脇役スタンド・バイ・ミー
「脇役スタンド・バイ・ミー」沢村凛
実は作者の沢村凛さんを知ったのは「最後の恋」(新潮文庫)というアンソロジーに収録されている「スケジュール」を読んでからだ。どこにでもいる「計画好き」(実は私も計画を立てるのが好きだった。もちろんたいていは「計画倒れ」になるのだが)の二十五歳の「ああ、こういう人いるよなあ」という「ふつうの女性」が主人公のお話だが、人物造形がうまくできていて、手抜きになりがちな作品が多い中でキラリと光るものがあった。で、図書館で借りてきたのが、本書だ。こちらも登場する人物は近所に何人かはいそうな「ワケあり」なのだが、いたって「普通」の人たちだ。上手いんだよなあ、ここらへんが。
六編の連作短編集で、どの物語にも登場するのが脇田刑事。名前から推測できるようにこの人が脇役として、起こった事件の当事者たちをサポートする。
ところで、脇役といえば私がすぐ思い浮かべるのは樹木希林さん。ドラマや映画だけでなくCMでも彼女の存在感は際立っている。シリアスなものでも、コミカルなものでもオールラウンドでこなす数少ない女優さんだ。では、男優で脇役と言えば…、いやもう少し絞って、本書の「脇田刑事」をやらせるなら、と考えたら、中井貴一さんかなあ、やはり。
「スタンド・バイ・ミー」、意味は「私のそばにいてほしい」とある。私はピッタリだと思うのだが、違うんだろうなあ、読んだ人それぞれに。
脇役と言えば忘れてはならないこの人、樹木希林さん。まだお元気だったころ、自分の生き方をこんな風に仰っていた。
<私はこれがチャンスだとか、これで有名になってやろうという気は一切ないですね。役者をやるためだけに生きてるわけじゃなくて、偶々なりわいとしてこの時期は役者だったというだけですから。その中で何か輝かしい存在になるということを全然いいと思わない。役者としてはそこそこですけど、人間として目指すところはそこそこでは嫌なんですねえ。そういうところでは大物かもしれない>
「大物かもしれない」、確かに!