『バックラッシュ!』まえがき全文公開

みなさん、こんにちは。既にたくさんのご予約をいただき話題になっている『バックラッシュ!』ですが、「発売まで待てない!」という皆様のために、本日は『バックラッシュ!』のまえがきを全文公開させていただきます。今後も、内容をちょびっとずつ立ち読みできるようにご紹介していく予定ですのでお楽しみに。このまま話題を独占して、取るぞ流行語大賞!(ウソ)

まえがき


 この本は、ジェンダーフリー教育や男女共同参画社会へのバッシング、いわゆるバックラッシュを「嗤」いつつ、次なる局面に進むためのサーチライトを掲げるためにつくられた。

 男女共同基本計画が閣議決定されたのが二〇〇〇年一二月。男女共同参画基本計画(第二次)が閣議決定されたのが二〇〇五年一二月。その間、おもに「ジェンダーフリー教育」を標的にしたバックラッシュが一部のメディアで熱をおびた。
 たとえば世界日報は、遅くとも二〇〇二年五月二〇日に「教育現場に浸透する『ジェンダー・フリー』」という記事を掲載して以降、いまなお熱心にジェンダーフリー・バッシングをおこなっている。また、産経新聞は、二〇〇二年四月一四日の一面トップにて、ジェンダーフリーに批判的な記事を掲載して以降、社説などでも関連ニュースを繰り返し批判的に取りあげてきた。あるいは、産経新聞社のオピニオン雑誌『正論』も、二〇〇二年五月号以降、ほぼ毎号のようにジェンダーフリーなどへのネガティブ・キャンペーンを張った。
 ジェンダーフリーや男女共同参画、ときには男女平等自体をバッシングする本も多く出版され、テレビでも何度か取りあげられた。ウェブ上にもそれらの言説に啓発されたブログやホームページ、掲示板での書き込みなどが数多く見うけられた。

 このように批判の数は多々あれど、ほとんどが同じフレーズを差異なく反復するばかり。内容もジェンダーフリー(社会的性差の押し付けから自由になること)とジェンダーレス(社会的性差自体をなくすこと)を混同していたり、ありもしない「実例」を持ち出してきたり。また、関係ないものまでジェンダーフリーのせいにして八つ当たりしたり、あげくの果てにトンデモな陰謀説を掲げていたりと、なんだかトホホなものばかり。
 どこかで誰かがシャドウボクシングをしているだけなら、てれくさそうに目をそむけてやりすごせばいいし、都市伝説なら風化するのを待てばいい。しかし、バックラッシュ言説に感染した国会議員や地方議員が「真剣に」、ありもしない「亡霊」を叩く姿が、すこしずつ目につくようになった。これは、ちょっと笑えない冗談だ。
 一方で、ジェンダーフリーや男女共同参画社会の問題点、そしてそれらをブラッシュアップすべき点に対して、何の吟味もおこなわれない。バックラッシュ言説だけが世を席巻し、本質的な議論が喧騒のなかに埋もれてしまう状況は、じつにシニカルだ。

 本書でずらりと並んだ面子をご覧いただければおわかりのとおり、執筆陣のスタンスは多種多様である。とはいえ、共通点がふたつだけある。第一は、ジェンダーフリー自体には距離をとり、ときには批判をしてきた論者(なかには勝手に「ジェンダーフリー論者」にされた人も、ちらほらいるけれど)。第二に、バックラッシュによる批判の論法や論旨に対して、ときに爆笑し、ときにあきれかえってきた論者。
 ではなぜ、かくもアンバランスで喜劇的な泥仕合を展開するために、これまでジェンダーフリーに対して批判的かつ傍観してきた論者にお集まりいただいたのか。答えは簡単。「ジェンダーフリー自体は推進しないが、デマと不安ばかり拡大再生産するバックラッシュは、それ以上にアホらしい。そろそろネクスト・ステージ(次なる局面)へ」と宣言するために、である。

 そのため本書では、各執筆者に「ジェンダーフリー論争」とバックラッシュ言説が問題とした各論点について、ていねいに吟味していただいた。また、「ジェンダーフリー騒動」そのもの、そして「バックラッシュ」そのものに関する議論をまとめたうえで、「ジェンダーフリー論争」と「バックラッシュ」を踏まえた今後のビジョンを示していただいた。くわえて、多くの読者の手に届くよう、できる限り読みやすい内容にした。

 次なる局面への入口に、ようこそ!

                           双風舎編集部

さて、明日はいよいよこの本が当たるプレゼント企画を発表します。どうぞお楽しみに!