「仮想重力」解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 20:53 UTC 版)
等時曲線問題の最も単純な解は、傾斜角とその傾斜角で質点が感じる重力の関係式を直接書き下すものである。傾斜角 90° の鉛直線上の質点は重力の影響を完全に受け、水平線上の質点は重力の影響を全く受けない。中間の傾斜角では質点の感じる「仮想重力」 g sin θ を受けると考えることができる。まず、望ましい振る舞いを産み出す「仮想重力」はどんなものかを調べる。 等時降下を実現するのに必要な「仮想重力」は、残りの距離に単純に比例するものであるから、以下を得る。 d 2 s d t 2 = − k 2 s {\displaystyle {\frac {\mathrm {d} ^{2}s}{{\mathrm {d} t}^{2}}}=-k^{2}s} s = A cos k t {\displaystyle s=A\cos kt} 下式が上の微分方程式の解になっていることは容易に確かめられる。また、どんな高さ A からも時間 π/(2k) で s = 0 に達することも明らかである。問題は、このような「仮想重力」を産み出す曲線をつきとめることに帰着する。 g sin θ = − k 2 s {\displaystyle g\sin \theta =-k^{2}s\,} 残り距離を明示的に表現するのは困難だが、微分することにより問題を単純化できる。 g cos θ d θ = − k 2 d s {\displaystyle g\cos \theta \,\mathrm {d} \theta =-k^{2}\,\mathrm {d} s} d s = − g k 2 cos θ d θ {\displaystyle \mathrm {d} s=-{\frac {g}{k^{2}}}\cos \theta \,\mathrm {d} \theta } この方程式は曲線の傾斜角の変化と曲線に沿った距離の変化とを関係づけている。ここでピタゴラスの定理と曲線の傾斜は傾斜角の正接に等しいことおよび三角恒等式をいくつか用いると、ds を dx を用いて表現することができる。 d s 2 = d x 2 + d y 2 = ( 1 + ( d y d x ) 2 ) d x 2 = ( 1 + tan 2 θ ) d x 2 = sec 2 θ d x 2 d s = sec θ d x {\displaystyle {\begin{aligned}\mathrm {d} s^{2}&=\mathrm {d} x^{2}+\mathrm {d} y^{2}\\\ &=\left(1+\left({\frac {\mathrm {d} y}{\mathrm {d} x}}\right)^{2}\right)\,\mathrm {d} x^{2}\\\ &=(1+\tan ^{2}\theta )\,\mathrm {d} x^{2}\\\ &=\sec ^{2}\theta \,\mathrm {d} x^{2}\\\mathrm {d} s&=\sec \theta \,\mathrm {d} x\end{aligned}}} これに最初の微分方程式を代入すると、x を θ について解くことができる。 d s = − g k 2 cos θ d θ sec θ d x = − g k 2 cos θ d θ d x = − g k 2 cos 2 θ d θ = − g 2 k 2 ( cos 2 θ + 1 ) d θ x = − g 4 k 2 ( sin 2 θ + 2 θ ) + C x {\displaystyle {\begin{aligned}\mathrm {d} s&=-{\frac {g}{k^{2}}}\cos \theta \,\mathrm {d} \theta \\\sec \theta \,\mathrm {d} x&=-{\frac {g}{k^{2}}}\cos \theta \,\mathrm {d} \theta \\\mathrm {d} x&=-{\frac {g}{k^{2}}}\cos ^{2}\theta \,\mathrm {d} \theta \\&=-{\frac {g}{2k^{2}}}\left(\cos 2\theta +1\right)\,\mathrm {d} \theta \\x&=-{\frac {g}{4k^{2}}}\left(\sin 2\theta +2\theta \right)+C_{x}\end{aligned}}} 同様に、dx を dy で表わし、y を θ について解くことができる。 d y d x = tan θ d x = cot θ d y cot θ d y = − g k 2 cos 2 θ d θ d y = − g k 2 sin θ cos θ d θ = − g 2 k 2 sin 2 θ d θ y = g 4 k 2 cos 2 θ + C y {\displaystyle {\begin{aligned}{\frac {\mathrm {d} y}{\mathrm {d} x}}&=\tan \theta \\\mathrm {d} x&=\cot \theta \,\mathrm {d} y\\\cot \theta \mathrm {d} y&=-{\frac {g}{k^{2}}}\cos ^{2}\theta \,\mathrm {d} \theta \\\mathrm {d} y&=-{\frac {g}{k^{2}}}\sin \theta \cos \theta \,\mathrm {d} \theta \\&=-{\frac {g}{2k^{2}}}\sin 2\theta \,\mathrm {d} \theta \\y&={\frac {g}{4k^{2}}}\cos 2\theta +C_{y}\end{aligned}}} φ = −2θ および r = g/4k2 を代入すると、これら x および y についての方程式は水平線を転がる円上の一点の軌跡、すなわちサイクロイドであることがわかる。 x = r ( sin ϕ + ϕ ) + C x y = r ( cos ϕ ) + C y {\displaystyle {\begin{aligned}x&=r(\sin \phi +\phi )+C_{x}\\y&=r(\cos \phi )+C_{y}\end{aligned}}} k を解き、降下時間が T = π/2k であることを用いると、降下時間を動円半径 r で表わすことができる。 r = g 4 k 2 k = 1 2 g r T = π r g {\displaystyle {\begin{aligned}r&={\frac {g}{4k^{2}}}\\k&={\frac {1}{2}}{\sqrt {\frac {g}{r}}}\\T&=\pi {\sqrt {\frac {r}{g}}}\end{aligned}}} (おおよそ Proctor (1878, pp. 135–, 139) に基く)
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