消化義務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:10 UTC 版)
2019年(平成31年)4月1日より、使用者は年次有給休暇の日数が10労働日以上ある労働者については、1年あたり5日を与えて消化させることが義務となった(第39条7項)。年次有給休暇の取得率が低迷しており、いわゆる正社員の約16%が年次有給休暇を1日も取得しておらず、また、年次有給休暇をほとんど取得していない労働者については長時間労働者の比率が高い実態にあることを踏まえ、年5日以上の年次有給休暇の取得が確実に進む仕組みを導入することとしたものである(平成30年9月7日基発0907第1号)。「年次有給休暇の日数が10労働日以上ある労働者」とは、基準日に付与される年次有給休暇の日数が10労働日以上である労働者を規定したものであり、比例付与の対象となる労働者であって、今年度の基準日に付与される年次有給休暇の日数が10労働日未満であるものについては、仮に、前年度繰越分の年次有給休暇も合算すれば10労働日以上となったとしても、「有給休暇の日数が10労働日以上である労働者」には含まれない(平成30年12月28日基発1228第15号)。ただし、第39条5項(労働者が自ら時季指定して5日以上の年次有給休暇を取得した場合)又は6項(計画的付与により5日以上の年次有給休暇を取得した場合)の規定により年次有給休暇を与えた場合においては、当該与えた年次有給休暇の日数(当該日数が5日を超える場合には、5日とする。)分については、使用者による時季指定は不要である(第39条8項)。労働者が半日単位で年次有給休暇を取得した日数分については、0.5日として第39条8項の「日数」に含まれ、当該日数分について使用者は時季指定を要しない。なお、労働者が時間単位で年次有給休暇を取得した日数分については、第39条8項の「日数」には含まれない(平成30年12月28日基発1228第15号)。 同時に改正された時間外労働の要件とは異なり、中小企業への適用猶予はなく、全ての使用者に同日から消化義務が適用される。 この場合の使用者による時季指定の方法としては、例えば、年度当初に労働者の意見を聴いた上で年次有給休暇取得計画表を作成し、これに基づき年次有給休暇を付与すること等が考えられる(平成30年9月7日基発0907第1号)。使用者は、第39条7項の規定により、労働者に年次有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たっては、あらかじめ、当該年次有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない。また、使用者は、年次有給休暇の時季を定めるに当たっては、できる限り労働者の希望に沿った時季指定となるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければならない(平成30年9月7日基発0907第1号)。前年度からの繰越分の年次有給休暇を取得した場合は、その日数分を使用者が時季指定すべき5日の年次有給休暇から控除することとなる。なお、第39条7項、8項は、労働者が実際に取得した年次有給休暇が、前年度からの繰越分の年次有給休暇であるか当年度の基準日に付与された年次有給休暇であるかについては問わないものである(平成30年12月28日基発1228第15号)。休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項であるため、使用者が第39条7項による時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載する必要がある(平成30年12月28日基発1228第15号)。 半日単位の年次有給休暇を労働者が取得した場合については、年次有給休暇を与えた場合として取り扱って差し支えない。また、労働者の意見を聴いた際に半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合においては、使用者が年次有給休暇の時季指定を半日単位で行うことも差し支えない。これらの場合において、半日単位の年次有給休暇の日数は0.5日として取り扱う(平成30年9月7日基発0907第1号)。なお時季指定を時間単位年休で行うことは認められない(平成30年12月28日基発1228第15号)。付与期間の途中に育児休業から復帰した労働者等についても、5日間の年次有給休暇を取得させなければならない。ただし、残りの期間における労働日が、使用者が時季指定すべき年次有給休暇の残日数より少なく、5日の年次有給休暇を取得させることが不可能な場合には、その限りではない(平成30年12月28日基発1228第15号)。 法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇を取得した日数分については、第39条8項の「日数」には含まれない。なお、法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇について、今回の改正を契機に廃止し、年次有給休暇に振り替えることは法改正の趣旨に沿わないものであるとともに、労働者と合意をすることなく就業規則を変更することにより特別休暇を年次有給休暇に振り替えた後の要件・効果が労働者にとって不利益と認められる場合は、就業規則の不利益変更法理に照らして合理的なものである必要がある(平成30年12月28日基発1228第15号)。 第39条7項に違反した者は、30万円以下の罰金に処せられる(第120条)。 「働き方改革関連法#有給休暇の消化義務」も参照
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