孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

2024年12月に読み終わった本リスト

転職活動とか色々あったのもあり、今年は年100も読まなかったす。94冊でした。

おつかれした!来年はこのまとめ続けるかは不明……(そういうと絶対やめちゃいそう)。

 

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基準:

  • 当該月に読み終わった本が対象(※読み始めたのがその月とは限らない)
  • 最初から最後まで目を通した本を『読み終わった』と定義

 

昨月の記事:

2arctan-1.hatenablog.com

 

目次:

 

光リザーバーコンピューティング: 原理と実装

だいぶ狭い範囲のゴリゴリの専門書やけど、学生時代かじっていた分野なので惹かれて購入。リザーバーコンピューティング(IPAとかはリザバーコンピューティングと呼んでる)はニューラルネットワークの手法のひとつで軽量高速かつそこそこの精度で時系列タスクなどを解ける手法。それだけだとふーんなんだけど、その性質上非線形な(厳密には満たさなきゃいけない要素はもうちょいあるんだけど)物理現象を利用して計算できるっていうことで、電子回路だけじゃなくてナノ材料とか有機材料とか力学センサーとか色々な物を活用した物理実装の研究がされている。当然光学系でも注目されていて、そのまとめがこの1冊という位置づけ。

光リザバーの他の物理系に比べた強みとしては色々あるけど個人としては処理時間の速さだと思う。省電力とかは大体他の材料系でも謳っていて正直用途にもよりけりだし比べづらいが、光学系で情報処理ができるのであれば電気回路だったりナノデバイス系よりかは基本早くなるだろうなと思うので、そこは強く言えるポイントではないかと思う(もちろん実験系とかタスクによってボトルネックが生まれそこに律速されて結局あんまり他のリザバーや別手法と変わらんとかありそうだけど)。自分の今後の人生にどれだけ役に立つかはわからんけど、非常に面白かったです!

 

 

新しい霊長類学―人を深く知るための100問100答 (ブルーバックス)

かなり昔に買ったのを積読してて年末大掃除の際に読んだ。100問の問いに対して1問1問数ページにわたってガチ回答が連なっているので、文庫本と思って舐めてかかると読むのに時間かかる。

霊長類は現在約350種くらい、サルも人間のように文化的な習慣を受け継ぐ(宮島のイモ洗い文化などが代表)、同族殺しをしたり小型のサルを食べる大型のサルがいる……など色々興味深い話があるんだけど、ブリッジングと呼ばれるチベットモンキーのオスが他の子供のチンチンをなめる挨拶だったり、ボノボのメスが互いに抱き合い性器をこすり合わせるホカホカと呼ばれる挨拶だったりとそういうサルの習慣の話を見るのが一番面白かった。

 

 

IOWN構想 ―インターネットの先へ

NTTが現在構想しているIOWNに関する思想や現状などをまとめた本。IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)の略で2024年に仕様策定、早期の商用化を目指しているらしい。

IOWNはオールフォトニクス(通信の完全光化)、デジタルツイン、コグニティブファウンデーションの3つの要素からなるという。通信や演算などを行うプラットフォームのようなものととりあえず読んで理解した。人工知能や量子コンピューティング、VR、ネットワーク、エネルギー……など11個の技術キーワードと絡めて相補的に発展させていくらしい。正直最初に掲げたIOWNの構想と直接関係ないんじゃないかな?というトピックも割と入っていて、NTTの色々な研究所がやっている研究をとりあえず全部ねじ込み、もとい横ぐしを刺してトータルのサービスとして売るような感じかな?と思った。

この書籍は2019年とかの構想し始めた時点のものなのでふわっとしたことしか言ってないが、ホームページを見る限り色々と進んでいってはいるようだ。完成が楽しみですね。

www.rd.ntt

 

 

 

図解レンズがわかる本

レンズの歴史から始まり、製造法や種類、用途、高校物理レベル(スネルの法則とかそういうの)の光学から大学レベルのレンズ光学の簡単な幾何的な作図を通じた法則などまで図解で分かりやすく解説されている。大学でたしかに習った記憶はあるけど結構忘れてたなーと読んでて思った。解説されてるのは可視光を対象にしたレンズのみであり例えばX線などを取り扱う光学系などの話は入っていない。

 

図解レンズがわかる本

図解レンズがわかる本

  • ノーブランド品
Amazon

 

 

よしもとプログラミング部と学ぶPython「超」入門教室

基礎的なプログラミングの内容紹介、環境構築、基本文法などをやったのちに、tkinterによるGUI表示、そしてfasttextやVGGなどのAIモデルを1部使って大喜利アプリを作るまでを解説している。本書を通してなにか動くものができるというのは魅力だと思う。解説は最小限って感じで、プログラミング部の吉本芸人が本書に出てくる意味合いはほぼない。昔受験参考書にあった黄色い本の『○○の点数が面白いほどとれる本』シリーズばりにキャラクターの意味がない。
プログラミング部のメンツには有名なとこだと東大芸人の田畑と元たかだコーポレーションの大貫さん、アメトークとかにたまに出てるiPhone芸人の人など。

 

 

 

テクノアメニティ

日本触媒の歴史とか今後の動向とか多角的に見れる本だと思ったら、もう少し搾っていくつかの分野に対する研究開発・量産立ち上げエピソードが記された本だった。創業者の話とかは初めにチョロっと出てくるけど以降は高度経済成長期以降の商品・製造拠点展開の話がメイン。

無水フタル酸の成功から吸水ポリマー事業を確立させたり、インドネシアにプラントを立ち上げる話だったり、化学系の学生が見たらワクワクする内容になっているだろう。一方で社員一人一人がイキイキしている、数千人を超えるけどベンチャースピリットを持っているなどの記述はよいしょしすぎ感があってほんまかー?と思った。

 

 

 

「システム管理者の眠れない夜」 -ほんとうに価値のあるシステムを求めて (ITブッククラシックス)

