駆け抜けたい伝説の途中

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【CHAOS;CHILD】尾上世莉架が大好きです

 私がCHAOS;CHILDで一番好きなヒロインである、尾上世莉架について語ろうと思います。

 

 

 酔っ払った勢いで書き殴った記事に少し追記しただけなので、かなりの駄文が出来上がりました。

 本編及びLCCで語られたことを前提に書いているので、作品の核心のネタバレに触れた文章となっています。未プレイの方は閲覧注意です。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 個人的にはCHAOS;CHILDで最も魅力のあるキャラクターだと思っている、尾上世莉架。

 物語終盤で明らかになる、「黒おっけいさん」と呼ばれる一面がとても好きです。

 

 

 本編では犯人が明らかになった途端に立ち絵が変わり、以降この「黒」の一面を剥き出しにしたまま話すようになるので、あたかもこの「黒」の一面が尾上世莉架の本性であると解釈されがちです。

 「白」は拓留の理想の女の子を演じる為に「黒」が創った一面であり、「黒」が本体である……ということです。

 

 しかし、本編の7章で描写された以下の会話が、それを否定しています。

 

宮代「それじゃあ、あの女――僕たちを襲ったあの女の能力も、なんらかの願望ってことになるのか?」

尾上「何かを燃やしたいと思ったってこと?」

伊藤「そこまで思いつめるほど燃やしたいモノって……なんだろうな?」

尾上「おイモとか?」

伊藤「冗談言ってる場合かよ」

有村「いえ、先輩。せりは本気でそう思っています」

伊藤「マジか……」

 もしも「白」のアホの子っぽい性格が演技であるのならば、ここで有村の能力に引っかかってしまうはずでした。

 ですから私は世莉架はリアルブートされた時点で「白」の一面と「黒」の一面が同時に発現されたと考えています。

 「白」の性格は猫被りでもぶりっ子でもなく、彼女を構成する性格の一部です。本編の11章や個別ルートでパニックに陥った際に、「白」と「黒」の一面が本人の意図しない形でごちゃ混ぜに出ていることからも自明です。

 

 なおLCCでは「白」と「黒」は別人であり、別々の記憶を保持しているかのように説明されていましたが、本編や個別ルートでの描写等と食い違いが起きてしまうので、ここでは考えないこととします。

 

 

 

 ですから「白」も「黒」も同じ尾上世莉架であることに変わりはないので、黒が好きと言って区別してしまうのは少しナンセンスかもしれませんね。

 もちろん「白」も「黒」も好きなのですが、私はやはりこの「黒」としての一面に惹かれました。

 私がこの黒おっけいさんに惹かれた理由ですが、人間でない存在でありながらも人間らしい性格をしていることに尽きました。

 CHAOS;CHILDにおいて彼女の「本音」が描かれる場面には、何度も心を揺さぶられました。

 

 実は作中で彼女の素が出てくる場面は、物凄く少ないんですよね。

 もちろん前述したように白の一面も黒の一面も本性ではあるのですが、彼女が内に秘めている本音を語るような場面はほぼなくて、貴重でした。

 彼女はずっと仮面を被り続けて「ゲーム」をコントロールしていたのですから。

 

 世莉架の行動理念は「拓留を楽しませること」、そして「自分が拓留にとって大切な存在になること」が、全てでした。彼女にそれ以外の弱点は存在しません。

 しかし、逆に言えばその弱点を突かれた時の尾上世莉架は、とても脆い。実年齢6歳に相応の脆さでした。

 

 

 その彼女のごちゃごちゃに織り交ぜになった二つの感情を最も体感することができるのは、乃々ルートです。

 

 

尾上「ど、どうして……タク……?」

世莉架は攻撃の手を止め、今にも泣き出しそうな表情を浮かべていた。

その声は弱々しく……。

けれど、もう『僕の知らない顔の世莉架』ではなくて、子供の頃から一緒だった、大切な幼馴染に戻っていた。

尾上「どうしてのんちゃんを選ぶの? ずっとそばにいた私じゃなくて……」

宮代「尾上……」

尾上「どうしてなの? ねえ、タク? それがタクの望んだ世界……?」

世莉架は重度の熱病に罹った患者のように譫言のように繰り返した。

宮代「……尾上。聞いてくれ……」

尾上「いやっ! 聞きたくない!」

宮代「尾上!!」

尾上「やだよ、そんなの! 私……私は……っ!」

 こちらは乃々ルートで唯一、彼女の素が出たと思われる場面です。ここで「拓留が傍にいて欲しいと思ったのは自分ではなく乃々だった」ということを、彼女は悟ってしまいました。

 乃々の言う通り、彼女は矛盾しています。ゲームの目的は建前では「拓留を楽しませること」でしたが、ここで「やだよ、そんなの!」と言ってしまっています。

 

 前述した通り、世莉架は拓留の願いを叶える為だけに生まれたロボットではないのです。

 拓留の願いを叶えることが、自分の欲求を満たすことに繋がっている。なぜなら世莉架は、拓留のことが大好きな女の子だから。

 乃々ルートの屋上での戦闘は、尾上世莉架の自己を垣間見ることができる、数少ない場面なのです。

 

 

 屋上での戦闘の後、その日中に世莉架は本来はラスボスとして仕立て上げる予定だった佐久間を殺害し、自身がラスボスとして立ちはだかることに計画をスイッチしました。

 

尾上「女って怖わ~い」

 拓留に乃々の正体をペラペラと暴露をした場面。このねちっこい言い方も、全ては彼女の演技です。ラスボスは主人公が倒すべき敵にならなければいけませんから、拓留達から憎まれることが彼女の目的でした。

 

 

 しかし、どうして世莉架はわざわざ計画を変えようと思ったのか? どうしてまだ駒として利用できるはずの佐久間をわざわざ殺したのか?

