凍てつく廃船、旧ソ連の基地…シベリア最北端に広がる「この世の終わり」のような12の風景

シベリア最北端のシュミット岬には荒涼とした大地が広がる。日照時間が短く色彩も乏しいため、そこで撮られた写真はまるでモノクロ写真のようだ。写真家アンドレイ・シャプランが切り取るシュミット岬の風景からは彼の地の退廃的な美しさが伝わってくる。
凍てつく廃船、旧ソ連の基地…シベリア最北端に広がる「この世の終わり」のような12の風景

シュミット岬はシベリアの最北東端に位置している。まぎれもなく遠く離れた場所だ。なかでも特にこの旧ソヴィエト連邦空軍基地は荒涼としている。あまりにも光や色彩が乏しいから、アンドレイ・シャプランがここで撮影した写真はすべてモノクロに見える。

脳裏に焼きつく『Cape North』の写真は、忘れ去られた場所を見せてくれる。そこでは、長年、放置されて崩れ去った軍事設備や軍事施設が雪の吹き溜まりに埋もれている。その寒さと荒廃を感じられそうなくらいだ。「辺りに人の気配はありません」とシャプランは語る。

旧ソ連は1954年にシュミット岬に空軍基地を建設した。冷戦の終焉でこの空軍基地はすべて使われなくなった。98年の冬の寒さでこの地域から1,000人以上の人々が避難を余儀なくされ、その後はほとんど忘れ去られてしまった。現在、この空軍基地はシュミット岬の近隣地域の空港として使われている。ロシアの発表によれば軍の駐留は復旧しているが、昨年シャプランが訪れた時はどちらかといえば荒れた状態のままだった。

シャプランは2015年11月にアナディリからヘリコプターで3時間半かけてこの地を訪れた。近くのリィルカイピを経由して移動するホッキョクグマを写真撮影することが目的だった。だが、残念なことにホッキョクグマの移動は遅れていた。そこでシャプランは空軍基地を探検することにした。「写真家の仕事には多くの運と偶然が存在します」とシャプラン氏は語る。「特に、この北の地では」

シャプランは身を切るような風に耐え、常にホッキョクグマとの遭遇を恐れながら、この地で3週間を過ごした。シャプランが到着したとき、1日の日照時間はわずか6時間で、12月にシャプランが帰宅する頃にはまったくの暗闇に移行してしまった。そこにあるのは荒涼とした景色だけだ。


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TEXT BY LAURA MALLONEE