大宮日記 ラテン語、チョコザップ、漢文、大宮図書館

食べて飲んで、勉強して、本を読んで、運動して生きていく。ここ、さいたま大宮で。

【読了】ダニエル・M・デイヴィス著、久保尚子訳『人体の全貌を知れ』亜紀書房

さいたま市立北浦和図書館所蔵

www.lib.city.saitama.jp

2024/09/25 大宮図書館より借入

2024/10/06 読書開始

2024/10/07 読了、大宮図書館へ返却

 

生物学というか大きく言えば現代の社会を一変させた生物学上のテクノロジーというのならば、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)-Cas9 だろうと思っていた。しかし、それに至るには、「アッペの回析限界」を突破し、超微細の世界を見えるようにしなければならなかったのだ。つまり「標識」技術である。

クラゲ細胞由来の抽出物をあれこれ比較しながら光学的活性をもつ物質を探し求めた下村は、最終的に、クラゲ細胞を光らせる二種類のたんぱく質分子を同定した〔…〕この二つ目のタンパク質が、のちに緑色蛍光タンパク質(GFP)と命名され、顕微鏡の世界できわめて重要な役割を果たすことになる。(P.35)

ノーベル化学賞を受賞した下村脩である。米国ボストンの海岸で家族総出でクラゲを獲ったのである。GFPの同定がなければ超高分解能顕微鏡の開発は成らず、ナノレベルでの発見とさらなる開発はありえなかった。

この新しい世界――ナノ規模の人体解剖学――を切り開いたのは、大規模な共同研究でも政府主導の科学戦略でもなく、ほんの数人の異端児たちだった。彼らが大きなビジョンをもって開いた扉の向こう側に、世界中の大勢の科学者たちが新しい世界を築き上げ、それが新しい装置の開発につながり、私たちは前例のない鮮明さで私たち自身を観察できるようになった。(P.62)

本書はこの「異端児たち」の物語であり一定の知見が得られた上それなりに面白いのだが、終盤になって、原題『THE SECRET BODY:How the New Science of the Human Body Is Changing the Way We Live』の通りに大風呂敷を広げすぎてしまって興ざめな結末となっている。残念である。