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社会統計学と教育機会格差の分析(社会統計学入門第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

第1回のテーマは「社会調査のデータと統計分析の考え方」です。
人間の行動や心理、経済現象、自然現象など、この世界で生じている様々な現象を数量的に把握する手段として、統計学があります。統計学というと難しく聞こえるかもしれませんが、それは私たちの生活に幅広く応用されています。

特に、この科目で扱う社会統計学を利用した分析結果は、日々接するニュースや記事通じて報道されています。例えば、印刷教材の図表1-1をご覧ください。この記事では、保護者の経済力の違いが子どもの進学機会にどの程度影響しているかを示した分析結果が掲載されています。

図の横軸には保護者の年収額に応じた区分が示されています。具体的には、左側には年収200万円未満、右側には年収1200万円以上という区分があります。縦軸は子どもの高校卒業後の進路に関する比率を表し、大学や短大、専門学校への進学、就職などがそれぞれ折れ線で示されています。

右肩上がりになっている折れ線は4年制大学への進学率を示し、保護者の年収と比例して高まっています。例えば、年収200万円未満の場合、進学率は28.2%であるのに対し、年収1200万円以上では62.8%に上ります。一方、右肩下がりになっている折れ線は就職率を示しており、年収200万円未満では35.9%、年収1200万円以上では5.4%です。

まとめると、保護者の年収が低い場合、高校卒業後は大学へ進学せず就職する傾向があり、収入が高いほど大学などへ進学する傾向が見られるということです。

この例は子どもの教育機会に関するものですが、生活実態調査、内閣支持率、時事問題に関する世論調査、消費動向を分析するマーケティング調査など、社会調査は多岐にわたり、日々行われています。

また、研究機関や研究者が実施した調査データを第3者が二次的に利用できる仕組み、いわゆる「データアーカイブ」も整備されつつあります。さらに、パソコンやインターネットなど情報技術の発達により、データ集計が容易になり、インターネットを通じて集計データを取り込むことも可能です。

例えば、日本国内に住むすべての人を対象とした国勢調査は、5年ごとに実施されています。この国勢調査をはじめ、総務省統計局が実施した調査データはホームページで閲覧可能で、集計データをダウンロードすることもできます。ただし、これらのデータには個人情報が含まれるため、公開時には特定されないよう慎重に加工されています。

このように、統計データの利用機会は一握りの専門家に限られる時代ではなくなりつつあります。より多くの人が調査データにアクセスし、活用できる環境が整ってきているのです。

 

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