世界はなぜ「ポケモンGo」に夢中なのか、その心理学的な理由

「Pokémon Go」(ポケモンGo)は、なぜここまで人気が出たのだろうか。心理学者などに聞いてみた。
世界はなぜ「ポケモンGo」に夢中なのか、その心理学的な理由
PHOTO: SPLASH / AFLO

「Pokémon Go」(ポケモンGO)が大人気だ。共同開発したNiantic Inc.(ナイアンティック)は数字を公表していないものの、『TechCrunch』は7月11日付けの記事で、リリース開始以降、75万回ダウンロードされたと報じている。

また、「SimilarWeb」の分析によると、ユーザーの平均ログイン時間は、1日あたり43分だという(「WhatsApp」が30分、「Instagram」が25分、「Snapchat」が22分)。

Pokémon Goはなぜここまで人気が出たのだろうか

ポケモンには20年の歴史があり、熱心なファンベースがもともと存在していたという理由もある。Pokémon Goは、すでに成功していたゲーム世界に、現実世界での双方向性というレイヤーを追加したのだ。

人々がゲームをプレイするには、さまざまな理由がある。ロール・プレイング・ゲームが好きな人もいれば、一人称視点のシューティングゲームが好きな人もいる。

「さまざまなタイプの人がゲームをプレイする動機、それぞれの人がゲームを魅力的に感じたり、プレイする気になる要素に関しては、複数の研究が行われています」と説明するのは、サイト『PsychologyofGames.com』を運営する心理学者のジェイミー・マディガンだ。

行動・ソーシャル経験・熟達・熱中・創造性・達成体験

ゲーム分析コンサルタント企業のQuantic Foundry社は、これらの要素を6つの中心的な動機に分類した。「行動、ソーシャル経験、熟達、熱中、創造性、そして達成体験」だ。

達成体験はたしかに大切だ。『Computers in Human Behavior』誌に2015年に発表された研究によると、まったく同じゲームアプリであっても、ユーザーたちは、「トロフィー(戦利品や報酬)」のないアプリよりも、それらのあるアプリのほうに真剣に取り組む可能性がより高いことが明らかとなっている。

「レヴェルアップ」できることも病み付きになる。「World of Warcraft」の人気がこれほど高いことの大きな理由だろう。

こうしたゲームの効果を、日常生活に活かす「ゲーミフィケーション」も行われている。たとえば、1万歩を歩くごとに手首のフィットネストラッカーが知らせてくれると気分がよくなるのは、そうした効果による。

こうした「達成」という要素は、ポケモン世界全体でコアになっているゲームメカニズムだ。「ポケモンをより多く獲得すれば、自分のポケモン図鑑のデータが増えるだけでなく、すでに持っているものを訓練してレヴェルアップするためのリソースも得ることができます」とマディガン氏も述べる。

人類の歴史と、AR

しかし、Pokémon Goが独特な(そしておそらく他に類を見ないほど病みつきになりやすい)理由は、このゲームアプリでは現実世界と相互作用するからだ。こうした拡張現実は、一般の店やレストランにとっての宣伝戦略(日本語版記事)や、まったく新たなゲーム市場のための鍵となる可能性がある。

人間は長い歴史において、歩き回りながら目的を達成することに取りつかれてきた。都市をアクロバティックに動き回るパルクール(日本語版記事)のことだけを指しているのはない。バードウォッチングや、フリスビーゴルフ、昆虫採集に夢中になっている友人はいないだろうか?

『ポケットモンスター』の生みの親、田尻智(現在ゲームフリーク社長)は、子どものころに好きだった昆虫採集と標本づくりからポケモンのアイデアを得たという。

ジオキャッシング(GPSを利用した宝探しゲーム)は、そうした人間の本来的な傾向を生かしたゲームなのだ。

本当の拡張現実とは、スマートフォンのスクリーンに表示されるものというよりは、ポケットの中に感じる「感覚」だ。Pokémon GoはGPSに接続されているので、ポケモンやジム、ポケストップの近くを通り過ぎたとき、スマートフォンが振動してそのことを知らせてくれる。

振動のあとで街の歩道にオーヴァーレイされたモンスターのアニメーションを見ると、たとえそれが通りの向こう側にいて、4車線の道路を走って横切らなければならないにしても、ミュウツーを捕まえたくなるかもしれない。「新しいポケモンやアイテムを得られることは、報酬です。それはとても基本的な心理的な条件付けなのです」と、マディガン氏は言う。

それには問題もあるかもしれないが、起きて外に出かける理由として使うこともできるだろう。

VIDEO BY WIRED US

TEXT BY NICK STOCKTON

TRANSLATION BY TOMOKO MUKAI, HIROKO GOHARA/GALILEO


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