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コバルトブルーの浴室に、シャワーのノイズが響いている。 頭の先から胸を伝って、足先へと流れる水の流... コバルトブルーの浴室に、シャワーのノイズが響いている。 頭の先から胸を伝って、足先へと流れる水の流れが火照った体に心地好い。うっすらとまぶたを開いてみると、飛沫に斜陽がぶつかって、線香花火が散るように、薄暗いタイルの壁をきらめかせた。 ハンドルを回してシャワーを止める。わずかに開かれた窓の隙間から風が吹きこみ、浴槽の水面が皺を寄せた。薄寒いような、ほのあたたかいような、奇妙な空気のベールが体を包んだ。 古めいたアルミの窓の外では、流しそこなったあぶくのようなうろこ雲と、シャワーヘッドからだらしなく漏れる水の音のような蝉声が、夏の終わりを告げていた。 バスタオルを手につかみ、荒っぽく体を拭きあげる。肌にパイルの感触を残したまま、部屋着に着替えて鏡台の椅子に腰掛けた。ドライヤーの轟音を従えて、木枯らしに吹かれる葦の穂のように前髪が揺れた。 ねえ、と肩を叩かれた。 話があると告げたまま、憂いを含
2016/05/11 リンク