抗ウイルス剤
【概要】 ウイルス疾患の治療薬。ウイルスの細胞への結合、侵入、翻訳、複製、出芽などのステップのどこかを抑える。
【詳しく】 ウイルスは宿主の細胞の中で、細胞内の装置を利用して増えるので、抗ウイルス薬は生体にとって有害な場合がある。しかしウイルス特有の酵素の阻害剤は副作用が少ない。抗HIV薬の逆転写酵素阻害剤やプロテアーゼ阻害剤もその例である。

抗ウイルス薬
(抗ウイルス剤 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/01 16:17 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動抗ウイルス薬(こうウイルスやく、英: Antiviral drug)は、ウイルス感染症の治療薬。抗ウイルス薬による治療薬の副作用として、抗体価が上昇せず(獲得免疫能が低下)再感染率が増加することが挙げられる[1]。
薬理
ウイルスが細胞に寄生し、暗黒期を経て新しいウイルス粒子を形成し、宿主細胞を脱出するサイクルの一部プロセスを阻害することで、あるいは人体の抗ウイルス免疫機構に介入することで、ウイルス性疾患の治療を行う療法である。ウイルスは自身の細胞を有しないため、細菌など病原体の細胞を直接破壊する抗生物質療法と、薬理学的性格が大きく異なる。
抗生物質はスペクトラムによるとはいえ、複数菌種に対する抗菌活性を持つことが多い。これは、抗生物質が標的とする細菌は、真核生物である人体の細胞と大きく異なる一定の分子生物学的な共有形質を有し、これを利用して細菌細胞の生理的過程を阻害し、細菌細胞を死に至らしめているからである。
しかしウイルスは進化の系譜が細胞を有する生物とは著しく異なり、個々のウイルスの分子生物学的な形質の多様性は著しく高い。そのため、それぞれの生活環、転写因子が異なっており、それぞれに対する治療薬が必要となることが多い。
種類
単純ヘルペスウイルス感染症治療薬
サイトメガロウイルス感染症治療薬
尖圭コンジローマ等治療薬
RSウイルス感染症治療薬
インフルエンザ治療薬
- ノイラミニダーゼ阻害薬
- M2プロトンチャネル阻害薬
- RNAポリメラーゼ阻害薬
- エンドヌクレアーゼ阻害薬
AIDS治療薬
日本国内で認可されているHIV感染症治療薬は以下が存在する。
- 核酸系逆転写酵素阻害剤(Nucleoside analogue RT Inhibitor:NRTI)
- アジドチミジン、ジドブジン(AZT)商品名(認可年)以下同:レトロビル (1987)
- ジダノシン(ddI) ヴァイデックス (1992)
- ジダノシン(ddI-EC) ヴァイデックスEC (2001)
- ザルシタビン(ddC) ハイビッド (1996)
- サニルブジン(d4T) ゼリット (1997)
- ラミブジン(3TC) エピビル (1997)
- ジドブジン/ラミブジン(AZT/3TC) コンビビル (1999)
- アバカビル(ABC) ザイアジェン (1999)
- テノホビル(TDF) ビリアード (2004)
- エムトリシタビン(FTC) エムトリバ (2005)
- アバカビル/ラミブジン(ABC/3TC) エプジコム (2005)
- テノホビル/エムトリシタビン(TDF/FTC) ツルバダ (2005)
- 非核酸系逆転写酵素阻害剤(Non-Nucleoside RT Inhibitor:NNRTI)
- プロテアーゼ阻害剤(Protease Inhibitor:PI)
- インジナビル(IDV) クリキシバン (1997)
- サキナビル(SQV) インビラーゼ (1997)
- サキナビル(SQV-SGC) フォートベイス (2000)
- リトナビル(RTV) ノービアソフトカプセル (1999)、ノービアリキッド (1998)
- ネルフィナビル(NFV) ビラセプト (1998)
- アンプレナビル(APV) プローゼ (1999)
- ロピナビル/リトナビル(LPV/RTV) カレトラソフトカプセル (2000)、カレトラリキッド (2000)、カレトラ錠 (2006)
- アタザナビル(ATV) レイアタッツ (2003)
- ホスアンプレナビル (FPV) レクシヴァ (2005)
- ダルナビル(DRV) プリジスタ (2007)
- インテグラーゼ阻害剤
- ラルテグラビル(RAL) アイセントレス (2008)
- エルビテグラビル(EVG) ストリビルド(EVGにコビシスタット(COBI:RTV誘導体, booster)、ツルバダ(FTC/TDF)を加えた4剤からなる合剤)(2013)
- ドルテグラビル(DTG) テビケイ (2014)
- 侵入阻害剤(CCR5阻害剤)
- マラビロク(MVC) シーエルセントリ (2008)
- 融合阻害剤(Fusion Inhibitor:FI)
- エンフュヴィルタイド (T-20) フューゼオン(未記載)
HBV治療薬
HCV治療薬
出典・脚注
- ^ 木戸博、「インフルエンザ感染の重症化機序と治療法」 小児耳鼻咽喉科 2016年 37巻 3号 p.305-311, doi:10.11374/shonijibi.37.305
関連項目
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抗ウイルス剤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 02:05 UTC 版)
「エプスタイン・バール・ウイルス」の記事における「抗ウイルス剤」の解説
EBVに対して有効な抗ウイルス剤は存在するが、以下に述べる理由で日本においては使用できない状況にある。ゆえに、伝染性単核球症などのEBV感染症の治療法は対症療法となっており、重症例には主に副腎皮質ステロイド投与やガンマグロブリン大量投与が用いられる。 過去にはEBVに有効な抗ウイルス剤であるソリブジンがあったが、抗がん剤5-FUとの併用で薬害事故が起き、現在販売は自主的に停止されている状態にある。ソリブジンの代謝産物であるブロモビニルウラシル(BVU)は、5-FUの代謝酵素であるDPD(dihydropyrimidine dehydrogenase)と結合して、不可逆的に阻害し、5-FUの血中濃度を上げ、5-FUの副作用である白血球減少、血小板減少などの血液障害や重篤な消化管障害を引き起こす。これがソリブジン薬害事故の原因である。 しかし、ソリブジンは安全情報や5-FUとの併用禁忌などの情報周知を徹底すれば、存続可能な薬であった。 ソリブジンに類似した抗ウイルス剤のブリブジンもまたEBVに有効であるが、ソリブジン薬害事故があった日本においては、ブリブジンの代謝産物はソリブジンと同じBVUであるがゆえに、使用できない状況にある。 また、現行の抗ヘルペスウイルス剤のアシクロビルのEBVに対する効果は限定的である。慢性活動性EBウイルス感染症の治療の一つとしてアシクロビルの大量投与があるが、これも効果は限定的である。
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