ちょうど2000年問題前後の時代に雑誌に連載されていた記事をまとめた本で、機械メーカーで社内SEをやっていた作者の苦労話などがまとめられた一冊。必死こいてシステムの不具合を改修したり原因調査を行ったり、対応が後手後手に回って福岡と大阪を三階も往復する羽目になる話だったりと面白くて「システム管理者絶対やりたくね~」となる一冊だった。一番ひどいのは別部署の部長に急ぎの要請されて上司が不在の中不具合対応で出張したのに、帰ってきたら上司と別部署の部長の仲が悪くて「パンダグラフにでも乗っていったから交通費かかってないんだろ?お前が勝手に行ったんだから出張は認められない」と自腹を切らされた話。自分だったらさすがにその場でその上司ぶん殴っていると思う……。

 

 

 

デジタル戦略の教科書

デジタル化に関する戦略がまとめられた本で、調べたら評判良さそうなのでとりあえず読んでみた。けど割と羅列されているだけって感じで(コンサル出身の人が書いた本ってホントそういうの多いよなあ……)、あんまり入ってこなかった。

ざっくり製品やサービスをデジタル化することのメリットや先行事例、デジタル競争では早めにリリースしてフィードバックを回していくことが重要だったり、プラットフォームを築いてユーザー間の相乗効果が生じるところまでスケールさせて成長することが大事だったり……そこら辺の基礎理論をつらつら書いている。

 

 

 

全部、言っちゃうね。

幸福の科学で出家した清水富美加改め千眼美子の暴露本みたいなもの。

千眼美子は6歳で三帰誓願して幸福の科学に入会。両親も2人の姉も会員で典型的な宗教二世という感じ。小6の時にスカウトを受けたのをきっかけで芸能活動を考え始めたらしい。幸福の科学の仏法真理塾のサクセスNo.1をやってた。中学は日藝から空間デザイナーをやろうと思って日大三中に入り、ダンス部に入りレプロにスカウトされモテにモテたらしい。堀越に行ったから出席率で仕事率がわかる状態で、普通科も邪な感じな人が多そうでは全然友達が出来なかったとのこと。まれに出た時で月8万とかで2016年にようやく25万とからしい(といいつつ年収は1000万くらい)で、売れ始めたタイミングで歩合制から給料制に変えることを拒んだら干されかけたなどのエピソードもありレプロしょっぱ!となる。トータル、レプロもひどかったけど両親とかの対応もあんましで、その両親も幸福の科学だからそっちの関係者も清水富美加のつらい労働環境に一部加担してないか?と思った。まあ本人が今幸せならそれでいいと思う。

 

 

 

ありがとう、わたし 乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで (文春e-book)

元乃木坂46から心理カウンセラーになったひめたんこと中元日芽香の人生史のような1冊。

中学までは習い事に勉強に学校行事にと結構全部上手くやれてたけど乃木坂では開幕アンダー、以降過食症と闘いながら選抜とアンダーの出入りを繰り返したり適応障害になったりした経緯が割と赤裸々に書かれている。令和の仕事体制ではありえないような競争主義の弊害がめちゃくちゃよく分かる1冊だとは思った。とはいえ、見ているオタク側からしたら誰が選抜に入るかが大人数アイドルの魅力であり、予定調和の固定されきった布陣だったりログインボーナスみたいなお情け選抜は見ててげんなりするので難しいところ。中元日芽香が心身の限界に辿り着いた中で決めた進路が心理カウンセラーやったんだなぁということがわかった。

 

 

 

グレタ たったひとりのストライキ

環境活動家グレタの母が書いた1冊。なぜグレタがストライキをするに至ったかやスピーチの内容が書かれている。サッと読めると思ったけど環境に関する主張などが色々書いてるので意外と内容はぎっしりしてる。全体的に化石燃料の枯渇、地球温暖化に加えてヴィーガン的な要素も入ってて盛りだくさんって感じ。
妹も妹でADHDだったりグレタの両親はオペラ歌手上がりだったりとそもそも背景として知らんかったことが割とあった。めちゃくちゃ感覚が鋭敏なアスペルガー、鬱で溜まったエネルギーが問題に対して何も動いていない/楽観視しすぎているように見える環境活動に全て注がれてるんだなぁという印象。環境に対する主張は『理論上はそうかもしれんけど』という感じだが、化石燃料をほぼ使わないパリ協定を厳密に守る生活をするくらいなら人類は滅んでも良いと言う人が相当数いるから厳しいだろうと端的に思った。ただ、電気自動車とか太陽電池だけでは……という意見には同意。

 

 

2024年11月に読み終わった本リスト

この月は誕生月でした。

 

 

基準:

  • 当該月に読み終わった本が対象(※読み始めたのがその月とは限らない)
  • 最初から最後まで目を通した本を『読み終わった』と定義

 

昨月の記事:

2arctan-1.hatenablog.com

 

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指標・特徴量の設計から始めるデータ可視化学入門

今年読んだ本の中でもベスト格だと思う。めちゃくちゃ参考になった。

データを『見える化』するという観点において、指標や特徴量の使い方やアンチパターンなどが豊富な図例で解説している。可視化にはデータの特徴を多くとらえるための探索志向データ可視化と見せたいポイントを絞った説明志向データ可視化があり、目的に応じた使い分けについて各手法の解説と合わせてまとめられているのがありがたい。この本はエンジニアやってて客先に技術検討成果を紹介する仕事をする前に読みたかったな~と思う。

 

 

リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック (Theory in practice)

今更取り上げるの?ていうくらいのプログラマーなら誰もが読んでるレベルの名著。実際スッキリしてて分かりやすかったし、そこまで難しいことは書かれていない。

大きくは変数名だったりインデントだったりのすぐできる表面改善、ループやロジックを単純化する改善、そして共通部を括り出したりするコードのリファクタリングの3つの観点の改善ポイントがまとめられ、4部で実際のテストやコード改善の話が述べられている。コード書く時に多分傍らにこの本を置くなりして、忙しい時にも忘れないようにしないといけない。気を抜くとコードはすぐスパゲッティになるので……。

 

 

データサイエンティスト・ハンドブック

2016年くらいのかなーり古いデータサイエンティストの指南書みたいな本で、IBMのデータサイエンティスト陣が執筆している。今現在言われてるような内容と大きくは変わってないが、技術手法解説の中にまだディープラーニングの内容は入っていないのが時代を感じる。

