Trash and No Star

本、時々映画、まれに音楽。沖縄、フェミニズム、アメリカ黒人史などを中心に。

Best Movies of 2024(というか、2025年に観たい映画)

 2024年に映画館で観た映画を数えたら、以下の3本しかありませんでした。これでは年間ベストも何もなく、年末記事など書きようもない。「今年こそ映画館に行くぞ」とイキっていた年始の自分はどこに行ったのか。

 

 

 また来年も同じことを繰り返すだけかもしれませんが、どのタイミングで本気で映画館に行くべきなのか、目標を明確にするためにも、各種メディアが発表した「Best Movies of 2024」を集計してみました。「食べログで高評価の店だけ行く人」みたいで本当はこんなことやりたくないのですが、かと言って、話題作を片っ端から見る程の余裕は自分にはもうないわけで。まあ、タイパ重視というか、貧乏性というか、要するに権威主義なのでしょうね。それはまた別の課題として受け止めておきたいと思いますが。

 リストの選定はテキトーです。「best movie 2024」でググって上位に出てきたものを黙々と点数付けして集計しただけです。国によっては公開年が前年になるんじゃないかとか、配点の際に映画専門メディアかどうかを考慮した方がいいとか、本来はもう少し厳密にやらないとダメでしょうが、そこに時間をかけ過ぎてもしょうがないなと。途中から、「あ、さっきから同じようなリストばかり集計してるな」というタイミングが訪れたので、そこで終わりにしました。

 

 しかしそれにしても、自分にとって映画とは何なのか? こうした「究極の問い」に立ち返ってしまう時点で、もう映画を見失っていると言わざるを得ないわけですが、もちろん、誰かに観て欲しいと頼まれているわけではないし、映画なんて観なくても死にはしないわけですが、この時代を生きる上で、少なくともその空気感を知る上で、少なからず当てにしてきたメディアではあるわけで。

 いや、「メディア」というのはなんだか良くないな。しかし「芸術」として接しているのかと言えば、それも違う気がする。もちろん、「エンターテインメント」でもないような。まあ、「映画」ですね、やっぱり。映画は映画です。「動く物語」で矮小化されることのない、運動それ自体としての映画。なおかつ、それでもふと時代を語ってしまう装置としての映画。そんな映画なるものとの接点を、来年こそはどうにか見い出していきたいと思います。

 

 それでは、行ってみましょう。すでに国内公開済みのものは、2024年から持ち越していく宿題として。これから国内公開の予定が立っているものは、曲がりなりにも映画好きを自称しながら2025年を生きる上での目標として。誰に頼まれるでもなくここに記録し、鑑賞することを勝手に約束したいと思います。

 

******

 

20

Conclave

Directed by: Edward Berger

[Focus Features]

エドワード・ベルガー監督。『教皇選挙』の邦題で、2025年3月20日からの全国公開が決まっています。ドイツの監督らしいけど、残念ながらまったく存じ上げない。あらすじを読む限り、宗教映画というより政治映画っぽいのかな。あまり構えすぎなくとも、スピルバーグ監督の『リンカーン』的に楽しめる作品かも知れませんね。でも、予告編はなかなかシリアス。

 

 

19

Poor Things

Directed by: Yorgos Lanthimos

[Searchlight Pictures]

ヨルゴス・ランティモス監督。『哀れなるものたち』の邦題で、2024年1月26日にすでに国内公開されています。これを見逃したのは、はっきり言って致命的でした。相当話題になっていたし、『籠の中の乙女』も『ロブスター』も観ているので、せめてここはフォローしたかったなと。痛恨の見逃し。辛すぎて、せめて原作を読もうという気にもなりませんでした。

 

 

18

Hit Man

Directed by: Richard Linklater

[Netflix]

リチャード・リンクレイター監督。そのまま『ヒットマン』の邦題で、2024年9月13日にすでに国内公開されているようです。リンクレイターの新作まで見逃していたとはね、、、というガッカリ具合なのですが、とは言え直近の監督作らしい『30年後の同窓会』も『バーナデット ママは行方不明』も観ていないので何も言えないか。そもそも公開情報すらフォローできていなかったので、そういう一年だったとしか言いようがないです。

 

 

17

A Different Man

Directed by: Aaron Schimberg

[A24]

アーロン・シンバーグ監督。アメリカ在住、メディアや映画祭も注目する新進気鋭のようですが、今のところ、国内上映の情報は見当たらないですね。A24ならそのうち来るのかな。公式サイトのあらすじを読む限り、「俳優を目指す男が、外見を劇的に変えて変身しようと大胆な手術を受けた結果、ものすごい顔になってしまう」という話のようです。Wikipediaによると、2019年の監督作『Chained for Life』も話題作だったようですが、こちらも国内公開の情報はなさそう。

 

 

