永久凍土とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 地理 > 地学 > 土壌 > 永久凍土の意味・解説 

えいきゅう‐とうど〔エイキウ‐〕【永久凍土】

読み方:えいきゅうとうど

一年じゅう地中温度セ氏零度以下で常に凍結している土地。シベリア・カナダ・グリーンランドに広く分布


永久凍土

英訳・(英)同義/類義語:permafrost

高緯度地方標高の高い地域で、通年凍結している土。

永久凍土

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/13 06:45 UTC 版)

北半球での凍土の分布。紫色の地域が永久凍土
永久凍土中の氷楔

永久凍土(えいきゅうとうど、英語: permafrost)とは、2年間以上にわたり継続して温度0℃以下をとる地盤のことである[1][2]。この用語の定義の上では、氷の存在ではなく温度条件で考える[注釈 1][2]

英語では、永久凍土のことを permafrost と表記するが、permanently frozen ground(永久に凍った土壌)の省略語で1945年に S. W. MULLER[3]によって使われた[4]

永久凍土は北半球の大陸の約20%に広がっている[5]。永久凍土の厚さは数百m(アラスカの Prudhoe Bay では650m[4])にも及ぶこともある。永久凍土の上部には夏の間融けている活動層があり、ポドゾルという酸性の土壌となり、タイガや草原となっている。活動層の厚さは年や場所によって変化するが、典型的なものでは0.6-4mの厚さである。

日本では、富士山頂上付近[6]および大雪山頂上付近[7]北アルプス立山[8]などに永久凍土が確認され、槍ヶ岳穂高連峰の大キレットカール内に存在している可能性が高いと報告されている[9]

形成と分布

永久凍土は、氷河氷床を形成するような大量の降雪が無ければ、年平均気温氷点下より低いあらゆる気候、典型的にはツンドラ気候で形成され、その規模は気候に応じて変化する。しかし、季節ごとの地面の温度変化が気温の変化より平均的に小さくなれば(上層が融けて)その深度は深くなる。もし年平均気温が0℃に近い温度まで上昇すると凍土は部分的に融解し、点在して分布するようになる。これを不連続永久凍土という。一般に、永久凍土は年平均気温が-5℃から0℃の間の気候下条件で不連続になる。年平均気温-5℃以下では凍土の融解はおこらず連続永久凍土地帯が形成される。氷期に例外的に「非氷河地域」だったシベリアアラスカは(冬は)現在より11℃寒冷であり、現在の凍土の深さは当時の気候状態を保存している。

北半球連続永久凍土境界は、極東から北方向の地域に分布する。この境界の北ではすべての地面は永久凍土もしくは氷河・氷床に覆われる。東西方向の広がりを見ると、場所によって地域的な気候の影響を受け、境界が北や南へ遷移する。南半球の場合、もしも陸地があったなら連続永久凍土境界は南極海とほぼ平行して、氷河氷床に覆われていなければ大陸のほとんどが連続永久凍土地帯であったと思われる。

最終氷期最寒冷期には連続永久凍土が現在よりもはるかに広く地上を覆っていた。ヨーロッパの氷に覆われていないすべての土地、南はポーランドのセゲドから、乾燥し干上がっていたアゾフ海まで、中国では北京まで広がっていた。日本では中部から東北にかけての高地や、北海道のほとんどが連続もしくは不連続凍土に覆われていた。北アメリカでは氷床の南端、緯度にしてニュージャージー州からアイオワ州南部、ミズーリ州の北部のきわめて狭い一帯のみにしか分布していなかった。南半球でもこの時期、ニュージーランドのオタゴ中央やアルゼンチンパタゴニアで永久凍土が形成されたいくつかの証拠がある。だが、きわめて高緯度の地域以外では不連続で、高度が極めて高い場所に限られていたようである。

