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よし、やるぞ…。
というか、これをやらずに正月休みは終われない!
昨年1年間、仕事が忙しいことを理由に結局レビューを書けないままにしてしまった数々の“優等生受け”BL本たちを、ここで一挙にご紹介してしまおうと思います。
本当は一冊一冊、原稿用紙20枚ぐらい書きたいことがあるんですが(笑)、このまま永久に積んどくわけにもいかないので、不良債権をどばっと償却してしまおうと思います。
ブログ主は今日1月2日で正月休みも終了、明日から仕事です。
さあ、死力を尽くしてやり遂げるのだ、俺!!!
現在、午後4時です。
何時までかかるかなぁ(笑)。
ご紹介していく順番は、完全に順不同です。
ブログ主の机の横に積んである順に適当にレビューしていきます。
それでは、いざ…!
まずはガッシュから出てるアンソロジー『ガッシュ ペシェ』vol.4に掲載されていた桜木あやん先生の短編マンガ『秘密の穴』からご紹介しましょう。
最近、作画がますます個性的になっておられる桜木あやん先生。
お見せできないのが残念ですが、トーンをほぼ1種類しか使わず、モノトーンちっくな画面に仕上げておられます。
黒と白が強烈に対比されるこの描き方で、学ラン少年の真っ白なワイシャツと真っ黒な学ランを描かれると、あまりに美々しくて目の毒です。
さて本作は、兄弟もの。
兄弟もので一番気になるのは、義兄弟なのか本当の兄弟なのかというところですが、本作は本物の兄弟ですよ。
主人公(攻)の高校生・ミチヤには、「美しく、誇り高い兄」がいました。
(あまり丈夫でない身体から)
(かすかに漂う薬の匂いこそすれ)
(性や欲の欠片も見られない)
きっちりネクタイを締めて、制服を決して着崩すようなことのない兄は、優等生の典型のような高校生です。
だがある日、ミチヤは校舎の裏の体育倉庫の中で、その美しい兄が物理教師の男と破廉恥な行為に耽っているのを、壁の節穴から見てしまいます(←これがタイトルの「秘密の穴」)。
美しく気高い兄は、男の股間に顔を埋め、恍惚とした表情で白濁を浴びていたのでした。
(あの兄が)
(美しい唇が)
(顔が)
(汚されていく)
(これがあの兄なのか)
(…兄さん)
家では相変わらず品行方正な兄の姿を見て、混乱するミチヤ。
だがミチヤは自分の中に潜んでいた「兄を抱きたい」という欲望に気づき…。
――というのが本作のストーリー。
とってもエロいです(笑)。
もちろん見どころは、たたずまいから雰囲気から顔からすべてが気高い優等生以外の何者でもない兄が恥ずかしい格好で汚されちゃうエッチ場面ですよ。
続けて2冊目!
昨年11月に発売された花音チタチタコミックスより、月河ユウヒ先生の『抵抗できない!?』です。
本書に収録されている短編マンガ『ダサイくらいがちょうどイイ』が、大変ブログ主好みの“ダサイっ子受け”BLになっていて、美味しく読ませていただきました(笑)。
主人公(受)の高校生・岡野真咲(おかの・まさき)は、「今時珍しいダサさだよな」とクラスメイトに噂されるほど格好悪いルックスの男の子。
ボサボサの黒髪に、でっかくて分厚くて瞳が見えないようなビン底眼鏡をかけてます。
ブログ主的には、こーゆーダサっ子が受けキャラだというだけで、もうご飯が3杯ラクに食べられちゃうんですが、ご丁寧なことに本作の冒頭場面では、大ゴマで真咲のダサいポイントが解説されてるんですね(笑)。
・お母さんに切ってもらってる髪
・古くさいビン底メガネ
・ネクタイをきっちりしめる
・ベストまでズボンに入れる
・なんかヘンな革靴
いやー、美味しい!
美味しすぎる!
で、こんなダサっ子・真咲は、幼馴染みの冬弥(とうや)と昼飯を食べるため、毎日昼休みになると冬弥のクラスまでやってきます。
ところが、真咲のあまりのダサさに、陰口がそこら中から聞こえてくるんですね。
「冬弥も変わってるよな」
「オレだったら絶対ムリだね」
「あんなダセーのと一緒にいんの」
そんな声を聞いてしまってショックを受ける真咲。
こんな僕が、カッコよくて優しい冬弥と一緒にいてもいいのかな…。
思い詰めた真咲は、冬弥に秘密で自分の外見をかっこよくしようとするのですが――というのが本作の基本ストーリーです。
もちろん、冬弥は真咲LOVEなんですよ。
で、悪い虫がつかないように、わざと真咲をダサっ子のままにしてる悪い(?)攻めキャラという。
真咲はまだ子供なので、そんな冬弥の思惑に全然気づいてないところが可愛いラブストーリーなんですが、勝手に可愛くなっちゃった真咲をめぐって冬弥と2人、大騒動が巻き起こります。
読んでいただければわかるとおり、ダサっ子・真咲が、自分の外見にコンプレックスを持って「こんな僕なんか…」とネクラに思い詰めるところが可愛い読みどころの一作です。
続いては、愁堂れな先生の小説『銀薔楼の徒花』です。
本作の面白いところは、たまーに見る設定ですが、ある美人を取り合うライバル2人が、当の美人をそっちのけで恋に落ちちゃうというそのストーリーにあります。
美味しいですよね、この設定(笑)。
なんでもっとこーゆーストーリーのお話しが出てきてくれないのかしらん?