16

Green Border

Directed by: Agnieszka Holland

[Kino Świat]

アグニエシュカ・ホランド監督。『人間の境界』の邦題で、2024年5月3日にすでに国内公開されているようです。ポーランド出身の監督らしいですが、Wikipediaには日本語ページもあり、地味ながらも真摯な支持を得ているタイプの人かもしれません。あらすじを読む限り、移民や難民、共産主義、暴力といった言葉が飛び交っているので、政治に翻弄される市井の人々を描いたドラマ映画なのでしょう。軽い気持ちで鑑賞できる作品ではなさそう。

 

 

15

Do Not Expect Too Much from the End of the World

Directed by: Radu Jude

[Mubi]

ラドゥ・ジューデ監督。ルーマニアの監督らしいですが、こちらもWikipediaに日本語ページがあるので、映画ファンの間では有名な人なのかも。調べてみると、2021年の『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』なる作品が映画祭で最高賞をもらっているみたいですね。続く長編が本作で、映画祭という限定された環境とはいえ、『世界の終わりにはあまり期待しないで』の邦題で、2023年12月17日に国内公開されているようです。タイトルが良いな。再度、鑑賞可能な状態になることを祈ります。

 

 

14

All of Us Strangers

Directed by: Andrew Haigh

[Searchlight Pictures]

アンドリュー・ヘイ監督。『異人たち』の邦題で、2024年5月3日にすでに国内公開されています。どこかで聞き覚えのある名前だと思ったら、『さざなみ』の監督なんですね。あれはかなりの傑作だったような。こちらも相当話題になっていたので、やはり手段を選ばずに劇場に駆け込むべきでした。深く反省。今から始める周回遅れの予習に代えて、せめて大林宣彦監督の『異人たちとの夏』を観ておくと理解が深まるのでしょうか。

 

 

13

Perfect Days

Directed by: Wim Wenders

[BITTERS END]

ヴィム・ヴェンダース監督。そのまま『PERFECT DAYS』のタイトルで、2023年12月22日に国内公開されています。Twitterにも書いたような気がするけど、ヴィム・ヴェンダースってこんなにメジャーだったっけ?という違和感が第一に来るくらい、多くの人が揃いも揃って観ていた印象。一方、村上春樹ディスるような感覚で本作をディスる感じの動きも目立っていたので、現代における何かの境界線を設定してしまっているのかも。そういう意味でも気になる作品。

 

 

12

Hard Truths

Directed by: Mike Leigh

[StudioCanal]

マイク・リー監督。有名映画祭の常連、イギリスの巨匠ということで、Wikipediaにも日本語ページがありますね。確かに、『ターナー、光に愛を求めて』なんかはタイトルに見覚えがあるような、ないような。特に国内上映に関する情報は今のところないようですが、ミニシアター系で小さく上映するのでしょうか。そんな漠然とした予感がしますが、とりあえず公式ホームページを貼っておきます。

 

 

11

No Other Land

Directed by: Yuval Abraham, Basel Adra, Hamdan Ballal, Rachel Szor

[Yabayay Media]

複数監督によるドキュメンタリー映画。公式サイトには、「破壊される故郷を撮影し続けるパレスチナ人青年と、彼を支えるイスラエル人青年。敵同士であるはずの2人の命がけの友情が生んだ奇跡のドキュメンタリー」とある。これだけで判断するのはあまりにも安易と言わざるを得ないものの、きっと否が応でも、この時代の何かを切り取っているのでしょう。『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の邦題で、2025年2月21日からの国内公開が決まっている。

 

 

10

Furiosa: A Mad Max Saga

Directed by: George Miller

[Warner Bros.]

ジョージ・ミラー監督。『マッドマックス:フュリオサ』の邦題で、2024年5月31日に国内でも公開された話題作。このリストの中で唯一、劇場で鑑賞できた作品ですが、感想はやはり、レビューに書いたことに尽きているなと。”この2時間30分に及ぶ「前日譚」が撮られたことの貴重さよりも、これを省略したまま『怒りのデス・ロード』が成り立っていた事実、むしろこれを省略「したからこそ」あの神話が成り立ちえたのだという逆説の強固さを、それでも指摘しないわけにはいかないだろう。”

 

 

9

The Zone of Interest

Directed by: Jonathan Glazer

[A24]

ジョナサン・グレイザー監督。『関心領域』の邦題で、2024年5月24日にすでに国内公開されています。『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』の監督の最新作ということで、話題になっていたし本当は観たかったんだよな。こちらもTwitterにも書いたような気がするけど、ジョナサン・グレイザーってこんなにメジャーだったっけ、という違和感を拭えないくらい、それこそ『フュリオサ』よりも人気だった印象があります。1月8日にDVDが出るらしいので、来年の早いうちに観たい。

 

 

8

La Chimera

Directed by: Alice Rohrwacher

[01 Distribution]

アリーチェ・ロルヴァケル監督。2014年の『夏をゆく人々』でカンヌの最高賞をもらっているようで、Wikipediaにも日本語ページがありますね。イタリアの監督のようですが、存じ上げなかった。本作は『墓泥棒と失われた女神』の邦題で、2024年7月19日に国内公開済み。こういう映画を地道にフォローできたらいいよなと思いつつ、それがまた遠い理想ということも分かってしまう佇まい。でも、こういう作品が国内上映するうちに行かないとダメですよね。

 

 

7

Nickel Boys

Directed by: RaMell Ross

[Amazon MGM Studios]

1982年生まれのラメル・ロス監督。あらすじは読んでいないですが、周辺情報からするに、いわゆる「ブラック・ムービー」なのでしょう。Wikipediaによれば、『地下鉄道』の著者であるコルソン・ホワイトヘッドの2019年作を原作としているようです。国内上映の情報は現時点では見当たらず。それはそうと、『地下鉄道』、そろそろ読まなくては。

 

 

6

Dune: Part Two

Directed by: Denis Villeneuve

[Warner Bros.]

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。『デューン 砂の惑星 PART2』の邦題で2024年3月15日に国内上映されています。『猿の惑星』シリーズ自体がぜんぜん分かっていないので、ドゥニ・ヴィルヌーヴっていまこういう仕事しているんだな、というのが正直な感想。いや、観てから言えって話ですが。良くも悪くも、メジャー志向のある監督はこういう大作系に上がって行ってしまうんだよなあ。

 

 

5

All We Imagine as Light

Directed by: Payal Kapadia

[Spirit Media]

パヤル・カパディア監督。カンヌの最高賞だとか。特に国内上映に関する情報がないものの、邦題は、やや意訳するばなら『光のすべて』といったところでしょうか。素晴らしく詩的で、映画的なタイトル。インドのヒューマンドラマということで、ミニシアターを回っていくようなイメージですかね。インドにおける女性の地位に言及する監督のインタビューなんかを読む限り、レティシア・コロンバニ著『三つ編み』を連想しました。もし国内上映があるのなら、少ないチャンスをモノにしなければ。

 

 

4

I Saw the TV Glow

Directed by: Jane Schoenbrun

[A24]

ジェーン・シェーンブルン監督。どういう人かまったく存じ上げないし、特に国内上映に関する情報がまったくないものの、これまたA24だし、サントラも海外でものすごく人気だったので、きっとバチバチっと同時代にはまっている感じなのでしょう。知らんけど。2021年の『We're All Going to the World's Fair』から界隈では話題沸騰ということで、待望の国内上映に期待したいところ。

 

 

3

The Substance

Directed by: Coralie Fargeat

[Mubi]

コラリー・ファルジャ監督。国内上映に関する詳しい情報がないものの、どうやら2025年5月には公開予定だと、ギャガの公式Twitterが報じている。あらすじをざっと読む限り、全盛期を過ぎた一人の女優が、かつての自分を維持するために美容医療の沼にはまっていく話だとか。「より美しく、より若く、より完璧に」。ルッキズム、エイジズムなどなど、ウンザリするような内容であることは覚悟しつつ、観るしかなさそうですね。とはいえ消費のし方、され方には注意を払いたい。

 

 

2

Challengers

Directed by: Luca Guadagnino

[Amazon MGM Studios]

ルカ・グァダニーノ監督。『チャレンジャーズ』の邦題で2024年06月07日に国内上映されている。そもそも2017年の『君の名前で僕を呼んで』すら、観よう観ようと思ってダラダラと時間だけが過ぎている状況なので、劇場はもう無理でも、この作品から入ってみようと決意。サントラが人気だったという印象が強くてあらすじもまともに読んでいないのだけど、佇まいとしては、どことなくアルフォンソ・キュアロン監督の『天国の口、終りの楽園。』を思い出させるかな。

 

 

1

Anora

Directed by: Sean Baker

[Neon]

ショーン・ベイカー監督。『ANORA アノーラ』の邦題で、2025年2月28日からの国内上映が決まっている。2015年の『タンジェリン』で注目を集め、2017年の『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』で世界の無関心を抉った監督が、本作でついにカンヌの最高賞だとか。国内宣伝のセンスがちょっと個人的にはアレなのだけど、題材もポップで、日本でもヒットの予感がしますね。とにかく圧倒的な得票でした。何があっても観る枠に入れて頑張ろうと思います。

 

******

 

※おまけ:今後の上映カレンダー

 

2025年2月21日公開予定:『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』

 

2025年2月28日公開予定:『ANORA アノーラ』

 

2025年3月20日公開予定:『教皇選挙』

 

2025年5月16日公開予定:『The Substance(原題)』

 

******