レムデシビルとヒドロキシクロロキン 9

前回まで、抗生物質のなかでも、ペニシリン系とマクロライド系に触れてきました。
COVID-19の20年初期においてヒドロキシクロロキンとの併用で治療に用いられたのは、マクロライド系です。

なぜ、併用されたのか

マクロライド系の抗生物質が、クラミジア肺炎に用いられることが多く、とくにアジスロマイシン(商品名「ジスロマック」)が通販でも買われるほど普及していることがわかりました。
アジスロマイシンも、ヒドロキシクロロキンも、病原体の増殖を阻害するという機能が共通項としてあります。
併用する意図は、それぞれの阻害する過程が違うことにあるといってよく、マクロライド系抗生物質は、たんぱく合成を阻害します。
ヒドロキシクロロキンは、作用機序という観点でいくと、「どこ」を阻害するのか解明され尽くしたとは言えないので、マクロライド系抗生物質との関係は「補完的」もしくは「重複的」である可能性がどちらもあります。

細胞毒性とは

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細胞毒性とは

むずかしいですね。何回も読んでみましたが、まだわかりません。
細胞毒性とは、「細胞に対して死、もしくは機能障害や増殖阻害の影響を与える、物質や物理作用などの性質」(Wikipedia)だそうです。

増殖阻害とは、病原体が増殖するのを抑えるという意味でよかったと思いますが、どの過程を阻害するかが不明瞭です。

ヒドロキシクロロキンの使い方は意外なことに未解明

ヒドロキシクロロキンの使い方は、こうしてみると、その普及の広さにくらべて、あまり広く共有されてきたとは言えないようです。
だからこそ、これだけ様々な説が提出され、検証され、また別の説を呼び込むわけですが。
COVID-19が流行する速度に、治療薬の策定の速度が追いつけるかどうか。いま考えるべきことはそこだと人類は認識しているはずです。しかし、誰がそれを策定するのか。これが決まっていないと、ものごとはかんたんには進まない。こう考えています。


抗生物質とは、抗菌薬であり、このうちペニシリンは「細胞壁合成阻害薬」に分類されます。ペニシリンにも種類があり、天然ペニシリンと広範囲ペニシリンに分類されます。

どの細菌に効くのか

これは、相当に奥深いので、表を自分なりに作成してみました。薬理学の基本書をいくつか読むかぎり、このかたちで合っているとは思いますが、正確性について全部を保証しかねますので、お含み置きください。

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ペニシリン系抗生物質と、マクロライド系抗生物質


球菌に効く、淋菌に効く、梅毒トレポネーマに効くという共通項はありますが、「天然」では破傷風菌や髄膜炎菌に効くのに対し、「広範囲」では大腸菌やインフルエンザ菌に効くという違いがあって、これはけっこう大事な違いではないかと思いました。
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同じ表に入れてみたのですが、マクロライド系のクラリスロマイシンも、インフルエンザ菌に効くという共通項があります。
これは少し調べてみると、抗生物質の発展の歴史が関係しているようです。

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抗生物質の発展の時系列

このように、ペニシリンの発展が40年代、70年代という大きな戦争(第二次大戦、ベトナム戦争)の時期にかかわっている一方、クラリスロマイシンは90年代、アジスロマイシンは2000年代に出てきています。
インフルエンザが流行することが多くなったのは、海外旅行の発展ともかかわりが深いとされています。
そうすると、ペニシリンの有用性を「巨人の肩」として拝借し、マクロライド系の興隆があったと考えてみるのも、参考になるかもしれません。
インフルエンザに効くマクロライド系抗生物質が、COVID-19の治療に試されたのは、意外と偶然ではないのかもしれないと思いました。

レムデシビルに追いつくか、ヒドロキシクロロキン

ところで、レムデシビルとヒドロキシクロロキンの歩みをみてきたなかで、新たな展開がありました。

www.sciencedirect.com


これは、ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用が、一定の条件で有用であったとする研究成果です。
どう有用だったのかといえば、重症化してICUに入る前の併用では、死亡率の低下がみられたという結果です。

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Hydroxychloroquine and azithromycin as a treatment of COVID-19
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ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用で得られた治療過程

13日に発表されたばかりの査読論文で、この論文の影響が強まるとしたら、まだこれからだと思われます。

「ヒドロキシクロロキン アジスロマイシン」

Yahooで「ヒドロキシクロロキン アジスロマイシン」と検索してみると、上位1ページ目にはこのようなアドレスが出てきました。

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Yahoo検索「ヒドロキシクロロキン アジスロマイシン」上位10件

これを内訳で覗き込んでみます。

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10件に対するpdfの割合
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10件に対する.or.jpと.go.jpの割合

どうやら、学術団体あるいは医療関係の機関が提供する、論文の割合が多くなっています。
これは、もちろん今年に入ってからの論文が大半で、これまでにこのような組み合わせで研究がなされた実績が少ないことがわかります。

参考:ツイート数からみるレムデシビルとヒドロキシクロロキン

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レムデシビルとヒドロキシクロロキンのツイート数

あとがき

レムデシビルの新薬申請で決着ありか、とも思われたヒドロキシクロロキンとのレース。まだ審判は動かないようです。誰が審判なのか、それもわかりませんが、アジスロマイシンが2000年代に興隆した抗生物質なので、20年代になった現在、その作用が解明され、ヒドロキシクロロキンの作用にもヒントが浮かび上がるのかもしれません。
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