本書によると、データサイエンティストの要素としてビジネス力/データエンジニアリング力/データサイエンス力の3つを定義しており、どれかに強みを持ちつつもどれもある程度備えていることが必要だという。3部では組織構造と育成についても述べられており、専門組織を持つか部署横断でやっていくかのメリットデメリットについても語られていて、実際スキルを持つ人材をどこで持つかというのは多くの事業会社が頭を悩ませてるポイントだと思う。

 

 

こころでつくるAI はじめての未来をつくる私達

9DW(九頭龍が名前の由来でnine head dragon worksという正式名称らしい)というベンチャー会社の出した本。

この本の筆者である井元氏はセキュリティ・海外へのデータ情報流出を防ぐためにAIのフレームワークのAPIを使うのではなくフルスクラッチでの開発にこだわっており、また将来的には映像・音声・文書など様々な情報をリアルタイムで処理せねばならないため汎用型AIの開発を最初から目指している。その成果が、IYOという独自AIに集約されているという。

具体的なAIの中身だったり他社と比べた独自性がどのようにあるかなどの話は本書内にはほぼなく理想ばかり語られており、AIかじっている身としてはかなり不安があり『なんか危なそうな会社だな……』という匂いがプンプンする。APIを使わないフルスクラッチ開発は構築し運用するのにめちゃくちゃコストがかかるし、マルチモーダルなAIだとスモールゴールは設定しにくいだろうからだ。また、世界的なAIトレンドに対して特化型AIの積み重ねだとAIごとに場所を取りスケーラビリティが大きいという話も疑問符がつくし、AIモデルを動かすサーバーが国外にあったら推論時にデータが流出する恐れがあるというのは正しいと思うが、それが既存のフレームワークによるAPIを使用することによる開発効率化に取り組まない理由にはならないなと思った(既存フレームワークのAPIだとモデル構造や処理の仕方がオープンソースとして公開されていることから、ハッキングされることを懸念している?)。総じて、崇高な理想はわかるんだけどそのためにめちゃくちゃ本質的じゃない手間をかけている印象で、アウトプットをきちんと出すのに苦労しそうだなという印象を受けた。私ならこのAIベンチャーでは働かないだろう。

ちなみに一応今もホームページはあるが更新が2019年で止まっていたり、共同で開発開始と書かれていたプロジェクトの続報が一切なく恐らく何らかの理由で頓挫していたり、社員インタビューに出てきたCTOの人が別会社に転職してデータサイエンティストになっているのを見かけたり……と色々とお察し。

 

 

物語でわかる AI時代の仕事図鑑

5章からなるAIなどが普及した2030年の働き方をイメージした小説のようなもので、巻末には未来予想の元になったソースとなるデータやニュースなどの解説が載ってる。話としてはシビアなところが結構あってそこそこ面白かった。

自動車会社から電動モーター会社の工場長に転職した女性、メガバンに勤める主任の男性、九州の市役所の社会福祉課で働く係長の女性、カーナビなどの車載機器開発から漁師になった女性、岡山で保育士をしながらたまに弁護士活動をする男性という多種多様な各章の主人公たちが2030年のAIが普及した世界の中で色々と苦労しつつ仕事をしている。この主人公たち、全体的に仕事で苦労していたり状況があんま芳しくなくて言ってることが話の展開は暗くて、特にあんまり状況が変わらないまま少しだけ心が前向きになったとこで話が終わるので物語と言うよりはその時代の状況の人々の日常を切り出しただけという感じ。

 

 

 

近大革命

近大の広報責任者かつ近大創業者世耕弘一の孫である筆者が近大を受験者数1位に導いた仕掛けが書かれた本。頻繁に出てくる大学広告やプロモーション戦略がエネルギッシュであり近大のギラギラ感が伝わってくる。

筆者は元々近鉄で広報課長としてプロモーションやリスクマネジメントに携わった経験があり、また筆者自身は大学受験をせずに同志社系列校で進学した(お前近大ちゃうんかい!と思ったけど付属校で勉強してなさすぎて近大の過去問が全然解けなかったらしい)というバックグラウンドから、フラットな視点で大学受験産業や大学の広報について改革を成し遂げていく。筆者が盛んに語っているように大学には産近甲龍、関関同立、あるいは旧帝大などととにかくヒエラルキー構造が長年固定化されておりそれが受験に影響していると語る。

筆者は漫然と出している無料誌などの特徴のない広告を削り、予算を電車広告などの訴求力の高いところに絞りインパクトのある広告を打ち出す戦略に出てそれが大きく反響を得た。また、当時は反応の薄かったネット出願を出願料を割引してアピールして移行に成功し、連続で志願者数全国一位を獲得するなど実績はすごい。近大はレストランも出てるしマグロで儲けてるイメージがあるが、実際は大学収入のわずか数パーセントに過ぎず半数程度は大学病院の医療費だそうだ(医療って儲かるんですね)。広告の重要性が感じられる一冊であり、その関係の人は読んだら得られるものが沢山あると思う。

 

 

2024年10月に読み終わった本リスト

この時期くらいに転職活動は終えていました。

 

 

基準:

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  • 最初から最後まで目を通した本を『読み終わった』と定義

 

昨月の記事:

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上流から下流まで生成AIが変革するシステム開発

QRコードを読み込んでポイントを貯めるアプリ開発を例に、システム開発において生成AIをどう使うかが実際の生成例などと併せて書かれた1冊。

この手の分野は本当に生え変わりが激しいので細かいツール部分はすぐ陳腐化することは置いておくとしても、全体的には購入した時に期待していたほどの情報はなく「まあそうだよね」という感じだった。mermaidなどの記法で仕様側の図も作図できるようにしたりとか、筆者が独自に定義したTrace index Diagramなどの図示と生成AIを活用した叩き台を併用して顧客に提案・説明する話は参考になる。

 

 

本質を捉えたデータ分析のための分析モデル入門 統計モデル、深層学習、強化学習等 用途・特徴から原理まで一気通貫!

