全合成とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 全合成の意味・解説 

ぜん‐ごうせい〔‐ガフセイ〕【全合成】

読み方:ぜんごうせい

複雑な分子構造をもつ天然由来化学物質などを、最小単位原料から人工的に合成すること。


全合成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/30 21:02 UTC 版)

Jump to navigation Jump to search

有機化学における全合成(ぜんごうせい、: total synthesis)は、原則として、より単純な部品から、通常は生物学的過程の助けを受けずに行われる、複雑な有機分子の完全な化学合成である[1][2][3]。実際上は、これらの単純な部品はまとまった量で市販されており、ほとんどの場合は石油化学前駆体である。時には、大量の天然物など)が出発物質として使用される。標的分子は天然物(生体分子)、医学的に重要な活性成分、あるいは化学あるいは生物学において理論的に興味深い有機化合物などである。合成のための新たな経路は研究の過程で開発され、この経路は目的物質を開発するための初の経路となる。

歴史

初めての有機全合成は、1828年のフリードリヒ・ヴェーラーによる尿素の合成である。これによって無機前駆体から有機分子が生産できることが証明された。初の商業化された全合成は、1903年のグスタフ・コムッパ英語版による樟脳の合成および工業生産である。初期の努力は、生物資源から抽出された化学物質を組み立て、それらの生物活性を検証するために使用することに注がれていた。このように、全合成は生命力 (vital force) の存在の反証と関連している。生物学および化学の複雑さや巧妙さがより理解されるようになると、全合成の主要な目的は変化した。しかしながら、化合物が曖昧な立体化学を含んでいる時や生物活性の機構を直接評価あるいは改善するためにアナログを作る時などは、全合成は生物学的検証の道具としての地位を確保している。

今日、全合成は新たな化学反応および経路の開発のための遊び場としてしばしば正当化され、現代有機合成化学の洗練を浮かび上がらせている。時に、全合成は新規機構、触媒あるいは技術の開発に着想を与える。最終的に、全合成プロジェクトはしばしば様々な反応に及ぶため、化学反応の豊富な知識および化学的直感の強力かつ正確な感覚が必要とされるプロセス化学における研究・従事に対して化学者を鍛えることができる。

形式全合成

形式全合成(formal synthesis)は、目的とする最終産物の合成ではなく、文献に記載された最終産物の既知の前駆体の合成である。文献からBがCへの変換できることが知られているならば、化合物Aから化合物Bへの新規経路はAもまたCへと到達できることの形式的証明となる。

全合成の著名な例は、ノーベル化学賞受賞者ロバート・バーンズ・ウッドワードによって1945年から1976年の間に行われたコレステロール英語版コルチゾンストリキニーネ英語版リゼルグ酸レセルピンクロロフィルコルヒチンビタミンB12プロスタグランジンF-2aの全合成である。もう一つの代表例は150年に渡る歴史を持つキニーネの全合成である。一部の例では、分光学的手法によって決定された分子の構造が誤りであることが合成された際に明らかにされた。

イライアス・ジェイムズ・コーリーは、全合成および逆合成解析の開発における功績によって1990年のノーベル化学賞を受賞した。コーリーの研究グループは2005年にアフラトキシン全合成を、2006年にオセルタミビル全合成英語版を発表した。

脚注

  1. ^ K. C. Nicolaou, D. Vourloumis, N. Winssinger and P. S. Baran (2000). “The Art and Science of Total Synthesis at the Dawn of the Twenty-First Century” (reprint). Angewandte Chemie International Edition 39 (1): 44–122. doi:10.1002/(SICI)1521-3773(20000103)39:1<44::AID-ANIE44>3.0.CO;2-L. PMID 10649349. オリジナルの2008年5月9日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080509085550/http://www.scripps.edu/chem/nicolaou/images/pdfs/MS456.pdf. 
  2. ^ Nicolaou, K. C.; Sorensen, E. J. (1996). Classics in Total Synthesis: Targets, Strategies, Methods. Wiley. ISBN 978-3-527-29231-8. 
  3. ^ Nicolaou, K. C.; Snyder, S. A. (2003). Classics in Total Synthesis II: More Targets, Strategies, Methods. Wiley. ISBN 978-3-527-30684-8. 

関連項目

外部リンク


全合成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 15:49 UTC 版)

イライアス・コーリー」の記事における「全合成」の解説

コーリー研究グループ数多く天然物全合成を完成させている。1950年から、コーリー研究グループ合成した化合物は少くとも265種類上る1969年プロスタグランジン類の全合成はまさに芸術的であるといわれるまた、全合成で必要なシントンという概念考えだしている。 その他に有名なものを以下に示す。 ロンギホレン (longifolene) ギンコライドA, B (ginkgolide A, B) ラクタシスチン (lactacystin) ミロエストロール (miroestrol) エクテナサイジン743 (ecteinascidin 743) サリノスポラミド A (Salinosporamide A) 2006年には抗インフルエンザ薬オセルタミビルタミフル)の短工程での全合成を発表し、「世界のための研究であるから」として特許取得しなかった。

※この「全合成」の解説は、「イライアス・コーリー」の解説の一部です。
「全合成」を含む「イライアス・コーリー」の記事については、「イライアス・コーリー」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「全合成」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

','','','','','','','','','','','','','','','','','',''];function getDictCodeItems(a){return dictCodeList[a]};

すべての辞書の索引

「全合成」の関連用語











全合成のお隣キーワード
検索ランキング
';function getSideRankTable(){return sideRankTable};

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



全合成のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの全合成 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのイライアス・コーリー (改訂履歴)、ケンドマイシン (改訂履歴)、ストリキニーネ (改訂履歴)、ドデカヘドラン (改訂履歴)、有機合成化学 (改訂履歴)、プレウロムチリン (改訂履歴)、ヒドラスチン (改訂履歴)、トラベクテジン (改訂履歴)、ガランタミン (改訂履歴)、リネアチン (改訂履歴)、カビクラリン (改訂履歴)、ロンギホレン (改訂履歴)、アブシンチン (改訂履歴)、チオストレプトン (改訂履歴)、テトロドトキシン (改訂履歴)、スタウロスポリン (改訂履歴)、バンコマイシン (改訂履歴)、レシニフェラトキシン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS