二次構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/22 08:53 UTC 版)
応用
タンパク質および核酸二次構造のどちらも多重配列アラインメントに利用でき、単純な配列情報に加えて二次構造の情報を含めることでより正確にアラインすることできる。RNAでは、塩基対が配列よりもかなり高度に保存されているためあまり役に立たない。一次構造がアラインできないほどに異なるタンパク質間の関係が二次構造の比較によって見出されることがある[18]。
天然タンパク質において、αヘリックスはβストランドよりも安定で、変異に対して頑強で、設計可能であることが示されてきたことから[26]、全てがα-ヘリックスによって構成されている機能性タンパク質の設計はヘリックスとストランドの両方を持つタンパク質の設計よりも容易であると思われており、最近実験的に確かめられている[27]。
ペプチド結合の構造
1930-40年代、ライナス・ポーリングとロバート・コリーはポリペプチド鎖内においてアミノ酸やペプチド結合がどのような形状をしているのかを調べるためX線構造解析を行い、右図のような平面構造を取っていることを突き止めた。ペプチドのC-N結合はCα-N結合より0.13 Å短く、C=O結合がアルデヒドやケトンのC=Oよりも0.02 Å短い事から次のように共鳴していると考えられている。
ペプチド結合の共鳴エネルギーは平面のとき最大値(約85 kJ/mol)をとり、平面から90° ねじれると共鳴エネルギーはゼロとなることからも平面構造が非常に強いことが分かる。ペプチド結合は普通トランス型をとり、隣接するCα同士は点対称の関係になる。シス型をとった場合、立体障害のためトランス型より約8 kJ/molだけ不安定になる。しかし、プロリンの手前のペプチドでは少しだけ安定化する。このためプロリンの手前のペプチドの約10%はシス型をとっている。
ポリペプチド主鎖の二面角
ポリペプチド鎖は平面構造のペプチド結合が繋がっている。したがって、ポリペプチドの構造はそのペプチド結合面同士の二面角(ねじれ角)で表すことができ、Cα-N結合角はφ、Cα-C結合角はψで、それぞれの角度はCαから見て時計回りに回ると値が大きくなると決めている。二面角とφ、そしてψは立体障害のために様々な制約を受ける。
ラマチャンドランダイアグラム
ラマチャンドランダイアグラム、ラマチャンドランプロット、またはラマチャンドランマップとは、φ、ψ値、各原子間距離の計算によって立体的に許容されるペプチドの構造の範囲を図示したものである。
二次構造 | φ(°) | ψ(°) |
---|---|---|
右巻きαヘリックス | -57 | -47 |
平行β構造 | -119 | 113 |
逆平行β構造 | -139 | 135 |
右巻き310ヘリックス | -49 | -26 |
右巻きπヘリックス | -57 | -70 |
2.27リボン | -78 | 59 |
左巻きポリグリシンII、ポリ-L-プロリンIIヘリックス | -79 | 150 |
コラーゲン | -51 | 153 |
左巻きαヘリックス | 57 | 47 |
ラマチャンドランダイアグラムの示す構造可能範囲は各アミノ酸の側鎖の大きさによって変化する。例えばグリシンはCβが無いため他のアミノ酸に比べて許容範囲はずっと広い。また、プロリンの側鎖は環状であるため許容範囲は極端に制限される(φ = −60°±25°)。
ヘリックス構造
ポリペプチド鎖の各Cα炭素が同じようにねじれるとヘリックス(螺旋)構造をとる。ヘリックス構造はφ、ψではなく、1回転あたりの残基数(n:右巻きは正、左巻きは負)、1回転で軸方向に進む距離(ピッチ、p)で表される。p=0のとき閉環となり、p=2のときは平面リボン構造をとる。
αヘリックス
ポリペプチドのヘリックス構造の中で二面角と水素結合形成の双方を満足する構造はαヘリックスだけで、L-アミノ酸で作られるαヘリックスはφ=−57°、ψ=−47°、n=3.6、p=5.4 Åである。αヘリックスではすべてのN-H基が4残基離れたアミノ酸のC=O基へ水素結合をしている。このときのN…O間の距離は2.8 Åで、水素結合には適当であり、会合エネルギーも最大となる。右巻き構造では側鎖は外側を向いており主鎖にとっても相互にも障害にならない。しかし左巻き構造では側鎖が主鎖に近すぎるため作られることは少ない。
その他のヘリックス構造
2.27リボン、310ヘリックスのようなnmという表示のnはヘリックス1回転あたりのアミノ酸残基数、mは水素結合で閉環した構造の水素原子を含む構成原子数を表している。αヘリックスをこの表記で書くと3.613ヘリックスとなる。
右巻き310ヘリックスは、p=6.0 Åで、二面角はラマチャンドランダイアグラムでは禁制領域に入り、側鎖にも立体障害がある。このため、310ヘリックスはあまり見られることはなく、普通はαヘリックスの終端に1回転だけできる。また、2.27リボンは二面角が完全に禁制領域にあるためタンパク質中には存在しない。πヘリックス(4.416ヘリックス)も二面角が禁制領域にあるため、ヘリックスの途中にたまに見られる程度である。
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