ENERGIZED DESIGN

2025年、注目の電気自動車(EV)の美しき未来のデザイン──特集「THE WORLD IN 2025」

2025年の電気自動車(EV)は、スタイルと実用性を兼ね備えたデザインで注目されることだろう。街の中、自然の中、さらには水の中でも存在感を発揮する未来のモビリティを紹介する。
2025年、注目の電気自動車(EV)の美しき未来のデザイン──特集「THE WORLD IN 2025」
PHOTOGRAPH: MITCH PAYNE

※雑誌『WIRED』日本版 VOL.55 特集「THE WORLD IN 2025」の詳細はこちら。

世界中のビジョナリーや起業家、ビッグシンカーがキーワードを掲げ、2025年の最重要パラダイムを読み解く恒例の総力特集「THE WORLD IN 2025」。全10の分野のなかでも「Gear」セクションでは、CALLUM Designs、Platypus Craft、GMC、BMW、AC Cars、そしてZero Motorcyclesの注目の電気自動車(EV)をフィーチャーしている。


CALLUM Designs_CALLUM SKYE

PHOTOGRAPH: MITCH PAYNE

元ジャガーのデザイナーであるイアン・カラムが、「Ariel Nomad」の対抗モデルとなる「CALLUM SKYE」を発表する予定で、これは市場で最も軽量なEVのひとつになる見込みだ。2026年の顧客への納車に先駆けて、25年には開発車両のテストが行なわれる。SKYEは2+2シートレイアウトを採用し、4人の乗員を運ぶ構造となっている。全長4,047mmで、前後のオーバーハングがほとんどない設計であるため、狭い道でも走行可能だとされている。生産台数は年間50~250台で、価格は80,000から110,000ポンド(約1,600万円から2,100万円)ほどになるだろうと予想されている。カラム自身がSKYEは「本格的なオフロード性能を備えている」と明言している。 〈https://callumdesigns.com/automotive〉

カラムによると、SKYEは西海岸にインスパイアされたデザインで、ふたつのバリエーションが展開される予定。オフロード向けは「CAPABLE(ケイパブル)」という名だ。最初の印象では砂地や泥道向きで、岩場を上るには不向きに見えるが、車高が高く、サスペンションのトラべル量は100mmまで対応。高いアーチと頑丈なタイヤでアスファルトから離れても安心して走行できるデザインになっている。都市向けバージョン「DYNAMIC(ダイナミック)」には、高級感のあるキャビンが用意され、市街地でのスムーズな走行を追求している。また、10分以内にバッテリーを充電可能な急速充電機能が搭載されているという。SKYEの車体は複合素材を使用し、全体の重量は1,150kgで、最軽量EVのひとつとなる見込みである。

Platypus Craft_Spearfish

長らく待ち望まれていたフランス生まれのカタマラン(双胴船)「Spearfish」は、いよいよ2025年に水上デビューを果たす予定だ。120馬力を超える電動モーター「Evoy Breeze outboard」を2基搭載し、船体の中心には座席部分である「バスケット」が設置されている。このバスケットが水中に下りることで、乗員は水中の景色も楽しめるという仕組みだ。座席には呼吸装置が備えつけられており、ダイビングの資格が不要になるという便利な設計である。潜水モードを使用しない場合は30ノット以上の速度で航行が可能だが、潜水モード時の最高速度は8ノットに制限される。〈https://platypuscraft.com/〉

GMC_Sierra EV Denali

ゼネラルモーターズ(GM)傘下でライトトラックを手がけるGMCブランドの電動ピックアップトラック「Sierra EV Denali」の新バージョンの2モデルが2025年に登場する。満充電での走行可能距離はExtended Rangeグレードが390マイル(約628km)、Max Rangeグレードが460マイル(約740km)で、これはEVにとって重要な数値である。どちらもキア(起亜自動車)や現代自動車(ヒョンデ)のEVでも採用されている800Vの急速充電(最大350kW)に対応しており、約10分で100マイル(約161km)相当の充電が可能だ。また、アダプティブサスペンション「Air Ride」により車高を2インチ(約5cm)上下でき、静止状態から時速60マイル(約97km)までの加速時間は4.5秒未満を実現している。さらに、低速時には後輪が前輪と同じ方向に回転し、斜めに進む「CrabWalk(カニ歩き)」も可能である。〈https://www.gmc.com/〉

BMW_Vision Neue Klasse X

好評を博したBMWのコンセプトカー「Vision Neue Klasse X」が2025年に実際に生産される予定で、フラッグシップ電気SUV「iX」の下位モデルに位置づけられる(噂では「Neue Klasse X」は「iX3」の名称になるという)。BMWのデザイン言語のアップデートにおいて最も歓迎されている点は、このコンセプトカーのスリム化された「キドニー・グリル」である。BMWのフロントグリルが次第に巨大化する流れに逆行し、25年モデルはクラシックな「2002」などの人気モデルを思わせるスタイルとなっている。この新しいプラットフォームには、EV界では早くも基準になりつつある800Vアーキテクチャーが採用されており、現行モデルより3割増しの走行可能距離を実現する見込みだ。〈https://www.bmw.co.jp/〉

AC Cars_Ace Classic Electric

英国最古の現役自動車メーカーであるAC Carsが、「AC Ace」の電動バージョン「Ace Classic Electric」を発表した。この車両の重量は1,134kgと非常に軽い(比較対象としてMGの「Cyberster」は1,885kgもある)。カーボンファイバーによって車体は軽量化されており、容量72kWhのバッテリーとTREMEC製の300馬力のモーターを搭載しながら、ガソリンエンジン版とほぼ同じ重量に抑えられている。ガソリンエンジン版の加速時間が静止状態から時速60マイル(約97km)まで4.6秒なので、このEVはさらに鋭い加速が期待される。AC Carsによると1回の充電で200マイル(約322km)の走行可能距離を実現するとしており、価格は27万5,000ドル(約4,200万円)から。2025年に納車が予定されている。

Zero Motorcycles_XB

2025年に登場する「XB」は、Zero Motorcyclesの「All Access(オールアクセス)」イニシアチブの一環として、多くの人に同社の高級電動バイクの魅力を届けることを目指している。オフロードと都市走行の両方に対応しており、取り外し可能なバッテリーや切り替え可能なトラクションコントロール、工場でチューンされたサスペンションを搭載している。Zero Motorcyclesのなかで最も軽量なわずか63kgのモデルで、操作性も最も高いとされている。容量2.4kWhのバッテリーは数秒で交換可能で、3時間で充電が完了する。バッテリー1個の走行可能距離は40マイル(約65km)で、最高速度は時速47マイル(約76km)。価格は4,500ポンド(約88万円)だ。 〈https://zeromotorcycles.com/〉

(Originally published in the January/February 2025 issue of WIRED UK magazine, edited by Eimi Yamamitsu)


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