永久凍土地帯に見られる特徴的な地形

永久凍土の分布する地域には、いくつかの特徴的な地形が発達する。

氷楔英語版 (ひょうせつ、ice wedge)
凍土の亀裂に染み込んだ水が楔(くさび)状に凍ったもの。
ポリゴン構造 (polygon)
地下に氷楔があるため、氷の溝で地表が多角形(polygon)のように見える地形[10]
エドマ英語版 (edoma)
氷楔が何年もかけて成長したもの。エドマ氷の含有率が高い土壌は、日本語ではエドマ層と呼ぶこともある[11]。エドマ層とは、主に更新世後期に形成された極端に多くの氷を含んだシルト質に富む第四紀堆積層である[12]
ピンゴ英語版 (pingo)
窪地に溜まった水が地表下で氷になり、地上を押し上げた地形[13]
アラス (alas)
地下氷が融けて沈んだ窪地。

融解

永久凍土の分布と深度を計測することで、近年(1998、2001年)アラスカとシベリアの永久凍土の融解が報告されたように、地球温暖化の指標になる。カナダユーコン準州では、連続永久凍土帯が1899年以来100km北へ移動した。しかし正確な記録は30年しかさかのぼれない。永久凍土にはメタンハイドレートが含まれており、融解すると、強力な温室効果ガスであるメタンや他の炭化水素を大気に放出し、世界的な温暖化を激化させると考えられている[14][15][16]。また永久凍土は北極地方の平原を安定させているが、温暖化によって侵食や建築地盤の沈下などが進むと予想される[17][18][19]

2014年ごろから、ロシア北極圏に巨大な穴が開いていることが発見されており、ロシア科学アカデミー石油ガス研究所のボゴヤブレンスキー副所長によると、永久凍土の融解により強度が低下しているとの見解がある[20]

生物

夏季を中心に、地表近くが凍結していない永久凍土地域では、タイガ針葉樹林帯)または草やコケ植物などが生えるツンドラが広がっている[21]。そこを生活圏とするトナカイのような動物もいる。

シベリアの永久凍土層からは、マンモスのような絶滅種を含む動物の死骸が化石として良好な状態で発見されて貴重な研究資料となっており、ホラアナライオンが見つかったこともある[22]

一方で、2016年にロシア連邦ヤマル半島で発生した炭疽菌感染は、永久凍土の融解により地表に露出したトナカイの死骸から菌が人間にも広がったと推測されている。地球温暖化に伴い、他の病原微生物が地上に再び現れるリスクも指摘されている[23]

永久凍土地域の建築

永久凍土上での建物やパイプラインの建設はそれらの排熱で凍土が融解して沈み込むために技術的に困難を伴う。この対策として基礎に木材やパイルを打ち込む、石材を厚く(1 - 2mの厚さ)敷き詰めた上に建造する、無水アンモニアヒートパイプを使用するなどしている。アラスカ縦断パイプラインでは、パイプラインが永久凍土に沈むのを防ぐために断熱ヒートパイプを使用している。ヤクーツクの永久凍土研究所は、大きな建物が凍結した地面に沈むのを効果的に防ぐ方法として支柱を深度15m以下まで伸ばすのが有効であるとした。この深さまで行けば季節変化の影響を受けないため、内部の温度はおよそ-5℃のまま変化しない。

脚注

注釈

  1. ^ このため、温度が0℃以下であっても、地中水凝固点降下の影響による未凍結の地盤や、水分を含まない岩盤なども永久凍土として扱われる[1]