最近書店の理工系コーナーにずらっと並びがちのソシムのこういう系の本で、有名な数理系VTuberの中の人が書いた本。このシリーズ表紙がカラフルでなんかいいですよね。

まずとにかくボリュームが凄い!筆者がコスパ最高と自身でおっしゃるだけのことはあり、だいたいの分データ析手法の心がのっている。広く浅くという感じではなく、広く可能な限り詰めてるという感じ。そして数理説明も手を抜いていないので、気を抜くと普通に???となってしまうので注意が必要。直観的な説明がちょこちょ挟まれていて、初めて触れる分野については特にありがたい。

 

 

この一冊ですべてわかる データサイエンスの基本

全国初のデータサイエンス学部でお馴染みの滋賀大学のチームが出した本。実際の学生たちが滋賀県にまつわる公的データなどを分析したものが出てきている。

データサイエンスの基本というタイトルの通り、やっていることは基本的な集計とかグラフによる可視化、主成分分析とかそんなところなんだけど『実際に存在するデータ』を使用しているためイメージがわきやすいのと、出てきたデータから何を解釈するかのプロセスを感じれるところがこの本のいいところだと思う。実際分析手法にかけるのは簡単なんだけど、その結果から何が読み取れるかを判断するのがデータ分析の難しいところだったりするので……。

 

 

 

エヌビディア 半導体の覇者が作り出す2040年の世界

一時期は世界時価総額1位になったこともある、間違いなく昨今の生成AIバブルでトップクラスでウハウハなエヌビディア様に関する本。

ゲーム業界向けの高性能グラフィックチップ開発から始まり、AI向けの半導体にシフトするまでの話やビジネスモデル・売上比率の話などは割とふむふむと読めた。筆者は記者なのだが、半導体原理の解説についてはこのレベルならネットで調べたらすぐわかるからいらんかな~と思ったのと日本の半導体凋落の話題も1章割かれているんだけどそこは筆者の主観と結果論的な話で全然納得感がなかった。

 

 

創業者が語るソディックの経営 顧客のために歩んだ発明の曰々

放電加工機などで知る人ぞ知るソディックの経営者が書いた本。読んでて自画自賛が多いのが気になるけど、実際元いた会社の子会社を自力で買い取ってソディックを創業し東証一部上場まで漕ぎ着けたガッツはめちゃくちゃすごい(てかそんな企業の例聞いたことない)。1代でゼロから会社を築いた人とはまた別の凄まじさがあると思う。

ビジネス的なところで見ると、放電加工機を始めマシニングセンタ、金属3Dプリンタなどの工作機械周辺の完成品はおろか、レーザやLED照明、ステージ用のセラミック材料、吸収合併した食品機械など本当に手広くすべてのフェーズの製品を内製化していてすごいなと思う一方、どこかの事業部が赤字とかになったり予算の振り分けが上手くいかなくて競合に後れを取ったりしそうで大変そうだな~と思った。あとソディックのオープンワークはめっちゃ評価低いので暇な時にでも見てみてください。

 

 

コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル (文春e-book)

結局コンサルファームに行くことをこの時には決めていたので、なんかAmazonのオススメに出てきたので買って読んでみた。

筆者がジュニアからマネージャーに至るまでのセクションでそれぞれやらかしたエピソードと教訓をベースに書かれてて読みやすくわかりやすい1冊になってる。プロジェクト管理を絶対だと思って協力会社のエンジニアともめまくっていたエピソードとか、マネージャーでプロジェクトを炎上させて計画遅延しまくったエピソードとかいてててて……となる話も結構あるので頑張って同じ轍は踏まないようにしたい。

 

 

工事現場に輝くオンナ

表紙の哀愁に惹かれてブックオフで購入。

いわゆる女性が工事現場に進出していく展開やゼネコンや専門業者ごとの取り組みについてまとめられている。93年であり、大林組のゼネコンとかはようやく男性の補助ではない総合職に女性を取り始めたところだったりして時代を感じる。一方、専門業者にあたる企業では女性を積極採用したり作業服をおしゃれで明るい色にしたり、など結構頑張っている企業が紹介されている。全体的に結構景気のいい話や取り組みが多いが、本書で紹介されていた93年時点で666名も新卒を取っていたという勢いある佐藤工務店が調べてみると財務管理甘すぎて潰れていたりと世知辛さを感じる。

 

 

女芸人の壁

時代による女性芸人と周囲の変化をテーマに数々の時代を代表する女性芸人にインタビューした連載と特別対談(Aマッソ加納2回目、上沼恵美子のコラム)をまとめたもの。
女芸人の女性性や時代の変化について、インタビューで自由に色んな女芸人から引き出しているがこの意見は本当に十人十色といったところで、時代によってまた異なった大変さがあるなといったところ。自分自身はお笑いを見ていた部分は00年以降なので、イケメンに絡む/ブスいじりをされるという女性芸人の属性を最も自然に見ていた世代かもしれない(定番の流れとして当時のバラエティではそういう役割の女芸人がいた)。これの扱いが最も過酷だったのはインタビュー受けていた中だとモリマンだろう。色々思うことはあったが、清水ミチコの既に結婚しており歳もいっていた、モノマネ芸人という枠にある種逃げたという話は興味深い。
内容が内容なだけに恐らくインタビューを受けてくれなかった女性芸人が沢山いるだろうと思うが、近年の芸人だとゆりやんレトリィバァ、ベテランだと友近、そして00年代バラエティ女芸人の筆頭格として森三中の話は聞きたかったところ。

 

 

 

2024年9月に読み終わった本リスト

インドネシアに2ヶ月連続2回行っていた異常者。

 

 

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決算書の読み方最強の教科書 決算情報からファクトを掴む技術

決算書とか読めるようになりたいな、と調べたら一番評判いい本だったので買ってみた。ボリュームがあり流し読みしたところもあるけど、一つ一つ会計士がどういう点に注目しているかが追体験できるような作りになっており、自分のような会計の素人でも着いていこう!と思える一冊になっている。

本の内容と関係ないんだけど、この著者自分の一つ上で「こんな近い年齢の人がこんなすごい本を!?」とぶったまげてしまった。

 

 

 

戦略コンサルティング・ファームの面接試験 新版――難関突破のための傾向と対策

この頃には転職活動を始めていたので、ケース面接があると言われたのでとりあえず買った。

いわゆる経営戦略的な問題を投げかけられた時にどのように状況を整理して、論理的に解決案を導くかということがアイビーケースシステムというやり方で説明されている。とりあえずこれに従っておけば何とかなりそうだという感じがあった(こんな脳死だと落とされそうだけど)。

