物理定数の積
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/30 09:28 UTC 版)
実験で測定可能な物理定数が2つあるとき、それら個々の値が不正確でも、その積については正確な値が測定されている場合がある。例として、20世紀初頭のアボガドロ定数(記号 NA)と電気素量(記号 e)の積が挙げられる。NA も e も当時の実験値は精々2桁の精度で、測定方法の違いによるばらつきはそれ以上に大きかった。それにもかかわらず、この2つの物理定数の積 NA × e については、7004965400000000000♠9.654×104 C/mol という正確な実験値が知られていた。積 NA × e はファラデー定数(記号 F)と呼ばれる物理定数であり、たとえ NA, e の値がまったく分からなくても、電気化学実験により直接測定できる量である。この F の値と現在の値の違いは0.06%程度であり、当時の電気化学測定の綿密さを物語っている。 2つの物理定数 x, y の積 xy の正確な値が知られているならば、一方の物理定数 x の正確な実験値が新たに得られたとき、同時に他方の物理定数 y の正確な値も関係式 y = xy/x を使って求めることができる。ロバート・ミリカンは1913年に、油滴実験の結果に基づいて新たな電気素量の値 e = 6981159200000000000♠1.592×10−19 C を報告した。それと同時に関係式 NA = NAe/e を使って新たなアボガドロ定数の値 NA = 7023606200000000000♠6.062×1023 mol−1 も報告している。ミリカンの値と現在の値の違いは e, NA ともに0.6%程度であり、F の正確さには及ばないものの、一方の値が新たに得られると他方も同程度に正確な値が求まることがこの例から分かる。
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