摩擦抗力とは? わかりやすく解説

抗力

(摩擦抗力 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/28 07:27 UTC 版)

流体の中にある板の揚力と抗力

抗力(こうりょく、: drag)とは、流体(液体や気体)中を移動する、あるいは流れの中におかれた物体にはたらくの、流れの速度に平行な方向で同じ向きの成分(分力)である。流れの速度方向に垂直な成分は揚力という。

追い風で水面をかき分けて進んでいる帆船は、空気から進行方向の抗力を、それより弱い逆方向の抗力を水から受けている。また、レーシングカー等ではマイナスの揚力でダウンフォースを発生させている。抗力も揚力もケースバイケースで、その方向が字義通りではない場合がある。

数学的表現

抗力は物体の相似比の2乗(あるいは投影面積)に比例する。また、レイノルズ数が小さいときは速度に、大きいときは流体の密度と流速の2乗に比例し[1]、後述する抗力係数 CD を用いて以下のような数式モデルで表されるのが一般的である。このモデルは係数が異なるだけで揚力と同形式である。

誘導抗力発生の原理: 図は翼周りの流れ場を a は前方、b は左翼側から見ている(非粘性流れを想定)。1. 翼端渦, 2. 吹き下ろし, 3. 気流, 4. 吹き下ろしによる下向きの気流, 5. 下向きの気流により発生した揚力, 6. 気流により発生した揚力(いわゆる揚力), 7. 誘導抗力
翼端を持つ三次元翼(つまり、一般の翼)において、揚力の発生に伴って発生する抗力。
無限翼(二次元翼)に気流が翼に当たった場合には、翼を通過した気流は当たる前の同じ方向に流れ、揚力は流れる気流に対して垂直に発生する。ところが翼端を持つ三次元翼は、翼上面はベルヌーイの定理により翼下面よりも圧力が低くなっているため、翼端では下から上へと回り込む(翼端渦)が発生している。この渦の持つ下向きの速度(吹き下ろし downwash)によって、気流が翼に当たった場合には、翼を通過した気流は下向きに傾いて流れる。これにより、流れる気流に垂直に対して発生する揚力は下流方向に傾くことになり、その傾いた分が誘導抗力となる。また、翼によって下向きに傾かれた気流により、翼と下向きに傾かれた気流とのなす角度の迎角が発生するため、これを誘導迎角と呼んでいる。[3][4].
主翼がより細長く、つまりアスペクト比が大きくなる(二次元翼に近づく)につれて、翼全体に対して翼端が占める割合は小さくなり、吹き下ろしの影響も小さくなる。したがって、誘導抗力を低減することができる。亜音速の飛翔体では、十分に流線形をしている限り圧力抗力は小さく、一方で摩擦抗力の大幅な低減は難しい。そこで、誘導抗力を減らすためにアスペクト比 (AR) を大きく(翼を細長く)する努力が払われることが多い。この極端な例がルータン ボイジャーヘリオス、あるいはグライダー人力飛行機といった機体であり、AR = 40 近いものまで存在する。
主翼において誘導抗力は主翼の抗力の1つとなるため、主翼翼端にウィングレットを取り付けて、主翼の翼端で発生する翼端渦を抑えることで誘導抗力を減らし抗力を減少させることができる。
有害抗力(parastic drag, parasite drag)
揚力の有無には無関係に存在する抗力。干渉抗力と形状抗力とに大別される。
干渉抗力 (interference drag)
と胴体の結合部分などで部分的に気流が剥離することにより生ずる抗力。フィレットなどにより低減が図られる。
形状抗力(form drag, proflie drag)
物体の形状のみに依存する抗力。原因となる力の方向によって2つに分けられる。
垂直力によるもの
物体後方で圧力が低下することに起因する。とくに流れが剥離した場合に著しく増大する。
この抗力を圧力抗力と呼ぶこともある。
せん断力によるもの
物体表面に沿った力による抗力で、流れとの摩擦による抗力に等しい。境界層の状態に大きく影響され、層流であるほうが乱流であるよりも小さい。
この抗力を摩擦抗力と呼ぶこともある。
造波抗力(wave drag)
衝撃波による抗力。

力の向きによる分類

摩擦抗力
物体表面に沿った力に起因する抗力。粘性抵抗とも呼ばれる。せん断力による形状抗力に等しい。半径

鳥の初列風切には翼端に発生する翼端渦を抑えて誘導抗力を減らすことで翼への抗力を減少させる効果がある

  • 飛行機の主翼翼端に取付けられたウィングレットは主翼翼端に発生する翼端渦を抑えて誘導抗力を減らすことで主翼への抗力を減少させる効果がある(A350

  • 細長い翼をもつグライダー。アスペクト比は20程度

  • 世界記録を持つ人力飛行機、MIT Daedalus(ダイダロス)。アスペクト比は約38

  • 脚注

    1. ^ 望月修; 市川誠司『生物から学ぶ流体力学』養賢堂、2010年、63頁。ISBN 978-4-8425-0474-2 
    2. ^ 牛山泉『風車工学入門』(2版)森北出版、2013年、50頁。ISBN 978-4-627-94652-1 
    3. ^ 東昭『流体力学』朝倉書店、1993年、pp. 103-104頁。ISBN 4-254-23623-9 
    4. ^ Anderson, Jr., John D. (2001). Fundamentals of Aerodynamics, 3rd International ed.. New York: McGraw-Hill. pp. pp. 354-355. ISBN 0-07-118146-6 

    関連項目


    ウィキペディアウィキペディア

    摩擦抗力

    出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/11 09:45 UTC 版)

    抗力」の記事における「摩擦抗力」の解説

    物体表面沿った力に起因する抗力粘性抵抗とも呼ばれるせん断力による形状抗力等しい。半径

    ※この「摩擦抗力」の解説は、「抗力」の解説の一部です。
    「摩擦抗力」を含む「抗力」の記事については、「抗力」の概要を参照ください。

    ウィキペディア小見出し辞書の「摩擦抗力」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


    英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
    英語⇒日本語日本語⇒英語
      

    辞書ショートカット

    カテゴリ一覧

    ','','','','','','','','','','','','','','','','','',''];function getDictCodeItems(a){return dictCodeList[a]};

    すべての辞書の索引
























    記号

    Weblioのサービス

    「摩擦抗力」の関連用語

    1
    54% |||||







    8
    12% |||||

    9
    10% |||||


    摩擦抗力のお隣キーワード
    検索ランキング
    ';function getSideRankTable(){return sideRankTable};

       

    英語⇒日本語
    日本語⇒英語
       



    摩擦抗力のページの著作権
    Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

       
    ウィキペディアウィキペディア
    All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
    この記事は、ウィキペディアの抗力 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
    ウィキペディアウィキペディア
    Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
    Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの抗力 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

    ©2025 GRAS Group, Inc.RSS