大量にケース面接のロールプレイ例が載っているので、とりあえず読みまくって最悪これくらいの追求はあるのかということを事前に知っておくことはできたのはよかった。ケース面接受けるなら役に立つと思う。

 

 

この1冊ですべてわかる 新版 ITコンサルティングの基本

転職の内定先の中で迷っていた時に、ITコンサルティングがどんなもんか調べるために購入。

自分はどちらかと言えばR&Dに近い仕事をしていて、いわゆるシステム開発・運用的な知見はあんまりないんだけどこの本を読む限りだとITコンサルだとそこら辺を広範にキャッチしていかないといけないんだと思った。ITコンサルで重要なキーワードに介しては概説程度で、転職面接対策については一般的な対策本の導入レベルだったが、キャリアプランの話だったりどんなファームがあったりするのかなどの業界構造の話は参考になった。

 

 

陸に上がった日立造船――復活にマジックはない あるのは技術力だ

造船事業をとっくの昔に手放してもうやってないことでお馴染み、日立造船の歴史や事業内容がガッツリと書かれた1冊。ボリュームはしっかりあり、この企業を受ける学生なら読んでおいて絶対に損はないだろう。

西九条で英国貿易商ハンターが創業し、造船事業で名を上げ、鉄橋や現在の主軸となるゴミ焼却炉などの事業を技術提携などにより立ち上げ、過去に二度あった赤字による各事業の子会社を立てまくったり手当たり次第に新事業を始めたり、祖業である造船事業を売却し……という流れや周辺の技術の話がめっちゃ載っている。この本読むとよく日立造船潰れずに生き残ったなと結構感動する。

この本の最後に日立造船の名前が売れた時に改名する、って社長の言葉があったけどめでたく今年(2024年)の10月に改名しました!

www.nikkei.com

 

 

半導体ビジネスの覇者 TSMCはなぜ世界一になれたのか?

今現在世界で最も重要な企業の一角とも言える、台湾のTSMCについて長年台湾の半導体業界を追い続けてきた記者である筆者がまとめた1冊。

ざっくり言うと研究に巨額の投資をし続けプロセスの先端を走る、物価の安い台湾でシリコンバレーにも引けを取らない破格の好待遇を社員に与える、ファウンドリ専業というビジネスモデルがTSMCの強さの理由のキーじゃないかなと思った(実際には7つの強みがまとめられておりそこは本書を読んで確認してほしい)。TSMCは実は台湾政府主導で、テキサスインスツルメンツで事業部門のトップだったモリス・チャンを呼び、大手企業にも投資を呼び掛けて立ち上げた政府主導の企業だったことにびっくり。何となくモリス・チャンドリブンで始まった企業だと思っていた。台湾の半導体事業への70-80年代の仕込みはすさまじく、それが花開いて今海外の大学院で博士号を取った優秀な人材が台湾で活躍しているようだ。

今後の展望について主に先端プロセスを走るインテルやサムスンなどとの比較が書かれており、個々の分析も読みごたえがあった。半導体事業に興味ある人なら読むべき本だと思う。

 

 

全図解 メーカーの仕事 需要予測・商品開発・在庫管理・生産管理・ロジスティクスのしくみ

結構前からAmazonとかでオススメで流れてきてたんだけど、ブックオフで220円で売られていて購入した。

メーカーのビジネスについて、大きく顧客ニーズ、商品開発、製造、サービス・コスト、物流の5章に分けて解説されている。全図解ということで色々表やフローみたいな図は出てくるが全体的に広く浅くといった感じで、章立てや表の区分の甘さとかが気になってあんまり内容が入ってこなくて面白くはなかった。

 

 

いつやるか? 今でしょ! (宝島SUGOI文庫)

林先生の書いた自己啓発本。目標から逆算して努力する、身だしなみは整えて、あいさつは誰に対しても元気よくみたいな割とよくあるやつもあるけど、「優秀な人は車通勤しない!歩け!」とか「人には利き手みたいな利き顔がある!」などのあまり聞いたことのない主張があって普通に読み物としても面白い。あと、魅力的な女性として柳原可奈子挙げてべた褒めしているの本当に面白かった。

 

 

 

2024年8月に読み終わった本リスト

インドネシア旅行の合間にちまちまと呼んでましたよ、実は!

 

 

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昨月の記事:

2arctan-1.hatenablog.com

 

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深層学習による画像認識の基礎

Transoformer系列(Vision Transformer)を含む近年の画像認識手法や知見がまとまった一冊。画像認識系、意外と近年の手法がまとまった本はなくて2017,8年くらいの本で止まってがちだったので色々と知れて役に立った。

Transoformer系列の画像認識モデルはCNNと比べて高性能を出せるが大規模な事前学習・大量データが必要となり諸々の学習手法の工夫を行うことでSwin Transformerなどの構造ベースの計算の軽量化などが図られようやく実用レベルのものになった中々試行錯誤の末の産物なんだなと(普及しているAIモデルは大体そうだけど)。そのほかにも物体検出、セグメンテーション(領域分割)などの応用手法や、自己教師あり学習、画像と自然言語などのトピックでそれぞれ一章ずつまとめられている。

 

 

 

人工知能とこれからの仕事 ~法律業務AI開発記

筆者は弁護士をしながら契約書チェックサービスをAIで行うリーガルテックGVA TECHを設立。元々弁護士としてスタートアップ企業への法務サポートなどを行う中で、価値ある業務に集中するにはどうすればよいか?というアイディアで企業に至ったという。弁護士などのユーザー側がしっかりAIを勉強し、要件定義をして開発を行っていく行動力がすごいと思う。AI単体よりも実務との掛け合わせが強いんだな~と思うとともに、法律分野にAI代替やその先のニーズは色々眠っているんだなと思う。今だとLLMとか出てきて単なる要約などのサポートはかなりやりやすくなってそうだし。

今どうなっているか調べたらちょうど数日前に上場していた。着実に成長させていっているみたいですね。

gvatech.co.jp

 

 

 

AI防災革命 災害列島・日本から生まれたAIベンチャーの軌跡

こちらもAIベンチャー創業者の本。筆者は阪神淡路大震災の経験を踏まえ防災ボランティアにいそしむ中で、この仕事を生業にしたいと防災ベンチャーであるスペクティを設立したとのこと。

スペクティは災害時の防災情報をリアルタイムで提供するツールを開発し、最初の一年は無料で使ってもらい後から課金する戦略をとった。防災という市場の小ささを理由にベンチャーキャピタルから融資を断られ終わりかけたところでフジテレビから出資してもらったり、大手が後続で参入してきたりと結構苦労してきたようだ。ただ大手は関連ワードに紐づく情報を手あたり次第提供する粗悪なものだったようで失速したらしく、スペクティとしては情報を最終的には人の手で選別するということで災害時に最も重要な質を担保している。その他にも官公庁が主なターゲットということでベンチャーにしては珍しく大手販売代理店を使っていたりとビジネスの性質を感じて面白い。スタートアップは大きな市場を狙うべきではない、衰退している市場にこそチャンスはあるという言葉の説得力は結構あるなと思った。

調べた限り、2024年現在も元気にサービスを提供し続けているようだ。

 

spectee.co.jp

 

 

 

 

エンジニアリングが好きな私たちのための エンジニアリングマネジャー入門

本書の主張としてはマネジメントはコードに通ずるものがあり、組織や体制を最適化して最善を尽くす義務があるとのこと。

全体的にはメンバーの価値観を知ろう、フィードバックは積極的に、弱みを開示して過ちを素直に認めて謝ること。など、理想的に言えばチームプレイとして割と当たり前のことを言っているんだけど、それがやりづらいのは会社などの組織の評価制度などとの齟齬があるからなんだろうな……でも、ここら辺がちゃんとできていないマネージャーがいると若手の離職が大量発生して地獄になるのでやっぱりちゃんとこういったマネジメントスタイルは浸透させる必要あるでしょうね。1on1がマネージャーの一番大事な仕事というのは個人としては本当に同意するけど、上層部の忙しさを考えると実際には形骸化していることが多いなと。その他にも会議に関してや、共同開発時の注意やプルリクエストの粒度などエンジニアリング観点でのマネージャーの注意事項もしっかり記載されていてプロマネとかやるなら読んだ本が良い本だと思った。

 

 

 

新事業開発スタートブック

新規事業を会社の事業部として始めるやり方とか知りたくて買ってみた。

基本的には事業テーマを選ぶ→顧客と提供価値を定める→事業計画を立てるの3ステップでそれぞれループを回してブラッシュアップをしていくという流れらしい。事業テーマにはAIとかDXとか流行の言葉を何となく入れないこと、とにかく30点くらいの出来でもいいから仮説を作って検証するループを回すこと、技術力を売りにしないこと、新事業に社運をかけないこと(余裕がある時に仕込んでいくこと)など一つ一つの話は納得感があり、またモデルケースとなるストーリーもあり読みやすかった。

 

 

 

事業を創る。

上の本と合わせてブックオフで安かったので、比較する意味合いも込めて購入。こっちは製造業の事業創りという観点で書かれており、最終章に自動車だったりヘルスケアだったりの実際のケースがまとめられている。

こちらではそれぞれの業界の中長期的なメガトレンドを抑え、観測可能な指標を定期的にモニタすることが大事と書かれていたり、アライアンスや企業の機能を可視化し組み合わせるなど、より経営視点でかつ具体的な話として記載されている印象。コンサル出身者特有の整理されているけどなんか残らない感じの文章で本としては上の本の方が面白かった。

 

 

 

自分を信じる力

ラグビー日本代表の福岡選手が書いた自伝のようなもの。

ラグビー時代の鬼しごきは令和なら問題になるくらいの徹底ぶりだったり、高校時代のラグビーに関するエピソードやラグビーを大学で続けるか医学部を目指して浪人するか迷ってエピソードなど、スポーツ部分はかなり読みごたえがある。一方で選手活動をやりながら短期間で集中して勉強して順天堂大学医学部に受かったという、みんなが気になる部分についてはさらっと流されていた。一応擁護すると日本代表の時から塾には定期的にかかって、高校基礎レベルの学力は維持し続けていたらしいから合格は理論上不可能ではない……と思う。たぶん。

 

 

2024年7月に読み終わった本リスト

7月はプロジェクトがひと段落したのでほとんど仕事せず、死んだように生きていました。

燃え尽き症候群ってやつ。

 

 

基準:

  • 当該月に読み終わった本が対象(※読み始めたのがその月とは限らない)
  • 最初から最後まで目を通した本を『読み終わった』と定義

 

昨月の記事:

2arctan-1.hatenablog.com

 

目次:

 

 

 

防衛大学校-知られざる学び舎の実像

筆者は前防衛大学校学長で、一般人がよくわからない防衛大学校の組織体制や行事、世界の軍事学校などと比べた時の特殊性などが語られている。

普通の大学と比較した特殊性としてまず文科省ではなく防衛省管轄なので『大学校』であり(防衛大学と呼ぶのは間違いであり法律違反らしい!)、91年からは学位授与機構を経由して学位が授与されるようになったらしい。また、防大は世界的に珍しい陸海空が一体となっている上に、大学校と士官学校の性質を併せ持った機関とのこと。

防大の名物イベントとしては三大行事の入学式、開校記念祭、卒業式などが有名。また一年次は遠泳、二年次はカッター競技(漕艇)、三年次は断郊(クロスカントリー)、四年次には持続走などと開校記念祭の棒倒しとか含めて11種の競技会があり年間で大隊ごとで総合成績を争っているんだとか。集団生活がメインになり、階層構造の隊の中で過ごすことを考えると普通の大学とは全く異なった印象を受ける。トータル1年で1割近く退学することもあり最初の一年が鬼門のようだ。防大周辺の制度や歴史、今後の動向などはすべてまとまっているというボリュームなので気になった方は是非読んでみてほしい。自分は読んでて楽しかったし、防大出た後輩と今度会うときに色々聞いてみようと思った。

 

 

 

ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務~ (光文社新書)

そろそろ財務についてもわかるようになりたいな、と思いなんか読みやすそうとのことだったので購入してみた。

ファイナンスは企業価値の最大化に役立つツールとざっくり紹介されており、会計は利益に、ファイナンスはキャッシュに着目してみるとのこと。基本的な目線は投下した資本に対しどれだけ収入を得たか(利回り)をベースに考え、将来的な利益の不確実性(リスク)に応じたプレミアムがつくと考えるとのこと。これは債権者の場合と株主の場合で異なってきてこれらの加重平均値を取ったのがWACCという資本コストであり、経営者はROICをWACCより大きくすることが使命とのこと。

 

 

 

 

新版 財務3表一体理解法 (朝日新書)

これも同じく評判が良かったので合わせて買ってみた。損益計算書、賃借対照表、キャッシュフロー計算書の3表に注目してお金がどう動くかを解説していて文庫本ということもありとにかく読みやすい。

投資、財務、営業のキャッシュフロー計算書の小計のプラスマイナスで経営状態をざっくり判断する話とか参考になった。とはいえ定期的に読み返さんと忘れちゃうだろうな〜と思う。

 

 

 

高学歴大工集団

大卒人材を職人として育成する平成建設の社長が書いた本。

建設業界のビジネスモデルはゼネコンや設計事務所が受注したものを各専門業者に外注する下請け構造になり、本当の意味で全体を見渡せる棟梁のような大工はいなくなっている点を筆者は業界の問題点として懸念しており、それらを全て内製化しまともな技能を備えた棟梁を育てるべく平成建設を作ったという。営業出身であり『富裕層と情報を交換する』ことでコネクションを作る営業スタイルや360度評価だったりリーダーの指名制など、育成と連携に重点を置いた仕組みづくりを置いている近代的なところもあり筆者はかなり柔軟なところもありながらパワフルな社長だと思った。

 

 

 

九州産業大学エコノミクス 2018年3月第22巻3・4号

九産大の美術館に行った後、九産大の駅前のブックオフで売っていたのを購入。明らかに学内誌だしこんなん売っちゃダメだろと思うがこういう特殊な本を読むのもたまにはいいですね。

経済の専門誌なのでムズすぎてあんまり分かんなかったから流し読みだけど、台湾の半導体封止・検査メーカーの日月光の企業買収分析の論文だったり、あと巻末にある九産大の卒業生たちの卒論や修論題目など見てて面白かった。

 

repository.kyusan-u.ac.jp

 

 

 

ようこそドボク学科へ! :都市・環境・デザイン・まちづくりと土木の学び方

なんか読みやすそうだったので買ってみた。

本書の冒頭によると、ドボクの世界は人類数千年万年の歴史が紡ぐものであり、先端技術が生まれてもシンプルなローテクに価値があり続けるとのこと。

色んなドボク関係の研究者(実務者もいるかな?)が2ページ程度でドボクに関するトピックに答えており、それが学科内容紹介とか学校生活とか就職先とかジャンルごとに章分けされている。学科紹介だったり土木コラムだったりは面白いが、学校生活に関するトピックは基本的に色々体験してみよう!みたいな感じであんま大したことは書いていない。

 

 

 

転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方

ざっと読んだ。
自分を株式会社として利益を最大になるように運営することが経営者時点だと筆者は言ってる。
なんか5章あるけど副業の話は1章だけでほぼ転職によるキャリアの話してる。
筆者の来歴が最初の章で書かれてるけど、お小遣い貰えないのもあり昔から金を稼ぐことを考えていたらしい。最初の3匹のポケモン売って300円稼いでる話おもろかった。都内の上位私立大受かるくらいのレベルだったけど学費と早く社会出ることを考えて敢えて元々女子大だった公立短大行った〜とか、色々大手受かったけど自分の経験を積むために敢えて最初は近所のホームセンターで240万円の年収から始めた〜とか、ちょっとプライド出てるなぁというとこはあった。ホームセンターで店長になりたいですと公言して色々人事採用とか店舗レイアウト設計とかやらせてもらったりとか、アポで会社のメアドを推測して社長に飛ばしまくったり、できる人の真似をひたすらやったりとか、そこら辺のガッツは素晴らしいと思う。
軸ずらしで年収の上がる業界へスライドしていく方式か、業界内のプロフェッショナルとして地位を築いていくか、社内で出世するか……。筆者はいちばん最初のキャリアプランらしい。
筆者によると、副業のコンテンツ発信はリクルートがカバーしてるようなキャリア、車、結婚などの人生の一大イベント周辺にチャンスが眠ってるらしい。副業のブログなどはダラダラ書かずに金になるところを見極め、他人の意見を聞きつつ価値ある情報を売れとのこと。このブログの方針と真逆ですね。

 

 

2024年6月に読み終わった本リスト

振り返ってみれば6月は仕事が火を噴き、私からも火を噴き、トータル会社でボヤ騒ぎが起こるレベルの労働状況でした。

 

 

基準:

  • 当該月に読み終わった本が対象(※読み始めたのがその月とは限らない)
  • 最初から最後まで目を通した本を『読み終わった』と定義

 

昨月の記事:

2arctan-1.hatenablog.com

 

目次:

 

 

崖っぷちだったアメリカ任天堂を復活させた男

任天堂が好きなのもあり、書店で見かけて購入。プレステ2最盛期でソニーやマイクロソフトに北米市場を圧倒されていた時代にNOA(任天堂アメリカ支社)に入社し、復活に貢献したレジー氏の1冊。

全体的な面白さとしては期待していたほどでもなかった。合間合間に入るビジネス的な教訓が鬱陶しい(ビジネス書に区分される本なのに身も蓋もないが)なと思った。任天堂に入ってからのエピソードに焦点当ててビジネス的な教訓は最後にふりかえってくれれば良かったのにと思った。

とはいえ、ニンテンドーDS、Wii、Switchの成功の裏で日本市場と北米市場の差を考えつつ岩田氏の判断に対して果敢に進言し続けたレジー氏の業績はすごいし、組織に入り込んだり改革を行うやり方も上手い人だなと思った。

