イタリアの原子力発電所は解体へ

イタリア環境保護研究所(ISPRA)は初めて原子力発電所の最終的な除染作業に肯定的な評価を下した。しかし障害(と危険)はまだ多いようだ。
イタリアの原子力発電所は解体へ

数週間のうちに、イタリア経済発展省は北部、ピエモンテ州ヴェルチェッリ県のトゥリーノ原子力発電所の閉鎖を最終的に承認する予定だ。続いて、ガリッリャーノ(ナポリ近郊のカゼルタ)、カオルソ(イタリア北部、クレモナの近く)、ラティーナ(ローマ近郊)にも順番が回ってくるだろう。

解体プロセスは2000年代初頭に始まっており、20年までに終了する予定だと、プロセスの監視を行っているISPRA(Istituto Superiore per la Protezione e la Ricerca Ambientale:環境保護研究所)は説明している。除染作業によって取り出された使用済み核燃料はフランスに送られ、フランスはその後、処理された有害廃棄物をイタリアに返却する。

イタリアの選択は、世界の潮流に反している。なぜなら、ほかの国々はこの問題をはぐらかすことを選んでいるからだ。しかしイタリアがこの選択をせざるを得なかったのは、安全性に関する疑問に加えて、コストの問題があるからだ(イタリアでは電気料金のなかに「核負担金」という名目が含まれており、07年から3倍になっている)。ただしその一方で、発生する放射性廃棄物の国の最終処分場が、どこに、どうやって、いつ造られるかは明らかではない。

経済発展省の決定は、7月2日にISPRA自身が表明した肯定的な評価を受けて行われるものだ。ISPRAが発表した声明にはこのようにある。「重要な評価であり、原子力発電所閉鎖の包括的計画のためにイタリアで下されるこの種の評価で最初のものとなる。ほかのプラントにとっても刺激となる」。

ただし放射性廃棄物は、ふさわしい保管場所がないため、そのまま残るだろう。ISPRAによれば、放射性廃棄物は同発電所の内部で「適切な一時貯蔵設備の中に保管される」という。しかし、そこに危険性、つまり地震や火事が放射性物質の拡散を引き起こすことはないのだろうか?

「解体は、原子力発電所の利用が終わったあとの重要なフェーズです」。ISPRAの原子力活動監視部門の責任者ランベルト・マッテオッチはこのように説明する。「安全を保証し、将来の世代に問題を引き延ばすのを避けるために行われます。これに関しては、イタリアの責務は10年前から始まっています。そして、EU法令は来年までに導入すべき運営要件を定めています。しかし、解体はゆっくりとしたプロセスです。なぜなら、とりわけ作業者の安全を保証することが必要だからです。また、放射性崩壊を待つ期間もあります。こうしたプラントを解体することは、将来放射性物質の拡散を引き起こすかもしれない事故のリスクを減らすためにも必要です」。

潜在的に、火事は甚大な被害を引き起こすかもしれない。「自動車で走っているときにブレーキが壊れるのと同じ確率です。それでもわたしたちはクルマを使うのをやめません」。しかし、実際のところ自動車事故が巻き込む人の数は同じではないし、周りの環境に与える影響も異なる。

彼は続ける。「事故が起きたとしても、住民に許容される放射線の最大量を超えないように計算されており、採用されている予防措置が、この限界を超えることを回避するでしょう」。

解体作業は、トゥリーノ原子力発電所の場合5年から10年を必要とするだろう。しかし、これを始めることができるのは、使用済み核燃料をフランスのラ・ハーグの再処理プラントへ移してからで、来年に予定されている。そして、一連の作業の完了は、国の最終処分場の場所決定と建設の後だ。今日決定されたとしても、10年くらいかかるだろう。これは、フランスとの協定を守って、あとでわたしたちの有害廃棄物を受け取るためである。

しかし、間違っているにせよ正しいにせよNIMBYの哲学(Not In My Back Yard:「うちの裏庭以外で」)発祥の地となっていて、閣僚でさえも自分の選挙区での支持率ばかりを気にかけている国において、こうしたことを信じられるだろうか?

「確かに、このような問題に取り組むことは、政府が望んですることではありません。適切な周知のプロセスが必要であり、間違いなく大きな政治的意志が必要となるでしょう」

そして、多くの資金も必要となるだろう。わたしたちは何年間もこれを電気料金と一緒に払っている。解体作業をすでに始めたSOGIN(Società di gestione degli impianti nucleari:核プラント管理会社)は、50億ユーロの出費を核施設の除染作業のために、25億ユーロを廃棄物の国立保管場を設置するテクノロジーパーク建設のために見積もっている。

このため、ほかの国(フランスやイギリスやアメリカ)は、問題と向き合わないことを決めた。しかし、2020年には世界のほとんどすべての原子力発電所は40歳となり、解体されねばならないだろう。IAEA(International Atomic Energy Agency:国際原子力機関)によれば、今日までの世界中の使用済み核燃料のうち、全体の3分の1しか再処理は行われておらず、残りは貯蔵されているという。

要するに、こうしたすべてのことから、多くの原子力発電所には放射性廃棄物がずっと残り、「適切な一時貯蔵設備の中に保管される」のは、予定よりも「一時的」とはいかないだろうと考えられる。

しかし、解決は急を要する。というのも、わたしたちの放射性廃棄物は、こうした1970年代製の古い原子力発電所からだけでなく、病院や工場、科学研究の廃棄物からも生じるからだ。

マッテオッチは説明する。「いまは、これらは収集施設に置かれています。例えば、ローマの近くにも1つあります。しかし、最終処理にふさわしいものではありません。わたしたちは、こうした廃棄物を1年に数百立方メートル産み出しており、何千立方メートルもの廃棄物をわたしたちはずっと積み上げ続けるのです。一部は、例えば外国に送られ、圧縮され、体積を減らしてイタリアに返送されます。しかし、一時的な貯蔵にすぎず、もつのは数十年間でしょう。次の十年には、最終的な処分が必要となります」。

しかし、同じことは2003年にも言われていた。このとき法令368号は、国立の廃棄物保管場の建設を「先送り不能」と定義して、08年12月31日までに完成させることを定めていたのだ。

TEXT BY MICHELA DELL’AMICO
PHOTOGRAPHS BY WIRED IT
TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI

WIRED NEWS 原文(Italian)