今日の産経ニュース(2025年1/5日分)(副題:夫婦別姓で今日も珍論を展開する産経)

一方的な移民拡大の前に 外国人政策 「あるべき日本」合意形成図れ サンデー正論 - 産経ニュース
 ウヨの「亀田製菓不買運動(但し、実際に不買する人間は少なく、実質的な影響はないでしょうが)」を取り上げながら「言論の自由侵害」とは言わず、「移民賛成論」の社長*1の方が悪いかのように言う辺りが産経らしい。左翼の不買運動(例:アパホテルとかウヨ企業)の時と態度が違いすぎます。
 それはともかく、現在の「事実上の移民の増加」は「安倍政権での入管法改定」等、自民政権が推進したものなのに、自民批判しない点が自民応援団の産経らしい(民主党政権なら悪口雑言でしょうが)。そして「国民多数がそうした施策を推進する自民に投票した」以上、主観はともかく客観的には今の状況は「日本人多数派」が「そうした自民の移民施策に無関心で知らなかった」にせよ、「自民の移民施策が何であれ、ウチの選挙区の自民党議員が、『新幹線の駅誘致』『空港誘致』など地元に利益誘導してくれるから支持する」であれ、理由が何であれ、容認、賛同してきたものです。
 あえてきついことを言えば「立民、共産、社民、れいわ」など「自民に批判的な野党(自民補完勢力の維新、国民民主は除く)」の支持者ならともかく、自民支持者(産経含む)には「現状の移民増加」を非難する資格は全くないでしょう。
 なお、「外国人技能実習生」など「事実上の移民が増えた」のは主として「介護分野」「農業分野」などいわゆる3K労働(低賃金、長時間など待遇の悪い労働)です。
 そうした分野に日本人が就業したがらない*2ので「移民が導入された」。勿論「今まで政府によって推進されてきた移民(外国人労働者)導入施策の是非」や「今後もそうした施策を拡大していくかどうか」、「移民増加によって危惧される排外主義の高まりにどう対応するか」等に関係なく「介護労働などの待遇改善」はされるべきですし、「現在就業している外国人労働者」の「待遇の悪さ」も改善されるべきですが、「移民が増えた前提(3K労働に就業する人間が少ないこと:結局、待遇改善しか手立てはないでしょうが)」を無視して、産経らウヨのように「移民反対」を口にしても何の解決にもなりません。現状の「3K労働」そのままでは移民をやめれば、移民に依存する「3K労働現場」が「人手不足」で回っていかなくなるだけです。「3K労働現場(企業)」の要求で「移民が拡大されてきた」し、それをやめようとすれば「3K労働現場(企業)」や、場合によっては「そうした企業サービス(介護サービスなど)の利用者」から「移民制限反対」の声があがるでしょう。
 本気で移民を制限する気なら「3K労働の待遇改善は不可避」ですし、「3K労働の状況は今のままで移民反対」というのは「運動も食事制限もしたくないが痩せたい」「勉強したくないが東大に行きたい」「練習したくないがプロ野球の選手になりたい」レベルの寝言でしょう。
 これは日本だけでなく欧米も同じです。「移民反対」の右翼政党が欧米各地で躍進してるとは言え、実際に移民制限が欧米で実行できるかと言えば疑問でしょう。欧米でも「3K労働」に就業したがる人間は少なく、そうした労働は移民が支えてるからです(資格を身につけるなどして、恵まれた職業についてるエリート労働者の移民は少ないでしょう)。移民を制限したところで欧米も「待遇の悪い仕事」しか雇用は増えないだろうし、そうした「劣悪な雇用」に欧米の「移民反対派」ですらどれほど就業するかは疑問です。あえて悪口すれば欧米の「移民反対派」の多くは「移民がなければ俺も恵まれた仕事に就ける」という「根拠のない妄想」を抱いてると言ってもいいのではないか。少なくとも短期のスパンでは「移民制限」は「移民制限と同時に3K労働の待遇改善をしない限り」、欧米では「移民労働に依存していた3K労働が回らなくなり、経済に悪影響」にしかならないでしょう。
 産経に限りませんが移民反対を口にする、日本のウヨ連中に「3K労働の問題」に触れる人間が少ないことには呆れます。


夫婦別姓間の子供の名字は家庭裁判所が決める 新たな家族不和の火種「いっそくじ引きで」 ごまかしの選択的夫婦別姓議論 - 産経ニュース
 タイトルがミスリーディングですね。
 立民が提出した案では、子の姓についてはまず夫婦で協議し、その協議が整わない場合には「家裁が審判する」となっており、全ての場合に家裁が決めるわけではない。

 別姓夫婦の子供への影響について「あると思う」は69%、「ないと思う」30・3%という結果もあり、「ある」と答えた人の理由(複数回答)は「名字が違うことを指摘されて対人関係で心理的負担が生じる」78・6%、「親との関係で違和感や不安感を覚える」60・1%が多かった。

 やれやれですね。
 「あると思う」と回答し、「あると思うから別姓にしたくない」と言う人間は同姓にするでしょう。
 一方で「ないと思う」と回答した人間や、「あると思うが、それでも別姓にしたい(別姓のメリットは大きいし、デメリットについては別途解消する)」という人間は別姓にするでしょう。
 選択制の訳ですから。それで何か問題があるのかという話です。
 「あると思う人間がいるから、ないと思う人間についても同姓を強制する」というのが果たして適切な考えなのか。

