プレイバック2024
気がついたらインシュレーターが50個以上あった話 by市川二朗
2024年12月26日 09:00
使うあてがないのについつい買ってしまうモノって、誰しもあるのではないだろうか。僕は“脚”(インシュレーター)を見ると、どうもむらむらと物欲が沸いてくる。サイズや形状を見て、重さや材質などを確認して、あのアンプにつけてみようとか、スピーカーの脚にちょうどいいなとか、色々と妄想するのが好きなのである。
妄想だけでとどめておけばいいのに、いつか使うだろうと無理やり理由を考えてついつい買ってしまうのだ。決してコレクションしたり並べて眺めたりするのではない。あくまで「機会があれば使う」という決心に基づいて買うのである。そして、手元には出番待ちのインシュレーターがあふれかえることになる。
僕はいわゆる“オーディオアクセサリー”はほとんど使わない。インシュレーターもアクセサリーとして製品化されているものは少なくて、自作品や既存の製品の脚を取り外したものが多い。
製品として売られているインシュレーターは機器本体を上回るほど高価なものもあるが、名もない自作品や取り外し品は概ね安価で入手できるのが魅力だ。今年はあまり大きな買い物はしなかったが、安価なインシュレーターを物欲を満たすためだけに何個か買ってしまった。そんな僕のインシュレーターコレクションをいくつか紹介しよう。
ソニー「MDP-999」「DVP-S7700」の脚は格別だ
1980年代の終わりごろから、オーディオメーカーは機器の脚が音質や画質に影響を与えることに注目し、強じんで重量級のインシュレーターを採用し始めた。その頃の機器の脚は、単体のインシュレーターとしても価値のあるものが多い。
その中で最も強力なもののひとつが、ソニーのLD/CDプレーヤー「MDP-999」の脚だ。本体重量30kgを支えるのは5個の真鍮製の脚なのだが、前と後ろと中央で大きさが異なるという凝ったものだった。
特に前の2個は巨大で直径80mm、高さ20.5mm、質量は815gもある。後ろも直径59.5mm、高さ20.5mmで429gだ。ただ、あまりに立派すぎるのと、後ろ2個は中央に出っ張りがあってそのままだと使いにくい。
後ろの2個を金属加工業をしている友人に削ってもらって、プリアンプの脚に使ったところ低音がしっかりしてきたことを憶えている。入手の経緯は失念してしまったが、なぜか手元には2台分ある。
MDP-999の数年あとに出た、ソニーのDVDプレーヤー「DVP-S7700」の脚もいい。999のような狂気の沙汰ではなく、小ぶりで実用性が特に高い。
大きさはφ50mm、高さ16.5mm、質量は176g。強じんな鋳鉄製でTAOC製だという話を聞いたことがある。底面にはイノアック製の制振ゴムが張ってあるので金属特有の鳴きが抑え込まれている。いまでも時々オークションで見かけるので、追加で入手しておこうと思っている。(って、いつ使うんじゃ!)
反省という言葉は吾輩の辞書にはない
僕のコレクションで最も強力なのは、数年前に入手したステンレス製の自作品である。
φ90mm、高さは20.3~7mmとバラつきがあるのはご愛敬。それぞれ2個の穴があけてあるので、何かにねじ止めされていたのかもしれないが、制作の経緯や用途は一切わからない。少なくともオーディオ用ではないことは確かだ。重さは約1kgあるのでスタビライザーとしても使えそうだが、正直なところ巨大すぎて持て余している。
コレクションの新入りは、オーディオテクニカ製の「ANCHOR BASE AT684」というものだ。アルミ円盤の中央に真鍮製のスパイクが取り付けてある。
“アンカー”という割に普通の形状なので疑問に思い調べたところ、AT684は本来なら3本の尖った長いシャフトが取り付けてあって、畳や厚いじゅうたんを貫通して床と機器を直結するというもののようだ。
しかし、僕が入手したのはシャフトなしの円盤部分のみ。フリマで安かったので思わず買ってしまったのだが、出品者も本来の姿を知らなかったようだ。
スパイクを外しても円盤の中央に出っ張りがあって、このままだと極めて使いにくい。なにも調べずに無意識で買っているとこういうこともあるが、反省という言葉は吾輩の辞書にはない。
取り急ぎ使っていないインシュレーターをかき集めたら50個以上もあった。これ以外にも使用中のものもたくさんある。
決して狙って集めたわけではない。一体なんでこんなに集めてしまったのか?
たぶん、インシュレーターの神様が僕を導いたのだろう……。
んなことたあねえよな……。