2009年 01月 19日
End of the Financial World? |
2008年は、米国債と金を除く世界中の主要な市場が大暴落する、歴史的な年になりました。世界の金融界をリードしていた“はず”のウォールストリートを震源地とした未曾有の金融危機は、世界中の投資家の自信を喪失させ、また金融本来の機能である「資金の融通」も滞って、実体経済も急激に冷え込んでしまいました。
2009年は、そんな混乱の中で始まりましたが、NY Timesの年初(1月3日)のOP-ED、「The End of the Financial World as We Know It」の中で寄稿者は、「世界は、アメリカ金融界への自信を“ほぼ”喪失してしまったようだが、まだ修正のチャンスはある。では“何が”修正されるべきだろうか」という問いかけをしていました。
このOP-EDに寄稿したのは、後にLTCMを立ち上げたJohn Meriwether氏が率いた元ボンド王国Salomon Brothers(現Citigroup)の内情を描いた名著「Liar's Poker」の著者であるMichael Lewis氏と、昨年Lehman Brothersの問題を公に指摘して物議をかもしたヘッジファンド、Greenlight CapitalのマネージャーであるDavid Einhorn氏です。(後者の話はこのブログでも取り上げたと思います。)
この論説は書き出しで、世界中が憧れ、真似をしようとしていたウォールストリートが崩壊したことで、世界中に不信と自信喪失感が広がり、世界中が「アメリカでさえ何が起っているか分からなかったのだとしたら、一体誰に分かると言うんだ」と悲鳴を挙げているようだ、と指摘していました。
しかし実際は、寄稿者達も大いに認める通り、ウォールストリートの現場にいた人達や、業界を外から眺めていた人の中には、問題に早々に気づいていた人も少なくなかったように思います。(ここではウォールストリートを、本来の意味である「証券業界(証券会社+証券会社を傘下に持つ銀行」という定義で使います。)
「問題」は知られていたか
クレジットバブルの崩壊を予測した人物としてよく知られているのは、サブプライムローン問題を予期して莫大なリターンを挙げ、先日アメリカ議会の公聴会での発言を求められた、ヘッジファンドPaulson & Coのマネージャー、John Paulson氏ではないかと思います。
同氏はLBOや住宅市場が絶好調であった2004年くらいから、住宅ローン債やハイイールド債に対する格付機関の判断を疑い、信用バブルに「逆張り」することで、巨額のリターンを投資家にもたらしたと言われています。(ヘッジファンド業界誌Alpha Magazineなどによると、同氏のヘッジファンドは、2008年にも数十パーセントのリターンを上げたようです。)
NY Timesの論説の中では、空前の額の「ねずみ講詐欺」であることが昨年末に発覚した、元NASDAQ会長Bernard Madoff氏による投資スキームについて、長年に渡って証券取引委員会(SEC)に違法性の可能性を指摘し続けていたと言う、ボストンの投資運用会社Rampart (RIMCO)の元投資担当者Harry Markopolos氏の話が取り上げられていました。
Markopolos氏はSECに対し、Madoff氏の投資戦略から判断して、同氏が主張しているリターンは「数学的に」実現不可能であり、客の注文をフロントラン(顧客注文を受けた際に、自己ポジションで先に同様のトレードをする違法行為)して得ているか、単純なねずみ講(預託したお金をリターンと言って既存投資家に配分する)かのどちらかだと、再三指摘していたそうです。
大手証券のGoldman SachsもMadoff氏との取引を控えていたという話を聞くと、Markopolos氏以外にもMadoff氏のスキームに気づいていたであろう人が、ウォールストリートには少なからずいたことが伺えます。
にも拘らず問題の拡大を事前に防げなかったことや、「証券業界の人達は、問題を明らかにすることにほとんど関心を示さなかった」ことは、寄稿者が指摘するように、今回の金融危機を引き起こした問題の本質と、深く関連している点だと思います。
「Greed is bad?」
映画「Wall Street」の中で、Michael Douglas氏演じる投資家Gordon Gekkoが、「Greed(貪欲さ) is Good」と高らかに宣言し、そのスピーチがあまりに印象的で且つ金融犯罪者の言い訳のように描かれていることもあってか、メディアの論調は、金融危機の原因は「ウォールストリートの貪欲さ」であったというものが、圧倒的に多いように見受けます。
今回の金融危機に際して、証券会社の過剰な利益追求が問題であったことは疑いないですが、寄稿者も、そして奇しくもGordon Gekkoも主張していた通り、貪欲さは経済成長の原動力でもあり、そのことは共産主義経済の破綻や、バブル後の日本のように、福祉国家も経済成長(または天然資源)なしには財政破綻を免れないことからも、明らかな気がします。
