政策科学とは? わかりやすく解説

せいさく‐かがく〔‐クワガク〕【政策科学】

読み方:せいさくかがく

学問分野一つ。国や地方自治体など策定実施する政策について研究・分析し、より良い政策提言を行う。法学・政治学経済学など社会科学中心にさまざまな分野知識総合的に活用される


政策科学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/20 09:15 UTC 版)

政策科学(せいさくかがく、: policy science)とは、政府などの公的機関が行う政策を改善するための学問である。

概要

政策科学はその見方によってはさまざまに特徴付け、定義することが可能である。その研究領域の広さから政策研究(policy study)や政策分析(policy analysis)とも呼ばれる。政策科学を提唱した政治学者ハロルド・ラスウェルは、「社会における政策作成過程を解明し、政策問題についての合理的判断の作成に必要な資料を提供する科学[1]」であると政策科学を定義している。またドロアは政策科学を「体系的な知識、構造化された合理性および組織化された創造性を政策決定の改善のために貢献させることに関わる科学[1]」と定義する。したがって政策科学とは政策課題やその政策の費用対効果、また政策の適切な方法や社会的背景などを研究する学問であると捉えることができる。

政策科学の研究は法学政治学行政学経済学社会学などの社会科学の研究と重複する分野[2]が特に多く、学際的なアプローチが採用される。研究者も、政治法律行政経済などの知識の他、環境問題医療福祉問題、商取引先端技術など政策課題に応じた様々な分野の知識を持つ者がこの分野の研究に携わることになる。ラスウェルによれば政策科学の基本的な方向は多様でありながらも、コンテクスト志向、問題志向、そして方法多様性志向の三種類[3]が挙げられている。コンテクストを志向する政策科学では社会の制度や資源に作用しながらも価値を最適化しようとする人間の社会過程を研究する[4]ものである。問題を志向する政策科学では問題解決の一般的方法に基づいて専門的問題に対する解決策を考察する。そして方法多様性を志向する政策科学は複雑な政策過程を把握できるように複合的な研究方法を総合して研究する。

歴史

分野の成立については、第二次世界大戦中のアメリカが起源であるとする説がある。

アメリカの第32代大統領のフランクリン・ルーズベルトによる、アメリカ史上初ともいわれる経済計画の「ニューディール政策」が行われた。そのなかで、国家復興法、農業調整法、テネシー渓谷開発公団の設立などの国家計画が次々と発表され、統計や科学的管理の手法を用いた政府の行政管理が行われた。このような積極的な政策介入が、政府部門に社会科学者の流入をもたらし[5]、戦後の大統領経済諮問委員会設立へとつながった。

政策科学の最も顕著な成長は、60年代からである[6]ケネディ政権からジョンソン政権まで、行われた「偉大な社会(en:Great Society)」プログラムによって、史上まれに見るほどの社会実験が行われた、全米にシンクタンクや政策系大学の発展をもたらした。特に、ケネディ政権下で行われた、教育、住宅、保健政策は、完全雇用や黒人などのマイノリティーへの支援策は、「対貧困戦争」と呼称され、政策評価法などの法整備も進んだ[7]

政策科学に関する研究科・学部・学科を持つ大学・大学院

国公立大学

私立大学

国公立大学大学院

私立大学大学院

関連文献

  • Allison, G. J. 1971. Essence of decision: Explaining the Cuban missile crisis. Boston: Little, Brown & Co.
  • Arrow, K. J. 1954. Social choice and individual values. 2nd edition. New York: John Wiley.
    • ケネス・アロー著、長名寛明訳『社会的選択と個人的評価』日本経済新聞社、1977年
  • Bachrach, P. and Baratz, M. 1970. Power and poverty: Theory and practice. New York: Oxford Univ. Press.
  • Banfield, E. 1961. Political influence. New York: Free Press.
  • Barnard, C. I. 1938. The function of the executive. Cambridge, Mass.: Harvard Univ. Press.
  • Dery, D. 1984. Problem definition in policy analysis. Lawrence: Univ. of Kansas Press.
  • Hargrove, E. 1976. The missing link: The study of implementation of local policy. Washington, D.C.: Urban Institute.
  • Hawkesworth, M. 1988. Theoretical Issues in policy analysis. Albany, N.Y.: SUNY Press.
  • Hogwood, B. and Gunn, L. 1984. Policy analysis for the real world. Oxford: Oxford Univ. Press.
  • Kingdon, J. 1984. Agendas, alternatives and public policy. Boston: Little, Brown & Co.
  • Lindblom, C. 1965. The intelligence of democracy. New York: Free Press.
  • Lindblom, C. 1968. The policy making process. Englewood Cliffs, N.J.: Pretice-Hall.
  • Lindblom, C. 1977. Politics and markets. New York: Basic Books.
  • Meier, K. 1979. Politics and Bureaucracy: Policymaking in the fourth branch of government. North Scituate, Me.: Duxbury Press.
  • Palumbo, D. and Calista, D. 1990. Implementation and the policy making process: Opening up the black box. Westport, Conn.: Greenwood Press.
  • Pressman, F. and Wildavsky, A. 1973. Implementation. Berkeley: Univ. of California Press.
  • Ripley, R. and Franklin, G. 1982. Bureaucracy and policy implementation. Homewood, Ill.: Dorsey Press.
  • Simon, H. 1957. Administrative behavior 2nd edition. London: Macmillan.
    • ハーバート・サイモン著、桑田耕太郎、西脇暢子、高柳美香、高尾義明、二村敏子訳『新版 経営行動 経営組織における意思決定過程の研究』ダイヤモンド社、新版2009年
  • Simon, H. 1957. Models of man. London: John Wiley.
  • Simon, H. The new science of management decision. Englewood Cliffs. N.J.: Prentice-Hall.
  • Simon, H. 1983. Reason in Human Affairs. Oxford: Basil Blackwell.
  • Starling, G. 1977. Managing the public sector. Homewood, Ill.: Dorsey Press.
  • Weber, M. 1978. Economy and Society. eds. G. Roth and c. Wittich. Berkeley and Los Angeles: University of California Press.

参考文献

  • 宮川公男『政策科学入門』第2版、東洋経済新報社、2002

脚注

  1. ^ a b 宮川(2002) p.51
  2. ^ 宮川(2002) p.72
  3. ^ 宮川(2002) p.53
  4. ^ 宮川(2002) pp.56-57
  5. ^ 宮川(2002) p.11
  6. ^ 宮川(2002) p.29
  7. ^ 宮川(2002) pp.30-31

関連項目


政策科学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 07:54 UTC 版)

景観」の記事における「政策科学」の解説

鳥越皓之ほか『景観形成地域コミュニティ』では冒頭で「ここでいう景観 (scenery) は、景色とか風景などと言い換えてもよい広い意味で使っている。」と言明し一般用語としての用法とっている。鈴鹿市説明によれば景観とは「景」(空間的なものの存在)と「観」(見る人の感じ印象価値観)の合成語であり、地域視覚的特性だという。 また社会学者吉田民人は、景観情報一種とみなすことができる、としている。景観は常に情報発信しており、人々景観対し感動覚えることを情報受信考えることができる。この場合情報発信者たる土地構造物などの所有者管理者は、自ら情報発信しているという意識はなく、私有ならば基本的に景観を見る人(情報受信者)に対して配慮義務はないと思われている。 景観破壊起因する景観論争環境権議論テーマ主要課題であり、訴訟対象となることもある。

※この「政策科学」の解説は、「景観」の解説の一部です。
「政策科学」を含む「景観」の記事については、「景観」の概要を参照ください。

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