自然と人
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 07:08 UTC 版)
ギルガメシュとエンキドゥの遠征およびフンババ退治は、『ギルガメシュと生者の国』というシュメール語版のタイトルで叙事詩に取り入れられた自然との対立を描く神話である。フンババは自然神だが、一説では巨人、嵐の悪魔、全悪などとも言われる、エンリルによって派遣された人間に対する脅威として描かれている。 また、古代メソポタミアでは利用できる樹木が極めて乏しく、価値ある森を欠き杉に勝るような美材は当然なかった。神殿の建設などに要る資材の確保、という面で困難な立場におかれた歴代の王たちは関心を西に向け杉を求めたが、遠征に成功した者はいなかったために、ギルガメシュがその先駆者となってフンババを殺す=森の封印を切ることで、杉を渇望していた人々はそれを得ることに成功したのである。だがフンババが召されて以降、杉森が度々メソポタミア周辺地域やエジプト諸国らによって狩られるようになり、長い年月を以って絶滅の危機に瀕することとなった。故にギルガメシュの行いは自然破壊に繋がる傲慢な行為であった、とする指摘もありながら、「勇気ある者の冒険譚」とも評されている。この物語はギルガメシュの英雄性を端的に描出しており、2人の英雄による功績として後世まで語り継がれていった。実際ウルクを中心に、南部メソポタミアが長期に渡り華めいたことも疑い得ない事実である。 なお、フンババ退治の方法は書版によって揺らぎが多い。ギルガメシュがフンババに妹マトゥルを嫁に与えるなどの策略を用いて油断させ(実際に差し出す気はなかったと思われる)、エンキドゥがフンババの喉を掻っ切って殺した場合や、シャマシュへの祈祷が功を奏し、実戦はほとんど行われなかった場合などがある。
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