貝殻の意味
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/17 19:01 UTC 版)
「書斎の聖アウグスティヌス (カルパッチョ)」の記事における「貝殻の意味」の解説
本作品における特異なディテールの1つは机に置かれた貝殻である。貝殻の配置は巧みであり、赤い色に囲まれた白い貝殻は目立つ位置にある。美術史家アウグスト・ジェンティーリ(Augusto Gentili)はこの貝殻が聖アウグスティヌスの別の伝説と関係があるとしている。聖アウグスティヌスは海岸で海水を掬って穴に入れるという遊びをする子供に出会い、三位一体の秘儀の奥深さを知ったと伝えられている。貝殻はそのとき子供が水を掬うのに用いた道具である。初期の話形では水を掬う道具は一定しておらず、貝殻であったり、銀の匙であったりするが、やがて貝殻で統一されていった。ヤコブス・デ・ウォラギネの『日曜説教集』(Sermones de omnibus evangeliis dominicalibus)ではキリストと思しき子供は聖アウグスティヌスに「三位一体の秘儀をまとめようとする書物は水を注ごうとする小さな穴であり、汝の小さな知性がそれを計る匙であり、三位一体は汲みつくそうと試みている大海である」と語ったとあり、ピエトロ・デ・ナターリ(英語版)の『聖人伝集成』(Catalogus Sanctorum et gestorum eorum)では子供は簡潔に「穴は書物、海は三位一体、貝殻は汝の知性だ」と語った後に姿を消したという。いわばこの貝殻は聖アウグスティヌス、引いては人間の知性を象徴している。聖ヒエロニムスが死に際に聖アウグスティヌスに語ったとされる言葉はこのエピソードから来ている。カルパッチョは聖ヒエロニムスの奇跡の中から三位一体の要素を重視し、別のエピソードから聖アウグスティヌスおよび三位一体と関係のある貝殻を持って来て描くことで、両者が三位一体について言葉を交わしたという物語を強調している。
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