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迷惑メールの山に埋もれて、一通の訃報が届いていた。 キーボードを打つ乾いた音が、虫たちの声も届かな... 迷惑メールの山に埋もれて、一通の訃報が届いていた。 キーボードを打つ乾いた音が、虫たちの声も届かない夜の天井に消えていく。 「このたびは誠に御愁傷様です。心からお悔やみ申し上げます……」 彼女と最後に交わした言葉は何だったかしら。 机を並べて、くだらない話で笑って過ごしたのは十数年も前のことよ。 人の記憶は曖昧なもので、小さな八重歯が印象的だった屈託のないあの笑顔は、まぶたの裏側で薄いグレースケールのように霞んでいるわ。 彼女は私が同性愛者であることを知らないの。 私が周囲にカミングアウトしたのは高校に入ってからで、それまでは必死に異性愛者を演じていたわ。 多感な時期に愛の話は刺激が強いのよ。 ましてや同性愛のことなんて遠い異国のおとぎ話で、異性愛で溢れた平和な世界を脅かす同性愛者は、自分たちの小さな世界を崩壊させる悪魔のような存在だったわ。 聡明で美しい彼女の友人でありたかったの。だから
2016/08/16 リンク