表面タンパク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/14 14:48 UTC 版)
赤血球の役割は酸素や二酸化炭素の輸送であり、そのために赤血球膜では酸素 (O2) と二酸化炭素 (CO2)、重炭酸イオン (HCO−3) の交換が重要であり、また細胞の維持に必要なグルコースや各イオンなどの交換も重要である。 赤血球膜縦貫タンパク質であるバンド3は一つの赤血球に120万個あり赤血球膜縦貫タンパク質では最も多いが、赤血球膜に適度な間隔をおいて存在し、脂質二重層と膜骨格のアンカーの役とともに重炭酸イオンと塩素イオンの交換や一部の有機物の輸送を行っている。グルコースやナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどはその他の赤血球膜縦貫タンパク質によって輸送され、酸素分子や二酸化炭素分子などの電気的に中性で小さな分子は脂質二重層を直接通過する。 主要な赤血球膜上の物質輸送機関物質輸送機関被輸送体輸送方法脂質二重層 酸素 O2、二酸化炭素 CO2 受動輸送(単純拡散) Na+, K+ ATPaseタンパク質(adenosine triphosphatase) Na+ と K+ Na+ と K+ の交換を行う能動輸送(対向輸送) Ca2+ ATPaseタンパク質(adenosine triphosphatase) Ca2+ Ca2+ の能動輸送(単輸送) バンド3タンパク質(anion exchange protein) HCO−3, Cl−, ピルビン酸など 受動輸送(陰イオン交換体) バンド4.5タンパク質(glucose transporter) グルコース 受動輸送(促進拡散) アクアポリン(aquaporin) H2O(水) 選択通過チャネル(選択透過孔) 上記以外にも多くのトランスポーターやレセプターが赤血球膜にはあることが報告されている。 また、これらの赤血球膜縦貫タンパク質は血液型抗原にも関係している。一例では AB型はバンド3 とバンド4.5タンパクの赤血球膜外構造である糖鎖構造が抗原になっている。 また、物質輸送には関わらないが、赤血球膜状には膜貫通タンパク質であるグリコホリンが100万個ほど存在する。赤血球膜上ではバンド3についで多いタンパク質であるが、グリコホリンの細胞質側は膜骨格に連結されアンカーの役を果たし、赤血球外面に出た部分には大量の糖鎖を有している。糖鎖の先端にはシアル酸があり、シアル酸は COOH基を持つために陰性荷電しているので同じく陰性荷電している赤血球同士や血管内皮細胞との接着を防いだり、同じく陰性荷電している細菌の侵入を防ぐ働きを持っている。 ※バンド4.1 や 4.5 などは名称は似ているが、電気泳動分析のバンド番号であり、分子量による命名であって、それぞれは異なるタンパク質である。
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