ついた客(※マキさんの紹介)が「遊び慣れてる人」と見破り、しかもその理由は「ボトルの名前でわかる」からだという。
ホステス業が初めての娘にそのような洞察が可能だとは考えにくく、水商売が初めてというのは方便と解釈するのがおそらく自然だ。
客はすれた女よりもおぼこい素人娘のほうを好むから最初はそのように振る舞え、と店が新人ホステスに指導するのだろう。
独り言をつぶやいているこのホステスも、当然ここが一軒目とは限らない。
ホステス業は人間関係や勤務条件などから短いスパンで店を渡り歩くことも珍しくない。
惚れたホステスの行方を辿って横浜から横須賀へと一軒一軒店を訪ね歩く客もいたし、
ホステスのほうも、むかし出逢った客が忘れられずに古巣の街に舞い戻り、かつての源氏名に戻して再会を待つ、などということもあったようだ。
もしかしたらこの客とホステスは、同じ二人のことかもしれない。
めぐり逢えたのだろうか。