D9の響き

“Trio Of Doom”

John McLaughlin(g)
Jaco Pastorius(b)
Tony Williams(d)


９月になり、ようやく朝晩が快適になってきました。
週末まで大阪市内では、午前中に集中豪雨まがいの夕立（朝立？笑）に見舞われ、結構迷惑してましたが。
んで、やっと暑苦し系にも手が出るようになり、タワレコ２倍ポイントセールでまとめ買いしてきました。
その中の１枚がこれ、“Trio Of Doom”です。

'79年3月3日、アメリカ国務省がスポンサーとなりキューバの首都ハバナで行われた“ハバナ・ジャム・フェスティヴァル”で実現した奇跡の記録です。
ジャコとトニーが逝ってしまった今、ようやくマクラフリンも冷静に音源に向かい合える心境になり、ようやく正式リリースが実現したようですね。

【'79.3.3 Live Recordings at Havana】

1.Drum Improvisation
2.Dark Prince
3.Continuum
4.Para Oriente
5.Are You The One, Are You The One?

【'79.3.8 Studio Recordings at NY】

6.Dark Prince
7.Continuum
8.Para Oriente(alternate take 1)
9.Para Oriente(alternate take 2)
10.Para Oriente

マクラフリンのギターは、正直言って今までそれ程良いと思ったことはありませんでした。
老いてなお攻撃的なそのスタイルは、確かに賞賛に値するのは明白なんだけどなあ・・。
しかし、この音源を聴く限りは、ちょっと私も認識を大きく変える必要があるのかな・・って感じです。

“単に出鱈目な人では無かった・・凄い！”

もちろん、彼の演奏は名手２人によって最大限に引き出されたものであることも明白です。
トニーはライフタイム解体後のセッション活動期にあたり、ジャズオーケストラの選抜メンバーとして、
方やジャコはWeather Reportのメンバーとしてハバナ入りしていたようです。

このライヴが永い間お蔵入りしていた原因はジャコのプレイということで、キーを間違えたまま大音量で弾いてたとのマクラフリンのコメントがあります。
実際聴いてみて問題がありそうなのは#2と#5でしょうか・・特に#2はスタジオ版の#6と比べれば何となく分るような気がします。
おそらく、テーマ部分ではなく中間以降のソロ回しの不手際なんじゃないでしょうか。
・・ブレイクが寸断されており明らかに不自然な部分が幾つかあります。
トニーの機転というかライヴではありがちな回避テクというか（笑）この辺が並みのドラマーでは出来ない“なんちゃってミニドラムソロ”風に持っていってるので気をつけて聴かない限り普通に聞こえるんじゃないでしょうか。
一旦エンディングのあと、ブチ切れてたマクラフリンが“何やっとんじゃぁ～！”といわんばかりに弾き続けてるあたり、あながち間違った推測ではないと思いますが・・違うかな？
#6にしても、基本的にはフリーインプロ前提の曲のようですが、無意味なブレークが多すぎますよね。
それでも、ジャコの神業的ベースと緩急自在何でもコイコイな（笑）トニーのウルトラ・プレイで、終始貫かれてる演奏なんですね。
マクラフリンのギターはジャコとのユニゾン等のタイミングもビックリするくらい決まってるし、リズムもしっかりあってるし、問題があるとしたらやはり雑なピッキング位でしょうか。

この作品の私的聴きどころとしては、#3“Continuum”のライヴヴァージョンの美しさかな。
この曲はジャコのオリジナルで、ソロ作にもハンコックやレニー・ホワイトらとのキーボード・クインテットで収録されており、そのエレピ部分をマクラフリンがギターで演ってる訳です。
ソロ作でパーカッションやローズ等のバックに埋没気味だったジャコの超絶トーンがバシバシ決まってて、鳥肌モノですよ。
こりは実に美しいです。

“ハバナ・ジャム”として既にリリースされてた彼らのプレイが、実はスタジオ録りされたヴァージョンに拍手を繋いだモノだったというネタばらしとともに、遂にホンマモンの音源が陽の目を見たわけですネ。
貧相で縮こまったスタジオ版に比べ、あるかないか分らない位の間違いを含んでるとしてもそれに勝るエネルギーに満ちたライヴ・ヴァージョンの方がずっと素敵だと思います。

刺激が欲しい貴方にお勧めです・・ぜひどうぞ！（笑）