ぶん‐たい【文体】
文体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/27 14:35 UTC 版)
文体(ぶんたい)とは[1][2][3][4][5][6]、文章・散文のスタイルのこと。文芸評論の研究対象になり、時にはある作品の背後に作家性を見いだす際の根拠の一つとされる。
英語では、多義語 "style" の一語義である[7][8][9][10][11]。例えば「文体ミス」は "style error" という[9][10]。"style of the book" は「その本の文体」を意味する[9][10]。style の他の語義と区別して「文体」を言い表すのには "write" との組み合わせた言い回しになる[9]。また、"strain" の語義の一つでもある[12]。なお、英語の "style"、ドイツ語の "Stil"、フランス語の "style" は、「鉄筆」を意味するラテン語 "stilus(日本語音写例:ステュルス)" に由来しており、鉄筆で書かれた文章の表現上の特色、すなわち「文体」を意味するようになった[7]。
「文体」の定義
- 「和文」「漢文」「和漢混淆文」など、言語の基本的な構造・表記法の違いにより分類される文体。
- 「だ・である調」のような常体、「です・ます調」のような敬体など、文章の様式としての文体。近代以降の日本語では、文芸評論や文章読本の中で触れられ、その後の研究や実作に影響を与えた。坪内逍遥が『小説神髄』で提唱した「雅文体」「俗文体」「雅俗折衷文体」や、谷崎潤一郎が『文章読本』で提唱した「講義体」「兵語体」「口上体」「会話体」の分類などがある。書き言葉の「文体」に対し、話し言葉では「話体」(談話体)という用語を用いることもある[13]。
- 作家や作品に固有の表現としての文体。比喩などレトリックの特徴や用字・用語の使用頻度などが根拠になることもある。
- 他に、時代・世代などで区分されたある集団に固有の特徴として、文体という言葉をあてはめることもできる。「現代の若者の文体」「明治時代の書生の文体」など。
- 文の体裁。梁の蕭統(昭明太子)の文選が、賦・詩・騒・七・詔・冊・令・教・策問・表・上書・啓・弾事・牋・奏記・書・移書・檄・難・対問・設論・辞・序・頌・賛・符命・史論・史述賛・論・連・珠・箴・銘・誄・哀文・碑文・墓誌・行状・弔文・祭文の三十九類に分ける。
参考文献
- 黒木晶子[14]「論文における「だ」系と「である」系の形式の混用について」『文教国文学』第55号、広島文教女子大学国文学会、2011年、34-22頁、ISSN 0286-3065、NAID 120005762519。NCID AN00221856。
出典
- ^ 小学館『デジタル大辞泉』. “文体”. コトバンク. 2020年7月7日閲覧。
- ^ 三省堂『大辞林』第3版. “文体”. コトバンク. 2020年7月7日閲覧。
- ^ 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “文体”. コトバンク. 2020年7月7日閲覧。
- ^ 日立デジタル平凡社『世界大百科事典』第2版. “文体”. コトバンク. 2020年7月7日閲覧。
- ^ 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “文体”. コトバンク. 2020年7月7日閲覧。
- ^ 山口明穂、小田切秀雄、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “文体”. コトバンク. 2020年7月7日閲覧。
- ^ a b 日立デジタル平凡社『世界大百科事典』第2版. “スタイル”. コトバンク. 2020年7月7日閲覧。
- ^ 小学館『デジタル大辞泉』. “スタイル”. コトバンク. 2020年7月7日閲覧。
- ^ a b c d “文体”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2020年7月7日閲覧。
- ^ a b c “style”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2020年7月7日閲覧。
- ^ 小学館『プログレッシブ英和中辞典』第4版. “style”. コトバンク. 2020年7月7日閲覧。
- ^ “strain”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2020年7月7日閲覧。
- ^ 飛田 良文 [編] (2007)『日本語学研究事典』(明治書院)の「談話体」の項。
- ^ “黒木 晶子”. researchmap. 科学技術振興機構 (JST). 2020年7月7日閲覧。
関連項目
文体
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「花物語 (吉屋信子)」の記事における「文体」の解説
『花物語』に見られる独自の文体は美文調と評されるが、主語も述語も曖昧で、当時の日常生活では使われなかった古文調の言葉や文字が用いられている。本田和子は、『幻影の盾』などでアール・ヌーヴォーを思わせる美文を書いたこともある夏目漱石や、王朝文学やポール・ヴェルレーヌの訳詞などの影響があることを指摘している。 また、連載当時は『少女の友』などの雑誌の投稿欄を通して、読者同士が文通などによって交流を持つ機会も少なくなかったが、彼女たちが用いていた文体に似ているという指摘もある。
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「文体」の例文・使い方・用例・文例
- 簡潔な文体なので私はその作家が好きだ
- 簡潔な文体
- 文体の格調高さ
- 荘重な文体で書く
- 彼女の文体はどちらかといえばぎこちない
- 個性的な文体
- 美しく飾った言い回し,美文体
- その若い作家は明らかにヘミングウェイの文体を手本にして自分の文体を作りあげたようだ
- 彼は非常に独特の文体を持つ
- 気取った文体
- その作家はかなり文体が洗練されてきた
- 彼女の文体はぎこちない
- 形式的な文体で書きなさい
- 彼の初期作品は独自の文体に欠けていた
- その文体はうまく訳せない
- その作家は独特の文体を持っている
- 私は作者の文体の華麗さが好きだ。
- 動詞helpはto不定詞・原形不定詞の両方をとりますが、くだけた文体では原形不定詞が多いとされており、この例文でもそれが使われています。
- 文体が作家に持つ関係は、色彩が画家に対するのと同じである。
- 君のエッセイは文体に関してはすばらしい。
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