 その答えはルートの終盤で、世莉架と決着をつけた瞬間に判明しました。

 

 

尾上「そう……か。それが宮代拓留の望み。だったら――」

世莉架は伏せていた顔を上げ、にやりと微笑んで、いとも軽々とディソードを構えた。

尾上「その望みごと葬ってやる!」

 世莉架が本当に葬りたかったのは――葬って欲しかったのは、誰の望みだったのでしょうね。

 

 

 個別ルートは拓留が他のヒロインと結ばれるようなシナリオばかりです。ですから乃々ルート以外の個別ルートでも、世莉架の複雑な心情を窺い知ることができます。

 例えば以下はうきルートのDREAM SKY ENDの終わり際にある一節です。

 

宮代「悪いな。最近、あんまり一緒にいられなくて」

尾上「う? 私のことは気にしなくていいよー。私はタクがそれでよければいいんだし」

世莉架は、そう言うと、まじまじと僕の顔を見つめた。

尾上「タクはいいんでしょ? それで」

もちろん、うきが元に戻ることが一番いいのだけれど、今の状況でそれは望めない。

なら、僕が出来ることをうきにしてやる。

宮代「……まあ、な」

これが今の僕が選んだ道。

尾上「うん。だったらよしっ」

僕の答えに、世莉架も満足したようににっこりと笑った。

尾上「じゃ、私は行くね。うきちゃんも、またね! チャオっす!」

 そして、ルートのエンディングを見終わった後、暗転した画面の中で流れる世莉架の声。

 乃々ルートを初めとした他のルートでは「ねぇ、タク。楽しかった? あはははは!」という笑い声が流れるのですが、うきルートでは「ねぇ、タク。叶えられた?やりたいこと……」と、切なげな声が流れます。

 

 これはまるで世莉架が、拓留とうきの二人を遠くから見つめながら、独り言のように呟いているかのようです。

 拓留のやりたいことを叶えられた喜びと同時に、そこには自分以外の女の子の姿があるというジレンマ。

 「これでいいんだ」と感じながらも、頬に涙が伝うような気持ち。極端な例えをしてしまえば、TRUEでの拓留の立場を世莉架が体感している世界線がうきルートとなるのかもしれません。

 

 

 

 このように個別ルートでは、尾上世莉架の矛盾を抱えた本心と、彼女の計画通りに行かなかった切ない結末を、何度か確認することができます。

 しかし、素の彼女の姿を見ることのできる場面といえば、やはり本編の11章が最も有名でしょう。

 アニメではシンギュラリティが流れていた場面です。

 

 私がアニメを見てボロ泣きしたのもこの場面でした。

 これ何度も書いてるんですけど、アニメのこのシーンだけは本気で原作超えしていたと思っています。だからこそCHAOS;CHILDのアニメはいくら糞アニと言われようと、個人的にはなかったことにはしたくない。

 私が大好きでずっと待ち望んでいたシーンが、原作を超えていたクオリティで描かれた。本当に嬉し過ぎました。

 

 

尾上「望んでいる! 私だからわかる! いや、私にしか理解からないんだ!」

 私がこの作品で1,2を争うぐらい好きな台詞です。

 これは彼女の計画とゲームメイカーとなった動機、そして彼女の全てを象徴している、悲痛の叫びでした。

 拓留のことは自分にしかわからない。だから自分は拓留にとって大切な存在になるはずだった。そんな彼女の心境が伺えました。

 

 

 

 世莉架を抱きしめてあげる拓留。こちらはアニメオリジナルのシーンになります。

 これは本編・メディアミックス・スピンオフ全てを含めても、拓留が世莉架に正面から優しさを向けてあげた、唯一の場面だったのではないかと思っています。

 「小さい頃からいつも隣にいた幼馴染のことさえ何も知らなかった」からのこの抱擁です。ついに拓留は彼女に対して正面から向き合うことができたのです。

 

 世莉架が拓留の願いを叶えようとしてたのも、自分が拓留にとって大切な存在になろうとしていたのも。

 自分が生まれた理由なんて関係なしに、全ては拓留にこうしてもらいたかったから。だったのかもしれません。

 

 

 

 短いですが語っていたらキリがなさそうなので、このくらいでやめておきます。

 

 世莉架は本作のメインヒロインではありますが、他のヒロインと同じ枠組みで語るなんてことは、到底出来ないようなキャラクターです。

 人間でない存在でありながらも、人間らしさを持っている女の子。それが尾上世莉架なのですから。

 

 とても悲しいことに、CHAOS;CHILDのどの世界線でも、世莉架の願いは叶ったとは言い難いものとなっています。

 本編では最終的に計画が破綻し、個別ルートでは拓留の願いが途中で変わってしまい、TRUEでは一生交わらないで生きていくことを約束し、LCCでも結ばれることはできませんでした。

 唯一願いが成就した可能性があるのは、OVER SKY ENDでしょうか。あれも真実を知ってしまった拓留が、世莉架に言われるがままに英雄になることを認めるわけがないですから、わからないところではありますが……。

 

 もちろん本編のTRUEにおいて拓留が選択したことは、世莉架への唯一の償いであり、優しさではありました。しかし、改変前に喚いていたように「普通になんかなりたくない」というのが紛れもない彼女の本心でしたから、あの結末で世莉架の願いが100%叶ったと断言することはできません。

 

 

 こちらはシンギュラリティのジャケットイラストです。

 自身の笑顔のジッパーを破り、切なげな表情を浮かべている世莉架。彼女は何を思うのでしょうか。