 家族法に詳しい長崎大学の池谷和子*3准教授は「夫婦間だけではすまない話だ。嫁姑の確執もひどくなるだろう」と危惧する。

 今日の産経ニュース(2025年1/4日分)(副題:夫婦別姓で今日も珍論を展開する産経) - bogus-simotukareのブログで紹介した記事韓国、男性中心の家守る夫婦別姓「女性は同じ家の人間と認められない」 米国も8割が同姓 ごまかしの選択的夫婦別姓議論 - 産経ニュースに登場した立命館大の筒井教授は「別姓を望む少数派にも配慮して米国、ドイツは別姓制度だが、多数派はそれでも同姓を選択している」という客観的事実しか述べませんでした(別姓制度の是非については述べてない)が、池谷氏は明らかに別姓反対ですね。
 ちなみに

井田奈穂(一般社団法人あすには代表理事)
 統一教会どっぷりの准教授・池谷和子氏がよりによって教育学部で教えている件、長崎大はどう考えているのか。以下ほんの一部
「子供の最善の利益」からみた生殖補助医療の現状と課題 ―「個人の人権」「自己決定」と子供の保護― | 一般社団法人平和政策研究所(池谷和子)
 ボーガス注:寄稿先の平和政策研究所は統一協会のフロント組織。統一協会のフロント組織である「国際勝共連合」「世界平和連合」「国際ハイウェイ財団」「平和大使協議会」の会長、「UPFジャパン」の議長を務める梶栗正義*4が理事を務めている(平和政策研究所 - Wikipedia参照))
日本学術会議提言「性的マイノリティの権利保障をめざして―婚姻・教育・労働を中心に―」に関する検討 | 一般社団法人平和政策研究所(池谷和子)
 ボーガス注:寄稿先の平和政策研究所は統一協会のフロント組織

ということで統一協会とズブズブの御仁らしいですね。
 それにしても、「姑ともめてまで別姓にしたくない*5」と思えば、選択制なのだから、同姓にするでしょう(そもそも姑が夫婦の姓に口出しすること自体が適切でないと個人的には思いますが)。
 一方で今まで通り「同姓のみ」の場合でも(日本では結果的にはそうした女性は少ないのでしょうが)嫁が「自分は姓を変えたくない、夫に変えて欲しい」とし、姑が「嫁が変えろ」といえば確執は生じるわけで「嫁姑の確執」は「同姓にすれば生じない」というものではないでしょう。
 そもそも「嫁姑の確執」は「嫁と姑で同居するか、別居するか(別居する場合でも比較的近い場所に住むか)」「子ども(姑にとっては孫)の教育」「嫁にとっての姑の介護」等、様々な場面で生じうるでしょうし。

 国士舘大学の百地章*6名誉教授は「戸籍は『家族の一体性』と『家名・家系の一系性』を表す。わが国が長年維持してきた戸籍制度の解体につながる」と警鐘を鳴らす。

 「はあ?」ですね。
 言ってる意味が分かりません。
 何故「別姓イコール、従来の戸籍制度の解体」なのか。そんな事実は何処にもないでしょう。従来の戸籍制度をどう考えるかはまた別の問題です。

 内閣府の世論調査には、「婚姻で相手の名字に変わった場合、どのような感じを持つと思うか」(複数回答)との問いもある。
 最も多かったのが「新たな人生が始まるような喜びを感じる」(54・1%)、次が「相手と一体になったような喜びを感じる」(39・7%)だった。

 そのように改姓をプラスで捉える人間は改姓すればいいでしょう。だからといって改姓したくない人間にまで改姓を強制することになる現行制度が正しいわけではない。

*1:なお、亀田製菓の社長のように口に出すかどうかはともかく、日本大企業の多くは、亀田製菓社長と同様に「移民賛成」でしょう。自民の移民導入施策は「日本経団連」「経済同友会」など「低賃金労働力としての移民」を望む財界の要望に従って推進されてきたからです。

*2:つまり少子化が原因では全くない。

*3:著書『アメリカ児童虐待防止法制度の研究』(2009年、樹芸書房)

*4:父は日本統一教会第12代会長の梶栗玄太郎(梶栗正義 - Wikipedia参照)

*5:勿論、理解のある姑なら別姓にしようが何も言わないでしょう。

*6:「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」発起人、日本会議政策委員、「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会(民間憲法臨調)事務局長、国家基本問題研究所理事、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」幹事長等を歴任したプロ右翼活動家。著書『憲法と政教分離』(1991年、成文堂)、『政教分離とは何か』(1997年、成文堂)、『靖国と憲法』(2003年、成文堂)、『憲法の常識・常識の憲法』(2005年、文春新書)、『「人権擁護法」と言論の危機』(2008年、明成社)、『憲法と日本の再生』(2009年、成文堂)、『増補改訂版・緊急事態条項Q&A新型コロナウイルス対応でわかった日本国憲法の非常識』(2020年、明成社)、『日本国憲法・八つの欠陥』(2021年、扶桑社新書)、『憲法における天皇と国家』(2024年、成文堂)(百地章 - Wikipedia参照)