ノーサイド
ノーサイドとは、ノーサイドの意味
ノーサイド(no side)とは、ラグビーで試合が終了した状態のこと。ラグビーの試合が終わり、敵味方の区別(side)がなくなる(no)ことから来ている。ここから転じ、両者の戦いが終わった後、互いの活躍を労う意味や、諍いを起こしていた2者が和解する意味でこの語が比喩的に使用されることがある。ラグビーの試合という文脈で用いる場合は「南高校ラグビー部は、後半4分に西島のトライで得たリードを守りきったまま、ノーサイドを迎えた」、比喩的に用いる場合は「原告側と被告側の主張は平行線を辿る一方であり、いつノーサイドが訪れるかはわからない」という使い方をする。ラグビーの試合が終了した場合、レフェリー(主審)は「ノーサイド」と宣言して笛を吹く。ただし、英語圏ではno sideの宣言は1970年頃の使用例を最後に廃れており、以降はfull timeの語がラグビーの試合終了の意で用いられている。2020年現在、no sideを試合終了の意で用いるのは日本だけである。国際試合においても、審判が試合終了を告げる笛を吹く際にノーサイドの宣言を伴うことはなく、試合の観戦記事や実況などで用いられるのみである。
ノーサイドの起源
ノーサイドの語が使われるはっきりとした起源については記録が存在しないが、最初にこの語が使われたのは、ラグビーが誕生した頃と同時期であると言われている。1857年に出版された「トム・ブラウンの学生生活」では、ラグビー校のフットボールの試合で試合終了時に審判がno sideと宣言した、という記述が存在する。ラグビー発祥の地であるイギリスでは、フットボールの試合が終わった後に両チームのメンバー全員が酒宴を開いて互いの健闘を称える「アフターマッチファンクション」という文化があり、試合が終わった後は敵味方の区別が取り払われるという観念は黎明期から存在していた。no sideの語もこうした観念を下敷きに誕生したとされている。日本におけるノーサイドの使われ方
日本にラグビーが伝わったのは明治時代であり、ノーサイドの語もその際に伝わった。その際、ラグビーは、剣道や柔道などの日本固有の武道と同様、精神性を重んじるスポーツであると解釈された。1952年にラグビー日本代表の主将を務めた新島清は、ラグビー選手に必要な4つの思想として、「自己犠牲の精神」「ノーサイド精神」「レフェリー絶対の精神」「アマチュア精神」を挙げている。こうした経緯から、ノーサイドの語は日本においてラグビーの精神性に深く関わるものとして定着した。海外ではno sideの語は使用されず、試合終了を指す語としてはfull timeが使用される。no sideは和製英語であるという説も唱えられ、その説によれば、海外でラグビーを視察した際にアフターマッチファンクションの文化に触れた日本人が、試合終了と共に敵味方の区別が取り払われる概念を端的に言い表すために作った語であるとされている。ただし、英語圏でもかつてno sideが使用されていたことは事実であり、イギリスのスポーツ専門チャンネルESPNの公式サイト上の説明では、no sideの語について「試合の終了を意味する古い言い方。『full time』と言い換えられている」と解説されているため、和製英語説はほぼ否定されている。
「ノーサイド精神」は、「試合終了のホイッスルが鳴れば全員敵味方や所属チームといった互いの違いを忘れるべき」という精神を指す。この精神はラグビーのプロスポーツ化が進んで以降も重要視されており、観客席をチーム別に分けないなどの施策に表れているほか、選手同士が互いの健闘を称え合って握手をする、花道を互いに作るなどの習慣は全世界共通で見られるものである。また、この精神性が世の中に広まった結果、ラグビーの文脈に限らず、一般的に対立する2者が円満に和解するという意味でも用いられるようになった。
ノーサイド
ノー‐サイド【no side】
ノーサイド
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/12 08:38 UTC 版)
ノーサイド(英語: no side)は、ラグビーフットボール(特にラグビーユニオン)において、試合終了のことを指す英語表現である[1][2]。
日本では現在でも使用されているが、現在の英語圏ではno sideという表現は使われなくなり、代わりにfull timeが用いられている[1][2]。日本では「ノーサイドの精神」として「試合が終われば敵も味方もなく、お互いの健闘を称え合い、感謝し、ラグビーを楽しんだ仲間として友情を深める」というラグビーの精神に重ねる言葉として説明される[3]。
ワールドラグビーは、「ラグビーではかつて審判が試合終了を宣言するために “no side” と叫んでいたが[4]、ノーサイドという表現は日本で生き残り、試合終了のホイッスルが鳴れば全員がお互いの違いをわきに置くという意味になった[4]」、またスポーツマーケティングに関わる海老塚修は「カタカナのノーサイドには、試合が終われば敵味方なく称えあうのがラグビーの精神だ、というニュアンスが込められている。試合終了をわざわざノーサイドというのは日本だけだが、そこには「ラグビー道」があることを信じたい日本人の美意識が影響していそうだ。」と述べた[5]。
出典
- ^ a b “Rugby Union | Rugby Glossary | ESPN Scrum” (English). ESPN. 2016年1月1日閲覧。
- ^ a b 「ラグビーで多発?スポーツ界の「和製英語」問題」『東洋経済オンライン』2019年7月24日。2020年1月20日閲覧。
- ^ “ラグビーの精神”. 熊谷へラグビーを見に行こう!:熊谷市. 熊谷市総合政策部ラグビータウン推進課. 2023年4月30日閲覧。
- ^ a b “From the Touchline - Wednesday, 16 October” (英語). www.worldrugby.org. Rugby World Cup Limited (2019年10月16日). 2019年10月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月23日閲覧。
- ^ 海老塚 修. “海外で使うと恥ずかしい、ちょっと残念なスポーツ用語”. VICTORY. 2023年5月1日閲覧。
関連項目
- ノーサイド (曲) - 松任谷由実による1984年発表の曲。
- ラグビーフットボール
- ラグビーユニオン#ノーサイド精神
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