この「銀薔楼」シリーズは、愁堂れな先生の人気シリーズですが、舞台となってる銀薔楼は、「都内の山奥にひっそりと佇む会員制の高級娼館」という設定です。
2作目の本作では、完全に当て馬にされちゃう美人役に、銀薔楼の一番人気の男娼である薫姫(かおるひめ)。
そして薫姫を取り合うライバル2人に、どちらも財閥のお坊ちゃんである甲斐原コーポレーションの御曹司・賢人(けんと)と、彩本建設の御曹司・貴史(たかし)が当てられています。
これどっちもお坊ちゃんだけに気位が高くて、しかもこれまでの人生、ずっと勝ち組というか、「俺は庶民とは違うんだ」という世界で生きてきた2人だけに、とっても優等生っぽい鼻っ柱の高さを持ってるんですよね。
しかも、じつはこの2人、同じ小学校、中高、大学で熾烈に成績のトップ争いをしてきた仲でもあります。
そして、このトップ争いは、「甲斐原が大抵僅差で制していた」という微妙な関係。
つまり、ほんの少しとはいえ、いつも甲斐原賢人にかなわず2位に甘んじてきた彩本貴史は、他の一般生徒から比べたら断トツに優秀なのに、賢人にだけは敵わず一敗地にまみれてきたという優等生クンなんですね。
そして…。
本作は、この圧倒的な勝者である甲斐原賢人×屈辱を味わわされ続けた優等生・彩本貴史というカップリングになってます。
お互い、闇の政財界の接待のために、この秘密の娼館「銀薔楼」に出入りしていた2人なんですが、ある日、ばったり鉢合わせるんですね。
それも随一の人気男娼である薫姫を取り合って。
こうなるとどっちも、いや特に学生時代に成績で負け続けてきた貴史は、絶対に退くことはできません。
毎日夕方仕事が終わるやいなや銀薔楼に駆けつけ、どちらが先に薫姫を押さえるかの勝負を競います。
ところがある日、またもや現場で鉢合わせた甲斐原賢人から、貴史はこんな申し出を受けるのでした。
「どうだろう? ちょっとしたゲームをしないかい?」
「ゲームだと?」
何を言い出したのだ、と問い返した彩本に甲斐原は、とんでもない提案をしてきたのだった。
「あの『銀薔楼』の薫姫に、どちらが魅力的な男性と認めさせるかを競い合う…どうだい? 面白そうじゃないか?」
さあ、幕が切って落とされたライバル2人の恋の大勝負。
ところが、薫姫を取り合うはずが、戦いは妙なほうに転がっていき…。
うふふふ。
これは魅力的な設定でしょう?(笑)
ストーリーの序盤では、受けキャラである貴史が、ちゃんと薫姫を客として抱く場面を描かれてますよ。
つまり、貴史は当然ながら自分は男に対しても“攻めキャラ”であるつもりなんですが、それをライバル甲斐原にひっくり返されてしまうという筋立てになってるわけです。
こうなると気になるのは、プライドも高くてお坊ちゃまな彩本貴史を、ライバル甲斐原がどうやって“落とす”のかという一点になるわけですが…。
ちょっとだけご紹介しておくと、話がいろいろこんがらがって、「よし、じゃあ薫姫を交えて3人で勝負だ!」ということになるんですな(笑)。
その組んずほぐれつの真っ最中、貴史が薫姫を責めたてる様を刺すような視線でじーっと見つめていた甲斐原が、彩本の“行為”を「手伝ってやるよ」なんて言って、その身体に手を出してくるんです。
そして、薫姫に挿入して越を振りながら、最後の瞬間、貴史は薫姫の締め付けのおかげではなく、甲斐原に乳首をつねられた衝撃で射精してしまうんですね!
男として屈辱的な感覚でイカされてしまった貴史は、なぜか甲斐原の手を忘れられなくなってしまい…というのが、だいたいの展開です。
この後、本格的に甲斐原が貴史を落としていくその手練手管がいやもう見物。
誇り高く、自分のことを「男」以外の何者でもないと思っているお坊ちゃん・貴史が、ライバルの手で女にされてしまう様は、いやーこれマジに必見です(笑)。
はい、次!
ディアプラスコミックスから発売された花村イチカ先生の初コミックス『キミは甘い甘い…』に収録されている短編マンガ『トランキライズ』でございます。
これはもう典型的ないじめっ子×いじめられっ子のネクラ受けなBLマンガ。
幼馴染みの2人、亜己(あき)と圭人(けいと)は同じ団地に住む同級生ですが、いつしか2人の関係はいびつに歪んでいきます。
「おはよー、宮原くん!」
「おはよう」
圭人がクラスメイトとそんな挨拶を交わそうものなら、亜己は血相を変えて怒鳴りつけてくるのです。
「俺以外のヤツと生意気に人語で離してんじゃねーよ。圭人のくせに! お前はいっつも下向いてろ。その暗い顔を人前にさらすな!」
つっても、圭人は暗い顔じゃないんですけれどね(笑)。
どう見ても可愛い女の子顔という。
ところが亜己の“イジメ”はどんどんエスカレートしていくのでした。
「おい、アイツと口きいたやつ罰金千円だからな」
クラス中にそんなことを言い、圭人を孤立させるのです。
その一方、「俺の宿題やれよ」なんて、自分だけが圭人に話しかけ、独占しようとします。
そして時間は流れ、舞台は高校へ。
ますます歪んだ2人の関係はエスカレートし、高校でも圭人は孤立し、亜己としか口をきくことを許されていません。
でも、亜己がどんな無理を言っても、圭人は何も言わずに微笑んでそれを受け入れます。
そんな圭人を見て、泣きそうな顔になる亜己。
「なんだよ…なんか文句あんのかよ。どぉせ俺のこと、憎いとか思ってんだろ」
「なんで…?」
「…じゃあ好きかよ。俺のこと好きか世。言ってみろよ。好きっていえ! ボクは一生亜己サマのものですって言ってみよろよ!」
さあ、歪みに歪んだ幼馴染み2人の関係に終着点はあるのか…。
――というわけで、このですね、ダメな人は絶対にダメだろういじめっ子×いじめられっ子ストーリーになってます。
これが木原音瀬先生の小説だったら、いじめっ子が受けキャラに逆転して泣かされちゃうところですが、本作はそのままストレートにいじめっ子×いじめられっ子でカップルになりますよ(笑)。
もちろん(?)この2人、高校になってからは、性的なご奉仕関係もあるんです。
亜己は傲慢に「舐めろ」と圭人に命令し、圭人はまるで召使いのように亜己の股間にご奉仕します。
ここで、普通のいじめっ子×いじめられっ子マンガだと、いじめられっ子が何を考えてるか一切読者にもわからず、そのヤキモキ感がストーリーの推進力になったりしてるんですが、本作ではじつはいじめられっ子・圭人の心の中の思いがちゃんと描かれてるんですね。
圭人が美しい顔で亜己のペニスを頬張りながら、その心中で何を考えてるかが、読者にもちゃんとわかるんです。
(なんで僕は…こんな…)
(アゴ痛い…)
(あ…亜己感じてる)
(亜己のこういう顔見ると)
(全部どうでもよくなってしまう)
うわー、なんというゲロ甘…。
いじめられっ子なのにこんな甘い思いを抱くのは理不尽だという方もいましょうが、ブログ主的にはこーゆー関係性が大好きなので、ずぶずぶにキュンキュンさせられましたよ。
攻めキャラのどんな理不尽でも受け入れてあげて、どんないやらしい要求でも飲んであげるいじめられっ子。
いやー、すいません、私こーゆーの大好物なんです(笑)。
あ、もちろん逆のいじめられっ子×いじめっ子も大好きなんですが。
「のんで。ちゃんと全部のめたら気持ちよくしてやる」
「お前は俺のなんだから。俺のいうとおりにしてりゃいいんだよ」
「今日ウチ親いないから寄り道しないでソッコー来いよ」
さあ、こーゆーいじめっ子のセリフに萌える方は即買いです(笑)。
さー、どんどん行きますぜ!