出典

  1. ^ a b 日本地形学連合 2017, p. 37.
  2. ^ a b Goudie 2004, p. 777.
  3. ^ Muller, S W. PERMAFROST OR PERMANENTLY FROZEN GROUND AND RELATED ENGINEERING PROBLEMS US Geol. Surv. Spec. Rept., Strategic Eng. Study No. 62, 2 nd, 231 pp.
  4. ^ a b 木下誠一、永久凍土調査 地学雑誌 Vol.85 (1976) No.1 P10-27
  5. ^ 『北極圏のサイエンス』(赤祖父俊一著、誠文堂新光社)p.18
  6. ^ 藤井理行、樋口敬二、富土山の永久凍土 雪氷 Vol.34 (1972) No.4 P173-186
  7. ^ 岩花剛ほか、大雪山系における永久凍土観測 -2005~2010年- 雪氷研究大会(2011.長岡)セッションID:C3-1
  8. ^ 福井幸太郎、岩田修二、立山, 内蔵助カールでの永久凍土の発見 雪氷 Vol.62 (2000) No.1 P23-28
  9. ^ 青山雅史、気温・地温観測結果からみた飛騨山脈槍・穂高連峰における山岳永久凍土の分布状況 地理学評論 Series A Vol.84 (2011) No.1 p.44-60
  10. ^ 吉岡美紀(国立極地研究所)永久凍土の地形平塚市博物館「火星大接近2003」、2017年12月26日閲覧
  11. ^ 地下氷コア解析によるアラスカ永久凍土域の環境動態解明(平成29年度)国立環境研究所・研究紹介、2017年12月26日閲覧
  12. ^ Iwahana, Go (2013). “エドマ層研究に関する総説(その一) ─研究史の概略および気候変動との関わり─” (英語). 雪氷 75 (5): 343–352. doi:10.5331/seppyo.75.5_343. ISSN 0373-1006. https://www.jstage.jst.go.jp/article/seppyo/75/5/75_343/_article/-char/ja/. 
  13. ^ 吉岡美紀(国立極地研究所)永久凍土の地形 平塚市博物館「火星大接近2003」、2017年12月26日閲覧
  14. ^ 国立環境研究所「シベリア凍土地帯における温暖化フィードバックの研究
  15. ^ New Scientist "Climate warning as Siberia melts" 11 August 2005
  16. ^ AFPBB News「永久凍土の炭素は予想の1.5倍以上、溶解で温暖化を加速か」2008年8月26日、「シベリアの永久凍土がメタンガスを放出、温暖化加速の不安要因に」2008年9月1日、「永久凍土の融解は長期的脅威、CO2排出量は10億トン」2009年6月1日
  17. ^ 独立行政法人海洋研究開発機構「シベリアの凍土融解が急激に進行~地中の温度が観測史上最高を記録し地表面で劇的な変化が発生~」2008年1月18日
  18. ^ MSN産経ニュース「シベリアの永久凍土、急速に解け始める」2008年1月19日
  19. ^ Reuters (2019年6月18日). “Scientists shocked by Arctic permafrost thawing 70 years sooner than predicted” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/environment/2019/jun/18/arctic-permafrost-canada-science-climate-crisis 2019年7月2日閲覧。 
  20. ^ ロシア北極圏の永久凍土に巨大な穴 ドローンで調査すると…”. 2021年3月7日閲覧。
  21. ^ 飯島慈裕「永久凍土って何ですか?」海の研究探検隊JAMSTEC、webナショジオ(2017年12月27日閲覧)
  22. ^ 絶滅ライオンの子ども、氷漬けで発見 シベリア永久凍土朝日新聞DIGITAL(2017年11月15日)2017年12月27日閲覧
  23. ^ 解ける永久凍土と目覚める病原体、ロシア北部の炭疽集団発生フランス通信(AFP)日本語サイト(2016年8月15日)2017年12月27日閲覧

参考文献

関連項目

外部リンク


永久凍土

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/04 07:46 UTC 版)

タイガ」の記事における「永久凍土」の解説

樹木生長必要な水分は、夏場溶ける地下の永久凍土層から供給を受ける。皆伐森林火災一度森林失われると、永久凍土が一度溶け湿地帯形成するうになるため、森林への回復時間がかかることがある

※この「永久凍土」の解説は、「タイガ」の解説の一部です。
「永久凍土」を含む「タイガ」の記事については、「タイガ」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「永久凍土」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「永久凍土」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



永久凍土と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', ''];function getDictCodeItems(index) {return dictCodeList[index];}

すべての辞書の索引

「永久凍土」の関連用語










10
熱カルスト デジタル大辞泉
94% |||||

永久凍土のお隣キーワード
検索ランキング
';function getSideRankTable() {return sideRankTable;}

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



永久凍土のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
JabionJabion
Copyright (C) 2025 NII,NIG,TUS. All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの永久凍土 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのタイガ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS