気嚢式呼吸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 12:10 UTC 版)
古生代ペルム紀末(P-T境界)の大量絶滅により、陸上で多様化や大型化を遂げていた単弓類の一群など、数多くのグループが絶滅した。こうして空白地帯となった陸上の生態系に、さまざまなグループが競って進出し、ニッチを埋めていったと思われる。その中の一つが恐竜の祖先であった。他の競合者となったのが、鳥頸類の姉妹群でワニの祖先を含むクルロタルシ類及び、前時代からの残存勢力で哺乳類の祖先を含む単弓類であった。 ペルム紀初期の大気中の酸素濃度は35%に達したとされ、横隔膜による呼吸を採用した哺乳類型爬虫類は高酸素下では特に支障はなかった。出現当初の恐竜は比較的小型であり、ほぼ同時期に現れた哺乳類共々、陸上の脊椎動物相においてそれほどの割合を占めていなかったとされる。しかし、三畳紀末期には、恐竜の多様性が増大する。この理由のひとつとして呼吸器系の進化が提唱されている。すなわち進行する乾燥と低酸素化の環境の中、哺乳類は横隔膜を使った肺呼吸をより発達させて効率的な酸素交換を実現し、一方の恐竜は、それより更に高効率の呼吸システムを獲得していく。それが、鳥類にも見られる気嚢である。この気嚢を獲得したことで、恐竜は高い酸素摂取能力を獲得することになる。また、この気嚢が骨の中に入り込むことで中空の含気骨となり、骨格自体の軽量化にも貢献することとなった。 酸素濃度35%のペルム紀以降は、リグニンの分解能を獲得した菌類による木材の分解により酸素濃度は低下しジュラ紀後期の2億年前には酸素濃度は12%まで低下した。気嚢は、横隔膜方式よりも効率的に酸素を摂取できる機能があり、低酸素下でもその機能を維持し繁栄することができた。競合する哺乳類型爬虫類は低酸素下でその種の大部分が絶滅することとなった。
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