続いては、あきばじろぉ先生のコミックス『現場より愛をこめて』です。
本書は表題作のシリーズ5作でまるまる一冊になってます。
なので、表紙の2人が今回ご紹介する主人公カップルの2人です。
舞台はビルの建設現場。
主人公(攻)の原田隆弘(はらだ・たかひろ)は、高校を出て地元の建設会社に就職、大好きな建設の仕事に携わるとび職のあんちゃんです。
とても頼りになる兄貴的存在として、会社の中で後輩たちからも慕われています。
大手建設会社から請け負ったその現場にある日、現場監督として派遣されてきたのが、小学校時代に同級生だった眼鏡っ子・結城太郎でした。
結城は大学を出た後にこの有名企業に入り、エリートとしてこの現場に派遣されてきたわけです。
といっても、結城自身はとっても優しくて笑顔を絶やさないタイプのいい子ちゃん。
今でもメガネを掛け、どう見ても建設マンというよりは、線の細そうな本部のキャリアにしか見えないんですが、すんごく気だてのいい眼鏡っ子という設定なんですな!
というわけで、当然ながら本作の読みどころは、むくつけき男どもが集う建設現場に咲く一輪の花(?)、結城をめぐる恋模様ということになりますよ。
この現場設定のおかげで、いやー、とっても結城の優等生っぽさが浮き上がってイイ感じなんです(笑)。
さて、じつはこの2人、隆弘と結城の間には因縁がありました。
小学校時代、暴れん坊だった隆弘は、春の遠足で、眼鏡っ子でおとなしい結城がクラスメイトからいじめられているのを見つけ、なんだか腹が立っていじめっ子たち相手に暴れまくり、おかげで弁当をダメにしてしまうんです。
そこに、にっこり笑いながら、
「これ…おすそわけ…」
なんて恥ずかしそうに微笑みながら自分の弁当を分けてくれたのが、結果的には隆弘に助けてもらった形になった結城だったのでした。
その瞬間、それまでは結城のことなんて何とも思ってなくて、単に弱い者いじめが嫌で暴れただけだったのに、隆弘は結城に一目惚れしてしまったのでした。
でもやっぱりまだ小学生の悲しさか、遠足の後には“好きな子には意地悪しちゃう理論”で素直になれず、さんざん結城をからかったり、あげくにはうまく喋れなくなって無視するようになってしまいます。
そして、突然の結城の転校…。
2人は気まずいまま小学生時代に別れ、それ以来会うこともなかったのでした。
でも、隆弘はどうしてもその初恋を忘れられず、これまでも彼女ができそうでできないような人生を歩いてきたのです。
でも、二度と会えないだろう相手との初恋なんて、もう忘れる…。
そう思っていた矢先、自分の現場に、親請け会社から派遣された現場監督として結城が現れたというわけです。
これですねぇ、結城という優等生キャラがですね、もう見たまんまの眼鏡っ子で、優等生スキーの血を騒がせてやまないんです(笑)。
いい子ちゃんだから、現場でも、本当なら下請けの建設会社の作業員に過ぎない、隆弘の後輩のとび職のあんちゃんたちから「ジュース買ってきてー」「ここ掃除してー」とか言われちゃって、本当なら全然拒否できるのに、ついにニコニコとやってあげちゃうという(あんちゃんたちに悪気はありません・笑)。
そんなある日、現場の作業事務所で夜、2人だけ残ってしまうというハプニングが発生して、ストーリーは大きく展開します。
で、ここがまたブログ主好みなんですが、こーんなにエリートになってしかも気だてがよくて昔の恋にこだわる必要なんかなさそうな結城がですね、ぽろっとこんなセリフを言うんです。
「今日は…助けてくれてありがとう」(昼間、現場でそういうことがあったんです)
「ああ、あれ…」(いまだに意識してちょっとぶっきらぼうな隆弘)
「昔も…同じようなことあったよね。原田に助けてもらったこと…」
「ああ…でも、助けるってほどでもなかっただろ、アレは…」
「ううん…俺は…すごく助かって…うれしかった。ちょっとだけ仲良くなれたのも…すごくうれしくて…」
おおう!
ここも萌えポイント!
優等生が、いじめっ子から助けてくれたクラスの暴れん坊に恋しちゃう…いやー、ブログ主はこのパターンが大好きでして!!!
いいよねー、暴れん坊×優等生(笑)。
今でいえば、了平×雲雀、一護×雨竜ですな!!!
そしてこの場面、理知的な顔をしたエリート優等生・結城が、小学生時代に隆弘からなぜか冷たくされたまま転校することになった過去を思い出しちゃったのか、ちょっと涙ぐむんです。
それを見て、思わず結城を抱きしめる隆弘――。
というところで、こんなラブい話がコミックスまるまる一冊この後読めますよ(笑)。
あ、他のカップリングの話も入ってますけど!
メガネに七三分けの優等生現場監督が、隆弘にどんな風に泣かされちゃうか、ぜひご自分の目でご覧下さい!
続いては、ブログ主大好きなみなみ恵夢先生の読み切りマンガ『三人遊戯』です!
花音のアンソロジー『チタニウム』vol.10に載ってます!
いやー、これはもう本当によかった…。
読み終わった後、あまりに素晴らしくて思わず「ほう…」と溜め息をついてしまいます。
今もこのレビューを書くためにパパッと読み返しましたが、ううう…胸がきゅんきゅん締めつけられます…。
主な登場人物は3人です。
で、じつは本作も、先ほどご紹介した愁堂れな先生の『銀薔楼の徒花』と同じく、1人の美人を取り合う2人の男のラブストーリーになってるんですな!
主人公(受)はイギリス人のエディーくん。
たぶん20代真ん中ぐらいだと思いますが、自分では自分のことを男らしい好青年(?)と思っているらしいちょっと天然なお兄ちゃんです。
で、エディーははるばるイギリスから、日本にやってきています。
なぜかといえば、イギリスの家で一緒に暮らしていた弟のバートと喧嘩したから。
「出てけっ!」
「あー、出てってやるよ!」
なんて子供みたいな喧嘩をして、家を飛び出てはるか日本まで流れ着いてきたのでした(笑)。
こんなことができるのも、エディーが、そしてもちろん弟のバートもお金持ちのお坊ちゃんだからなんですが、じつはこの兄弟は複雑な関係なんですね。
弟のバートは本妻の子供。
でも、兄のエディーは金持ちの父が愛人に産ませた子供なんです。
幼いころは、お互いの存在を知らずに別々に育った2人ですが、バートの母が死んだのを機にエディーも本宅に引き取られ、10代の多感な時期から2人は一緒に暮らすようになったのでした。
エディーがちょっと天然の入った、自分だけは「俺はしっかり者!」と思っているらしいお坊ちゃんというのは最初に書いたとおりですが、対するバートは背も高く、見るからに切れ者な眼鏡青年。
で、自分が本妻の子だという誇りもあって、後から引き取られてきた愛人の子である兄・エディーにはいつもキツく当たるんですね。
で、毎度毎度ぎゃーぎゃーと喧嘩をしあっていた2人ですが、今回ついにぶち切れたエディーが家を飛び出し、日本まで流れ着いてきたというわけです。
で、日本でエディーは一人の美人と出会います(もちろん男子)。
和服を着たお花のお師匠さんのカナンです。
典型的な日本美人、黒髪もつややかなカナンにエディーは一目惚れしてしまい、「よしっ! 今日こそカナンとチューするんだ!」なんてことを言いながら、今日もカナンの家に遊びに来てます(笑)。
ところがそこに…。
現れたのは、イギリスにいるはずの弟・バートだったのでした。
エディーがカナンと楽しそうに話しているのを見て、いきなり表情が険しくなるバート。
さあ、このバートの表情のわけは…!?
――というのが本作の超基本的な設定です。
そうなんですよ、ストーリーの序盤は、兄弟であるエディーとバートが日本美人のカナンを取り合ってしのぎを削るんです…というか、エディーだけがそう思いこんでます。
(も、もしかしてバートもカナンのこと好きなのか!?)
なんて、内心ヤキモキしながら(笑)。
さて、いわくのある関係の兄弟2人が、こんな風に1人の美人を取り合ってライバル関係になって…なんていうこの関係性だけで、そもそもBLとしては相当美味しいと思うんですが、みなみ恵夢先生がさすがなのは、ここからさらに一ひねり、二ヒネリも展開があることですよ。
まず、最初にも書きましたが、徹底的に弟・バートが兄・エディーに冷たいんです。
エディーが何か言うと、バートはビシッと冷たい眼鏡顔で言い返します。
「いい加減、兄貴風吹かせて命令するのよしてくれないか?」
「べっ、別に兄貴風なんか…何しにきたんだ? はっ ま、まさか俺を連れ戻しに…俺はかえらねーぞ!」
「帰って来なくていいよ、君なんか」
「ぐっ」
年下の弟に一々言い換えされ、兄であるはずのエディーは泣きそうになります。
そして、自分が先に仲良くなったはずのカナンと、弟・バートがあっという間に打ち解けるのを見て、エディーはさらに泣きそうになりながら、こんな心情を心の中でこぼしちゃうんです。
(な、なんだよ…)
(俺といる時はいっつもトゲトゲしいくせに…)
(俺って…この場にいらない子なの…?)
うぎゃー!
甘い! 甘すぎます!!!!(笑)
自分のことをしっかり者だとか思ってる、何かというと弟に対してお兄ちゃんぶろうとするお金持ちのお坊ちゃんが、弟に冷たくされては泣きそうになり、カナンと弟がいい雰囲気なのを見ては、「俺、ここにいないほうがいいの…」なんてことをネクラに思い詰めちゃったり。
そうなんです、本作の最大の醍醐味は、このエディとバートの兄弟の関係性にあるんですよ~。
エディは、つねにバートに対して「お兄ちゃん」であろうと頑張ってるのに、なぜか弟はそんな兄に徹底的に冷たいんです。
そんな弟の仕打ちに、表面上は何ともないふりをして頑張って言い返したりしていても、じつは内心深く傷ついちゃってるのが、この主人公(攻)・エディーというお兄ちゃんキャラなんですな!
そしてここで、この関係性にさらなる厚みをくわえるエピソードが描かれます。
毎年、エディーは弟・バートに心をこめたクリスマスプレゼントを贈っていたんです。
頑張って手編みしたセーターとかマフラーとか…。
自分ではしっかり者だと思っているだけでじつはダメッ子なエディーの作るものですから、編み目はぐちゃぐちゃ、見た目も酷いシロモノなんですが、幼いころのエディーは「バートが使ってくれるはず…!」と超頑張ってプレゼントを編み、クリスマスに贈っていたのでした。
ところが…。
バートは、今年のクリスマスに、エディーにこう言い放ったんですね。
「ああ、プレゼント? 僕へのいやがらせだろ? 毎年へんなもの贈ってくるのやめてくんないかな」
言われたエディーの手には、今年も必死で編んだバートへのプレゼントが握られていたのに…。
弟・バートから徹底的に自分を否定されたエディーは、深く傷つきながら、家を飛び出し、日本に流れ着いたところだったのです。
(俺のさしだすプレゼントは)
(どうして受け取ってもらえないんだろ…)
(ちくしょ…)
(俺、ずっとひとりぼっち…)
一人で泣きながら布団にもぐりこむエディーお兄ちゃん。
そして、ようやく見つけたと思った「運命の相手」カナンですら、弟・バートに奪われてしまいそうです。
ああ、可哀想なエディーお兄ちゃんの運命は…!
すいません、長くなりましたが、以上が本作の主なあらすじ。
いやー、もう萌えて萌えて死にそうですが、うまくこの感動が伝わってないんだろうなぁ、こんな説明じゃ…。
複雑な家庭環境のなかで、初めてできた弟に、なんとかお兄ちゃんとして頑張ろうとするエディーと、そんな兄を徹底的に拒絶する弟・バート。
なぜバートは、冷酷としか思えない真似を、兄・エディーに対してするのか。
はたしてその真意は…! というのが、この後明かされていくわけですが、すぐ次の場面では、お風呂でのぼせたエディーを見つけたバートが、血相を変えてエディーを抱きかかえ、それに気づいたエディーがきゅうっとバートに抱きついちゃったりしてますよ!
いやー、この場面死ぬほど萌える…。
しっかり者を気取ってるお兄ちゃんが、弟にきゅっ、ですってよ、奥さん!!!!!!!(大興奮
で、何度かエディーの心の中の声として描かれているように、エディーは弟・バートにすら嫌われている自分のことを、何の価値もない人間と思いこんでるんです。
物語のクライマックスでは、これが大爆発するんですよ。
徹底的に冷たい弟・バートに向かって、エディーは泣きながら叫びます。
「お、俺のことがうざいんだろ? バート! もうわかったよ! お前が望むなら、また目の前から消えるから…お前のしたいようにするから…だから…もう許してくれよ!」
「お前の誕生日にはいつもカード贈った! でも返事ほとんどくれなかった…! 俺はただほんのちょっとだけ優しくしてほしかっただけなのに…!」
うわー、セリフ写してても泣けてくる…。
エディーのこの「俺はダメなやつ」「誰にも好きになってもらえない人間」と思いこんでるネクラっぷり、ブログ主としては好きなBL設定すぎてもう死にそうなんですが、ここから!
超胸キュンなクライマックスへと怒濤の雪崩込みを見せるんです、本作は!
もうあまりにエディーが可愛くて、そしてバートの“真意”が屈折しすぎてて、ブログ主は読み終わったときにドキドキして胸が爆発するかと思いました。
あ、最後になりましたが、本作のこの3人のキャラですね、どう見ても「ヘタリア」の、エディー=イギリス、バート=アメリカ、カナン=日本(本田)としか思えない外見とキャラ設定なんですがどうでしょう(笑)。
だって、ストーリーの途中で、本田じゃないやカナンは「かわいいは日本の正義です!」とか叫んでますし(笑)。
やばい、だんだんと一作ごとの記事が長くなってきた…(悪癖)。
てか、ここで一度記事を終えましょう。
あまりに長すぎる…(苦笑)。
というわけで、ナンバリングして、以下は(2)に続くといたします。
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さて本作は、兄弟もの。
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(性や欲の欠片も見られない)
きっちりネクタイを締めて、制服を決して着崩すようなことのない兄は、優等生の典型のような高校生です。
だがある日、ミチヤは校舎の裏の体育倉庫の中で、その美しい兄が物理教師の男と破廉恥な行為に耽っているのを、壁の節穴から見てしまいます(←これがタイトルの「秘密の穴」)。
美しく気高い兄は、男の股間に顔を埋め、恍惚とした表情で白濁を浴びていたのでした。
(あの兄が)
(美しい唇が)
(顔が)
(汚されていく)
(これがあの兄なのか)
(…兄さん)
家では相変わらず品行方正な兄の姿を見て、混乱するミチヤ。
だがミチヤは自分の中に潜んでいた「兄を抱きたい」という欲望に気づき…。
――というのが本作のストーリー。
とってもエロいです(笑)。
もちろん見どころは、たたずまいから雰囲気から顔からすべてが気高い優等生以外の何者でもない兄が恥ずかしい格好で汚されちゃうエッチ場面ですよ。
続けて2冊目!
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主人公(受)の高校生・岡野真咲(おかの・まさき)は、「今時珍しいダサさだよな」とクラスメイトに噂されるほど格好悪いルックスの男の子。
ボサボサの黒髪に、でっかくて分厚くて瞳が見えないようなビン底眼鏡をかけてます。
ブログ主的には、こーゆーダサっ子が受けキャラだというだけで、もうご飯が3杯ラクに食べられちゃうんですが、ご丁寧なことに本作の冒頭場面では、大ゴマで真咲のダサいポイントが解説されてるんですね(笑)。
・お母さんに切ってもらってる髪
・古くさいビン底メガネ
・ネクタイをきっちりしめる
・ベストまでズボンに入れる
・なんかヘンな革靴
いやー、美味しい!
美味しすぎる!
で、こんなダサっ子・真咲は、幼馴染みの冬弥(とうや)と昼飯を食べるため、毎日昼休みになると冬弥のクラスまでやってきます。
ところが、真咲のあまりのダサさに、陰口がそこら中から聞こえてくるんですね。
「冬弥も変わってるよな」
「オレだったら絶対ムリだね」
「あんなダセーのと一緒にいんの」
そんな声を聞いてしまってショックを受ける真咲。
こんな僕が、カッコよくて優しい冬弥と一緒にいてもいいのかな…。
思い詰めた真咲は、冬弥に秘密で自分の外見をかっこよくしようとするのですが――というのが本作の基本ストーリーです。
もちろん、冬弥は真咲LOVEなんですよ。
で、悪い虫がつかないように、わざと真咲をダサっ子のままにしてる悪い(?)攻めキャラという。
真咲はまだ子供なので、そんな冬弥の思惑に全然気づいてないところが可愛いラブストーリーなんですが、勝手に可愛くなっちゃった真咲をめぐって冬弥と2人、大騒動が巻き起こります。
読んでいただければわかるとおり、ダサっ子・真咲が、自分の外見にコンプレックスを持って「こんな僕なんか…」とネクラに思い詰めるところが可愛い読みどころの一作です。
続いては、愁堂れな先生の小説『銀薔楼の徒花』です。
銀薔楼の徒花 (プリズム文庫) (2009/10/23) 愁堂れな 商品詳細を見る |
本作の面白いところは、たまーに見る設定ですが、ある美人を取り合うライバル2人が、当の美人をそっちのけで恋に落ちちゃうというそのストーリーにあります。
美味しいですよね、この設定(笑)。
なんでもっとこーゆーストーリーのお話しが出てきてくれないのかしらん?
この「銀薔楼」シリーズは、愁堂れな先生の人気シリーズですが、舞台となってる銀薔楼は、「都内の山奥にひっそりと佇む会員制の高級娼館」という設定です。
2作目の本作では、完全に当て馬にされちゃう美人役に、銀薔楼の一番人気の男娼である薫姫(かおるひめ)。
そして薫姫を取り合うライバル2人に、どちらも財閥のお坊ちゃんである甲斐原コーポレーションの御曹司・賢人(けんと)と、彩本建設の御曹司・貴史(たかし)が当てられています。
これどっちもお坊ちゃんだけに気位が高くて、しかもこれまでの人生、ずっと勝ち組というか、「俺は庶民とは違うんだ」という世界で生きてきた2人だけに、とっても優等生っぽい鼻っ柱の高さを持ってるんですよね。
しかも、じつはこの2人、同じ小学校、中高、大学で熾烈に成績のトップ争いをしてきた仲でもあります。
そして、このトップ争いは、「甲斐原が大抵僅差で制していた」という微妙な関係。
つまり、ほんの少しとはいえ、いつも甲斐原賢人にかなわず2位に甘んじてきた彩本貴史は、他の一般生徒から比べたら断トツに優秀なのに、賢人にだけは敵わず一敗地にまみれてきたという優等生クンなんですね。
そして…。
本作は、この圧倒的な勝者である甲斐原賢人×屈辱を味わわされ続けた優等生・彩本貴史というカップリングになってます。
お互い、闇の政財界の接待のために、この秘密の娼館「銀薔楼」に出入りしていた2人なんですが、ある日、ばったり鉢合わせるんですね。
それも随一の人気男娼である薫姫を取り合って。
こうなるとどっちも、いや特に学生時代に成績で負け続けてきた貴史は、絶対に退くことはできません。
毎日夕方仕事が終わるやいなや銀薔楼に駆けつけ、どちらが先に薫姫を押さえるかの勝負を競います。
ところがある日、またもや現場で鉢合わせた甲斐原賢人から、貴史はこんな申し出を受けるのでした。
「どうだろう? ちょっとしたゲームをしないかい?」
「ゲームだと?」
何を言い出したのだ、と問い返した彩本に甲斐原は、とんでもない提案をしてきたのだった。
「あの『銀薔楼』の薫姫に、どちらが魅力的な男性と認めさせるかを競い合う…どうだい? 面白そうじゃないか?」
さあ、幕が切って落とされたライバル2人の恋の大勝負。
ところが、薫姫を取り合うはずが、戦いは妙なほうに転がっていき…。
うふふふ。
これは魅力的な設定でしょう?(笑)
ストーリーの序盤では、受けキャラである貴史が、ちゃんと薫姫を客として抱く場面を描かれてますよ。
つまり、貴史は当然ながら自分は男に対しても“攻めキャラ”であるつもりなんですが、それをライバル甲斐原にひっくり返されてしまうという筋立てになってるわけです。
こうなると気になるのは、プライドも高くてお坊ちゃまな彩本貴史を、ライバル甲斐原がどうやって“落とす”のかという一点になるわけですが…。
ちょっとだけご紹介しておくと、話がいろいろこんがらがって、「よし、じゃあ薫姫を交えて3人で勝負だ!」ということになるんですな(笑)。
その組んずほぐれつの真っ最中、貴史が薫姫を責めたてる様を刺すような視線でじーっと見つめていた甲斐原が、彩本の“行為”を「手伝ってやるよ」なんて言って、その身体に手を出してくるんです。
そして、薫姫に挿入して越を振りながら、最後の瞬間、貴史は薫姫の締め付けのおかげではなく、甲斐原に乳首をつねられた衝撃で射精してしまうんですね!
男として屈辱的な感覚でイカされてしまった貴史は、なぜか甲斐原の手を忘れられなくなってしまい…というのが、だいたいの展開です。
この後、本格的に甲斐原が貴史を落としていくその手練手管がいやもう見物。
誇り高く、自分のことを「男」以外の何者でもないと思っているお坊ちゃん・貴史が、ライバルの手で女にされてしまう様は、いやーこれマジに必見です(笑)。
はい、次!
ディアプラスコミックスから発売された花村イチカ先生の初コミックス『キミは甘い甘い…』に収録されている短編マンガ『トランキライズ』でございます。
キミは甘い甘い・・・ (ディアプラスコミックス) (2009/10/30) 花村 イチカ 商品詳細を見る |
これはもう典型的ないじめっ子×いじめられっ子のネクラ受けなBLマンガ。
幼馴染みの2人、亜己(あき)と圭人(けいと)は同じ団地に住む同級生ですが、いつしか2人の関係はいびつに歪んでいきます。
「おはよー、宮原くん!」
「おはよう」
圭人がクラスメイトとそんな挨拶を交わそうものなら、亜己は血相を変えて怒鳴りつけてくるのです。
「俺以外のヤツと生意気に人語で離してんじゃねーよ。圭人のくせに! お前はいっつも下向いてろ。その暗い顔を人前にさらすな!」
つっても、圭人は暗い顔じゃないんですけれどね(笑)。
どう見ても可愛い女の子顔という。
ところが亜己の“イジメ”はどんどんエスカレートしていくのでした。
「おい、アイツと口きいたやつ罰金千円だからな」
クラス中にそんなことを言い、圭人を孤立させるのです。
その一方、「俺の宿題やれよ」なんて、自分だけが圭人に話しかけ、独占しようとします。
そして時間は流れ、舞台は高校へ。
ますます歪んだ2人の関係はエスカレートし、高校でも圭人は孤立し、亜己としか口をきくことを許されていません。
でも、亜己がどんな無理を言っても、圭人は何も言わずに微笑んでそれを受け入れます。
そんな圭人を見て、泣きそうな顔になる亜己。
「なんだよ…なんか文句あんのかよ。どぉせ俺のこと、憎いとか思ってんだろ」
「なんで…?」
「…じゃあ好きかよ。俺のこと好きか世。言ってみろよ。好きっていえ! ボクは一生亜己サマのものですって言ってみよろよ!」
さあ、歪みに歪んだ幼馴染み2人の関係に終着点はあるのか…。
――というわけで、このですね、ダメな人は絶対にダメだろういじめっ子×いじめられっ子ストーリーになってます。
これが木原音瀬先生の小説だったら、いじめっ子が受けキャラに逆転して泣かされちゃうところですが、本作はそのままストレートにいじめっ子×いじめられっ子でカップルになりますよ(笑)。
もちろん(?)この2人、高校になってからは、性的なご奉仕関係もあるんです。
亜己は傲慢に「舐めろ」と圭人に命令し、圭人はまるで召使いのように亜己の股間にご奉仕します。
ここで、普通のいじめっ子×いじめられっ子マンガだと、いじめられっ子が何を考えてるか一切読者にもわからず、そのヤキモキ感がストーリーの推進力になったりしてるんですが、本作ではじつはいじめられっ子・圭人の心の中の思いがちゃんと描かれてるんですね。
圭人が美しい顔で亜己のペニスを頬張りながら、その心中で何を考えてるかが、読者にもちゃんとわかるんです。
(なんで僕は…こんな…)
(アゴ痛い…)
(あ…亜己感じてる)
(亜己のこういう顔見ると)
(全部どうでもよくなってしまう)
うわー、なんというゲロ甘…。
いじめられっ子なのにこんな甘い思いを抱くのは理不尽だという方もいましょうが、ブログ主的にはこーゆー関係性が大好きなので、ずぶずぶにキュンキュンさせられましたよ。
攻めキャラのどんな理不尽でも受け入れてあげて、どんないやらしい要求でも飲んであげるいじめられっ子。
いやー、すいません、私こーゆーの大好物なんです(笑)。
あ、もちろん逆のいじめられっ子×いじめっ子も大好きなんですが。
「のんで。ちゃんと全部のめたら気持ちよくしてやる」
「お前は俺のなんだから。俺のいうとおりにしてりゃいいんだよ」
「今日ウチ親いないから寄り道しないでソッコー来いよ」
さあ、こーゆーいじめっ子のセリフに萌える方は即買いです(笑)。
さー、どんどん行きますぜ!
続いては、あきばじろぉ先生のコミックス『現場より愛をこめて』です。
現場より愛をこめて (ミリオンコミックス Hertz Series 60) (ミリオンコミックス Hertz Series 60) (2009/11/30) あきば じろぉ 商品詳細を見る |
本書は表題作のシリーズ5作でまるまる一冊になってます。
なので、表紙の2人が今回ご紹介する主人公カップルの2人です。
舞台はビルの建設現場。
主人公(攻)の原田隆弘(はらだ・たかひろ)は、高校を出て地元の建設会社に就職、大好きな建設の仕事に携わるとび職のあんちゃんです。
とても頼りになる兄貴的存在として、会社の中で後輩たちからも慕われています。
大手建設会社から請け負ったその現場にある日、現場監督として派遣されてきたのが、小学校時代に同級生だった眼鏡っ子・結城太郎でした。
結城は大学を出た後にこの有名企業に入り、エリートとしてこの現場に派遣されてきたわけです。
といっても、結城自身はとっても優しくて笑顔を絶やさないタイプのいい子ちゃん。
今でもメガネを掛け、どう見ても建設マンというよりは、線の細そうな本部のキャリアにしか見えないんですが、すんごく気だてのいい眼鏡っ子という設定なんですな!
というわけで、当然ながら本作の読みどころは、むくつけき男どもが集う建設現場に咲く一輪の花(?)、結城をめぐる恋模様ということになりますよ。
この現場設定のおかげで、いやー、とっても結城の優等生っぽさが浮き上がってイイ感じなんです(笑)。
さて、じつはこの2人、隆弘と結城の間には因縁がありました。
小学校時代、暴れん坊だった隆弘は、春の遠足で、眼鏡っ子でおとなしい結城がクラスメイトからいじめられているのを見つけ、なんだか腹が立っていじめっ子たち相手に暴れまくり、おかげで弁当をダメにしてしまうんです。
そこに、にっこり笑いながら、
「これ…おすそわけ…」
なんて恥ずかしそうに微笑みながら自分の弁当を分けてくれたのが、結果的には隆弘に助けてもらった形になった結城だったのでした。
その瞬間、それまでは結城のことなんて何とも思ってなくて、単に弱い者いじめが嫌で暴れただけだったのに、隆弘は結城に一目惚れしてしまったのでした。
でもやっぱりまだ小学生の悲しさか、遠足の後には“好きな子には意地悪しちゃう理論”で素直になれず、さんざん結城をからかったり、あげくにはうまく喋れなくなって無視するようになってしまいます。
そして、突然の結城の転校…。
2人は気まずいまま小学生時代に別れ、それ以来会うこともなかったのでした。
でも、隆弘はどうしてもその初恋を忘れられず、これまでも彼女ができそうでできないような人生を歩いてきたのです。
でも、二度と会えないだろう相手との初恋なんて、もう忘れる…。
そう思っていた矢先、自分の現場に、親請け会社から派遣された現場監督として結城が現れたというわけです。
これですねぇ、結城という優等生キャラがですね、もう見たまんまの眼鏡っ子で、優等生スキーの血を騒がせてやまないんです(笑)。
いい子ちゃんだから、現場でも、本当なら下請けの建設会社の作業員に過ぎない、隆弘の後輩のとび職のあんちゃんたちから「ジュース買ってきてー」「ここ掃除してー」とか言われちゃって、本当なら全然拒否できるのに、ついにニコニコとやってあげちゃうという(あんちゃんたちに悪気はありません・笑)。
そんなある日、現場の作業事務所で夜、2人だけ残ってしまうというハプニングが発生して、ストーリーは大きく展開します。
で、ここがまたブログ主好みなんですが、こーんなにエリートになってしかも気だてがよくて昔の恋にこだわる必要なんかなさそうな結城がですね、ぽろっとこんなセリフを言うんです。
「今日は…助けてくれてありがとう」(昼間、現場でそういうことがあったんです)
「ああ、あれ…」(いまだに意識してちょっとぶっきらぼうな隆弘)
「昔も…同じようなことあったよね。原田に助けてもらったこと…」
「ああ…でも、助けるってほどでもなかっただろ、アレは…」
「ううん…俺は…すごく助かって…うれしかった。ちょっとだけ仲良くなれたのも…すごくうれしくて…」
おおう!
ここも萌えポイント!
優等生が、いじめっ子から助けてくれたクラスの暴れん坊に恋しちゃう…いやー、ブログ主はこのパターンが大好きでして!!!
いいよねー、暴れん坊×優等生(笑)。
今でいえば、了平×雲雀、一護×雨竜ですな!!!
そしてこの場面、理知的な顔をしたエリート優等生・結城が、小学生時代に隆弘からなぜか冷たくされたまま転校することになった過去を思い出しちゃったのか、ちょっと涙ぐむんです。
それを見て、思わず結城を抱きしめる隆弘――。
というところで、こんなラブい話がコミックスまるまる一冊この後読めますよ(笑)。
あ、他のカップリングの話も入ってますけど!
メガネに七三分けの優等生現場監督が、隆弘にどんな風に泣かされちゃうか、ぜひご自分の目でご覧下さい!
続いては、ブログ主大好きなみなみ恵夢先生の読み切りマンガ『三人遊戯』です!
花音のアンソロジー『チタニウム』vol.10に載ってます!
チタニウム 10 (花音コミックス) (2009/11/28) 不明 商品詳細を見る |
いやー、これはもう本当によかった…。
読み終わった後、あまりに素晴らしくて思わず「ほう…」と溜め息をついてしまいます。
今もこのレビューを書くためにパパッと読み返しましたが、ううう…胸がきゅんきゅん締めつけられます…。
主な登場人物は3人です。
で、じつは本作も、先ほどご紹介した愁堂れな先生の『銀薔楼の徒花』と同じく、1人の美人を取り合う2人の男のラブストーリーになってるんですな!
主人公(受)はイギリス人のエディーくん。
たぶん20代真ん中ぐらいだと思いますが、自分では自分のことを男らしい好青年(?)と思っているらしいちょっと天然なお兄ちゃんです。
で、エディーははるばるイギリスから、日本にやってきています。
なぜかといえば、イギリスの家で一緒に暮らしていた弟のバートと喧嘩したから。
「出てけっ!」
「あー、出てってやるよ!」
なんて子供みたいな喧嘩をして、家を飛び出てはるか日本まで流れ着いてきたのでした(笑)。
こんなことができるのも、エディーが、そしてもちろん弟のバートもお金持ちのお坊ちゃんだからなんですが、じつはこの兄弟は複雑な関係なんですね。
弟のバートは本妻の子供。
でも、兄のエディーは金持ちの父が愛人に産ませた子供なんです。
幼いころは、お互いの存在を知らずに別々に育った2人ですが、バートの母が死んだのを機にエディーも本宅に引き取られ、10代の多感な時期から2人は一緒に暮らすようになったのでした。
エディーがちょっと天然の入った、自分だけは「俺はしっかり者!」と思っているらしいお坊ちゃんというのは最初に書いたとおりですが、対するバートは背も高く、見るからに切れ者な眼鏡青年。
で、自分が本妻の子だという誇りもあって、後から引き取られてきた愛人の子である兄・エディーにはいつもキツく当たるんですね。
で、毎度毎度ぎゃーぎゃーと喧嘩をしあっていた2人ですが、今回ついにぶち切れたエディーが家を飛び出し、日本まで流れ着いてきたというわけです。
で、日本でエディーは一人の美人と出会います(もちろん男子)。
和服を着たお花のお師匠さんのカナンです。
典型的な日本美人、黒髪もつややかなカナンにエディーは一目惚れしてしまい、「よしっ! 今日こそカナンとチューするんだ!」なんてことを言いながら、今日もカナンの家に遊びに来てます(笑)。
ところがそこに…。
現れたのは、イギリスにいるはずの弟・バートだったのでした。
エディーがカナンと楽しそうに話しているのを見て、いきなり表情が険しくなるバート。
さあ、このバートの表情のわけは…!?
――というのが本作の超基本的な設定です。
そうなんですよ、ストーリーの序盤は、兄弟であるエディーとバートが日本美人のカナンを取り合ってしのぎを削るんです…というか、エディーだけがそう思いこんでます。
(も、もしかしてバートもカナンのこと好きなのか!?)
なんて、内心ヤキモキしながら(笑)。
さて、いわくのある関係の兄弟2人が、こんな風に1人の美人を取り合ってライバル関係になって…なんていうこの関係性だけで、そもそもBLとしては相当美味しいと思うんですが、みなみ恵夢先生がさすがなのは、ここからさらに一ひねり、二ヒネリも展開があることですよ。
まず、最初にも書きましたが、徹底的に弟・バートが兄・エディーに冷たいんです。
エディーが何か言うと、バートはビシッと冷たい眼鏡顔で言い返します。
「いい加減、兄貴風吹かせて命令するのよしてくれないか?」
「べっ、別に兄貴風なんか…何しにきたんだ? はっ ま、まさか俺を連れ戻しに…俺はかえらねーぞ!」
「帰って来なくていいよ、君なんか」
「ぐっ」
年下の弟に一々言い換えされ、兄であるはずのエディーは泣きそうになります。
そして、自分が先に仲良くなったはずのカナンと、弟・バートがあっという間に打ち解けるのを見て、エディーはさらに泣きそうになりながら、こんな心情を心の中でこぼしちゃうんです。
(な、なんだよ…)
(俺といる時はいっつもトゲトゲしいくせに…)
(俺って…この場にいらない子なの…?)
うぎゃー!
甘い! 甘すぎます!!!!(笑)
自分のことをしっかり者だとか思ってる、何かというと弟に対してお兄ちゃんぶろうとするお金持ちのお坊ちゃんが、弟に冷たくされては泣きそうになり、カナンと弟がいい雰囲気なのを見ては、「俺、ここにいないほうがいいの…」なんてことをネクラに思い詰めちゃったり。
そうなんです、本作の最大の醍醐味は、このエディとバートの兄弟の関係性にあるんですよ~。
エディは、つねにバートに対して「お兄ちゃん」であろうと頑張ってるのに、なぜか弟はそんな兄に徹底的に冷たいんです。
そんな弟の仕打ちに、表面上は何ともないふりをして頑張って言い返したりしていても、じつは内心深く傷ついちゃってるのが、この主人公(攻)・エディーというお兄ちゃんキャラなんですな!
そしてここで、この関係性にさらなる厚みをくわえるエピソードが描かれます。
毎年、エディーは弟・バートに心をこめたクリスマスプレゼントを贈っていたんです。
頑張って手編みしたセーターとかマフラーとか…。
自分ではしっかり者だと思っているだけでじつはダメッ子なエディーの作るものですから、編み目はぐちゃぐちゃ、見た目も酷いシロモノなんですが、幼いころのエディーは「バートが使ってくれるはず…!」と超頑張ってプレゼントを編み、クリスマスに贈っていたのでした。
ところが…。
バートは、今年のクリスマスに、エディーにこう言い放ったんですね。
「ああ、プレゼント? 僕へのいやがらせだろ? 毎年へんなもの贈ってくるのやめてくんないかな」
言われたエディーの手には、今年も必死で編んだバートへのプレゼントが握られていたのに…。
弟・バートから徹底的に自分を否定されたエディーは、深く傷つきながら、家を飛び出し、日本に流れ着いたところだったのです。
(俺のさしだすプレゼントは)
(どうして受け取ってもらえないんだろ…)
(ちくしょ…)
(俺、ずっとひとりぼっち…)
一人で泣きながら布団にもぐりこむエディーお兄ちゃん。
そして、ようやく見つけたと思った「運命の相手」カナンですら、弟・バートに奪われてしまいそうです。
ああ、可哀想なエディーお兄ちゃんの運命は…!
すいません、長くなりましたが、以上が本作の主なあらすじ。
いやー、もう萌えて萌えて死にそうですが、うまくこの感動が伝わってないんだろうなぁ、こんな説明じゃ…。
複雑な家庭環境のなかで、初めてできた弟に、なんとかお兄ちゃんとして頑張ろうとするエディーと、そんな兄を徹底的に拒絶する弟・バート。
なぜバートは、冷酷としか思えない真似を、兄・エディーに対してするのか。
はたしてその真意は…! というのが、この後明かされていくわけですが、すぐ次の場面では、お風呂でのぼせたエディーを見つけたバートが、血相を変えてエディーを抱きかかえ、それに気づいたエディーがきゅうっとバートに抱きついちゃったりしてますよ!
いやー、この場面死ぬほど萌える…。
しっかり者を気取ってるお兄ちゃんが、弟にきゅっ、ですってよ、奥さん!!!!!!!(大興奮
で、何度かエディーの心の中の声として描かれているように、エディーは弟・バートにすら嫌われている自分のことを、何の価値もない人間と思いこんでるんです。
物語のクライマックスでは、これが大爆発するんですよ。
徹底的に冷たい弟・バートに向かって、エディーは泣きながら叫びます。
「お、俺のことがうざいんだろ? バート! もうわかったよ! お前が望むなら、また目の前から消えるから…お前のしたいようにするから…だから…もう許してくれよ!」
「お前の誕生日にはいつもカード贈った! でも返事ほとんどくれなかった…! 俺はただほんのちょっとだけ優しくしてほしかっただけなのに…!」
うわー、セリフ写してても泣けてくる…。
エディーのこの「俺はダメなやつ」「誰にも好きになってもらえない人間」と思いこんでるネクラっぷり、ブログ主としては好きなBL設定すぎてもう死にそうなんですが、ここから!
超胸キュンなクライマックスへと怒濤の雪崩込みを見せるんです、本作は!
もうあまりにエディーが可愛くて、そしてバートの“真意”が屈折しすぎてて、ブログ主は読み終わったときにドキドキして胸が爆発するかと思いました。
あ、最後になりましたが、本作のこの3人のキャラですね、どう見ても「ヘタリア」の、エディー=イギリス、バート=アメリカ、カナン=日本(本田)としか思えない外見とキャラ設定なんですがどうでしょう(笑)。
だって、ストーリーの途中で、本田じゃないやカナンは「かわいいは日本の正義です!」とか叫んでますし(笑)。
やばい、だんだんと一作ごとの記事が長くなってきた…(悪癖)。
てか、ここで一度記事を終えましょう。
あまりに長すぎる…(苦笑)。
というわけで、ナンバリングして、以下は(2)に続くといたします。
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