大航海時代到来の前段。ジェノヴァの船乗りたちは14世紀にはアメリカ大陸の存在を知っていた

コロンブスの新大陸「発見」の150年前には、既に船乗りたちの間では新大陸の存在が知られていた、という証拠が古文書の分析から証明された、という話。情報源は北欧人だろうと言われていて、要するにヴィンランド・サガの元になった出来事なのである。
言われてみれば「なるほど、知ってて当然なのか」と思った。

Italian Sailors Knew Of America 150 Years Before Christopher Columbus, New Analysis Of Ancient Documents Suggests
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2021/10/italian-sailors-knew-of-america-150.html

取り上げられているのはGalvaneus Flammaというミラノの修道士が書いていた1345年頃のエッセイ(というか作品メモみたいな感じ?)で、2013年に発見されたもので、修道士らしくラテン語での記載。
その中に、アイスランドの西にある、という Marckalada という土地についての話が出てくるという。これは、アイスランド・サガではマルクランドと呼ばれている土地と一致するだろうという。

Marckalada: The First Mention of America in the Mediterranean Area (c. 1340)
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00822884.2021.1943792

そう、今では常識となっているが、新大陸を最初に「発見」したヨーロッパ人は、コロンブスではない。
アイスランドからグリーンランド経由でアメリカ西部へ渡ったヴァイキングたちが最初。到達は1022年頃と推測されており、サガに登場するヴィンランドは現在のカナダ・ニューファンドランド島あたりではないかと言われている。


[>参考

地球温暖化とヴィンランド・サガ ~異常気象で始まるStory~
https://55096962.seesaa.net/article/201912article_27.html

ヴィンランド・サガ ~ヴァイキングが出会ったスクレーリング=ドーセット人とは
https://55096962.seesaa.net/article/201409article_17.html


その北欧人たちの知識が、船乗りたちの口を介して港町ジェノヴァで流布しており、Galvaneusさんの耳にも入ったのでは、というのが今回の話である。

ちなみに14世紀だと、まだギリギリ、グリーンランドには人が住んでいたはずの時期で、おそらく、行こうとすればアイスランド経由で航路は使えたと思う。当時の船乗りたちの間では「グリーンランドの西に土地がある」という知識は常識だったらしい、というのが今回の発見の大きな成果だ。何しろ、そのへんの一般人でも耳にして書き留めるくらいのだから。

とはいえ、この人物は、未完なものの「Cronica universalis」という、天地創造からのキリスト教徒に関わる出来事の歴史を描き出そうとした壮大な作品を書こうとしていたとのことで、かなり博識な修道士だったからこそ、記述に信頼がおけると判断されたのかも。ガチな一般人の日記だったら、信憑性ないとされて流されて論文にならなかったかも…。


この話が面白いところは、大航海時代の前段となる知識や土壌は、すでに14世紀には醸成されていたのでは? という話だ。
そして、もしかしたらコロンブス以前に、ヴァイキング以外の物好きな冒険野郎が西の海へ乗り出していた可能性もあるんじゃないかと思うのだ。

書かれていない、名も残されていない人々の物語があったかもしれない、と想像してみることは、とても楽しい。
歴史に残るものは、過去に起きた出来事のほんの一部でしかないのだから。




※最近あった、似たようなニュース

アゾレスアゾレス! アゾレスに最初に移住した人は誰なのか、という話
https://55096962.seesaa.net/article/202110article_7.html

この記事へのトラックバック