想像よりだいぶ職業を転々としており(P&G→ピザハット→パンダエクスプレスの運営会社→アルコール販売会社→自転車販売ベンチャー→メディア大手会社)と、アメリカという国で転職を重ねながらキャリアを築いていく雰囲気を掴むことができる。(2章にギュッとここら辺の内容がまとめられているので一つ一つの話はそこまで詳しくないが)

 

 

 

ホメ渡部の「ホメる技術」7 ― 仕事・恋愛・人生を成功させる

古本市場で1冊80円で売られてて何となく買ってしまった。まず前提としてこの本は渡部が書いてるんじゃなくて、編集の人が渡部や児島に聞いて書いている。
1章は渡部にホメるコツをインタビューし、その後編者が渡部の回答を別のビジネス書などを引用し『的確』だと褒めている。褒め方を褒めるという二重構造となっていて仕組み的にはコントチックで面白い。
2章は渡部の褒め方を7つの法則に分解して、具体的なお願いランキングの収録の事例(番組台本?というか進行を文書化したもの)をたっぷり用意してそれに対して褒めワードに対して解説をする手法をとっている。
3章で改めて渡部の7つの法則と、相方の児島を上手く使ったキャラクターの対比、及びPNS診断に基づいた性格分析が行われている。変な折れ線グラフがたくさん出てきてめちゃくちゃデータが見づらいので注目。

ネタとしては面白いし、言ってることは正しい本。購入金額80円ならまあいいか(笑)って感じ。

 

 

 

SCSKのシゴト革命

これも同様に古本市場で1冊80円で売られてたもの。大手SIerのSCSKが大幅に労働環境、およびプロジェクト管理手法を改革することで超人気企業に登り詰めたよ!っていう話。ちなみにSCSKは元々中堅SIerだったSCS(住友情報システム)とCSKの2社が合併して2011年に生まれた会社。たぶん合併後の社名、秒で決まったんだろうな。

端的に言うとSE+という開発標準の徹底による品質向上・炎上防止と、人的リソースの最適配置を進めて結果として働き方が大きく改善された!という内容。正直、SCSKならではというような変わった取り組みは書かれておらず凡事徹底を貫いたという印象。合併直後で風土を変えやすかったという背景はあるんだろうけど、数千人規模の大企業で改革を進めるのには結局経営陣からの強力なトップダウンが必要なんだろうなということがわかる一冊だった。

 

 

学問の発見 改訂: 創造こそ最高の数学人生

有名な数学者の本で、いいという評判を聞いていたので読んでみた。研究を始めとする創造活動全般の面白さがひしひしと伝わってくる良い本だった。

筆者の来歴で15人兄弟の大家族で生まれ、勉強しようとすると実務家の父にそんなことより働けと言われていたあたりで現代との環境の大きな違いを感じた。筆者の勉強をすることは『知恵』を身につけることであり、創造することの楽しさを実体験をベースに説いており凄い学者さんの半生をベースにスッと読んでいけた。

大学院時代先輩に影響を受けて『不完全な論文を書くことには価値がない』と変にとがっていた時期に街中で手帳を拾った女の子に「おじさん」と呼ばれ、創造をできていない自分が果たしておじさんと呼ばれる価値があるのかと自問自答し悩みながら一本目の論文を書き上げるというエピソードがあるのだが、この部分がなぜだかすごく印象に残った。

ニーズよりも最終的には自分が何を求めているのかというウォントが大事という話に絡め、先行研究でも解決できなかった特異点解消の問題を解きたいという思いが解決につながったと説いている。世界中の名だたる研究者を具体名を出しながら否定されたエピソードを話しているが、さすがにそんな大御所陣から総否定されたら自分なら折れるだろうなと思った。

 

 

 

 

機械学習工学 (機械学習プロフェッショナルシリーズ)

2年前くらいに買って積んでたけど、こういうシステム開発にほど近いAI本はさすがに読まなきゃと読了。読み始めたら量は多いけど結構ほ〜となることが多くて面白かった。それぞれの分野の専門家が各章を担当しており、実務としての機械学習プロジェクトを掴むのに適した一冊だと思うし、実際この本の中で書いてあるような課題点などは実務で感じたことが多い。

開発・運用マネジメント、システム運用、デザインパターン、品質、判断根拠説明、倫理、知財・契約などが章トピックとして並んでいる。これらは従来のソフトウェア開発で重要となるポイントだが、機械学習特有の確率的な挙動やブラックボックス性の中でどうこれらについて検討していくかがポイント。多分まだまだ構築中の分野なんだろうな……という感想。

 

 

 

はじめてのUXデザイン図鑑【BOW BOOKS016】

図書館でザッと一読。UXとDXは切っても切り離せずDXされた製品だけ提供しても意図した通りの結果にはならない、と冒頭に書かれている。
UXデザインは映画やドラマの脚本作りに似ているらしい。マーケティングの際には対象ユーザーの幅を持たせるが、ペルソナや共感マップを作る時は特定の個人レベルまで絞り込む。価値マップでユーザーの結末を作る、シーンを多面的に想定する、それらをカスタムジャーニーマップであらすじに落とし込む、登場人物や小道具を配置するなどのメタファーでデザインの流れが説明されている。
図鑑が2章にあり、UXを活用した例が色々出てきている。てっきりサブスクのサービスとかばっかりかと思ったら『プロセス体験』で人事評価が出てきたり、あえて選ばないというサービスでお見合いが出てきたり……。
サービスをどう作るかの構成には役に立つだろうし、仕事とかでもこういうことを考えてやっていきたい。

 

 

 

わが投資術 市場は誰に微笑むか

色んなとこで話題になってるので、ワシもいっちょう読んだろうかいということで読了。

要するに社長がやる気ある割安な小型成長株を買え!という内容なのだが、筆者自身の強すぎるエピソードトークやシニカルな目線が効いていて、普通に株式市場についてプロフェッショナルではないにしても読み物としても面白かった。大型株はアナリストが張り付いていて勝ち目が薄い、コミュニティからの情報確保とリスクヘッジのために企業勤めは続けるべき、情報にはバイアスが常にかかっている、など言うていることは基本的に妥当だなとは思う。この筆者の語り口が上手すぎるので知らぬ間にバイアスに陥っているだけかもしれないが。

 

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