからは書きたい人からお金をもらって本を作る時代だ」(末井昭氏)
なるほど!