よって寄稿者は、ウォールストリートの一部の人間達の貪欲さを批判しても問題解決には繋がらない、むしろ、その貪欲の暴走をコントロールできなかった「利害の一貫性が欠如したシステム」こそが問題の本質であり改革されるべき点である、と指摘しています。
例えば、投資銀行のCEOが過剰なリスクを取りつつ莫大なボーナスをもらっていた事が、よく批判の対象になります。しかし、仮にそのCEOが「こんな商売は無責任だから、弊社では参加を見送る」と宣言していれば、そのCEOがクビになり、他のCEOに取り替えられていただけだろう、と寄稿者は指摘しています。
実際、私が過去に在籍した投資銀行でも、経営陣があまりに保守的で、レバレッジドレンディングに後ろ向きであったために、何人かのインベストメントバンカーが、「顧客のニーズを満たせない」(金儲けができない)と言って、別の投資銀行に移籍して行ったことがありました。(その会社は後に非常にアグレッシブな経営者を部門トップに据えて、レバレッジドレンディングを積極化させました。)
また、今回の金融危機は、債券部(Fixed Income)が扱う分野で主に発生しましたが、某欧州系投資銀行の債券部でリスクマネージャーをしている友人は、自分達はリスクの過大さを再三指摘したが、トレーダー達はこんなに儲かる取引をなぜ控えなければいけないのか、取引を止めれば他社に遅れを取ってしまうぞと強く主張し、最終判断は、トップマネジメントに任されたと言っていました。
債券業務は金融数学が絡む複雑な分野であり、業務経験がない経営者がリスクの本質を理解していなかった可能性は否定出来ません。しかしウォールストリートのトップ達は、短期的利益の最大化のために、リスクがあると知りながらゲームを続けていた(続けざるを得なかった)可能性が高いと思います。
要するに、企業の長期利益よりも、短期的な利益の最大化を重視する風潮を作り出し、そのことをチェックできなかったシステムこそが問題だという話になると思います。では、そういった外部のチェック機能として期待される「信用格付会社」や「規制当局(SEC)」は、なぜウォールストリートの暴走を止められなかったのでしょうか。
信用格付の「信用」度?
債券取引の世界では、公平な立場から信用リスクを計測して、AAAなどの格付を付ける「信用格付会社」が存在します。代表的なところはS&PとMoody'sであり、民間企業でありながら、アメリカ政府からも公認格付機関としてのお墨付きを得ています。
しかしNY Timesの寄稿者達や、ヘッジファンドのPaulson氏が指摘している通り、格付機関はサブプライムモーゲージ債の信用格付を明らかに間違っていたばかりか、その事業ノウハウの根幹とも言える企業の信用リスクの計測すらも、大いに誤っていたことが、今回の金融危機で明らかになりました。
例えば、CDSで実質破綻に追い込まれた大手保険のAIG、住宅金融大手のFannie MaeとFreddie Mac、流動性危機を経験したGE、地方債保険会社のAmbacとMBIAは、格付機関からAAAの信用格付を得ていたそうです。(GEは今でもAAAです。)またLehman BrothersやMerrill Lynchといった証券大手も、投資適格(安全な投資先)という評価をされていたそうで、NY Timesの論説で寄稿者は、「まるで格付が高ければ高いほど、金融破綻への貢献度が大きくなるようだ」とシニカルに指摘しています。
格付機関のチェック機能が効かなかった理由は、人材不足の問題もさることながら、格付機関の利益の源泉が、上記のような金融機関が生み出す金融商品にある為だと思われます。評価をする側が、評価をされる側からの収入に依存している。まさに「利害の一貫性の欠如」と言える気がします。
実際ヘッジファンドのPaulson氏は、格付機関の評価に依存しない独立したリサーチが、サブプライム問題の発見に繋がったと言っていますし、2002年には、別のヘッジファンドGotham Partnersが「MBIAは本当にAAAか?」(当然答えは「No」)というレポートを出していたそうです。
このような明らかな構造上の問題にも拘らず、全債券市場が、格付に依存した形で取引をしていたわけですが、ガイドラインとしての格付の重要性は理解できるものの、現在の格付機関のポジショニングは、改革を余儀なくされるのではと感じます。
規制当局の「天下り」
格付会社は民間企業なので、百歩譲って、金儲けに走ってしまったことは仕方が無いとしても、投資家を保護する目的で設立され、証券業界を監督する立場にあった証券取引委員会(SEC)は、なぜ事前にMadoff氏のスキームを摘発したり、証券会社が過大なリスクを取って市場を危機に晒すことを抑えることが出来なかったのでしょうか?
寄稿者によると、その理由は単純に「天下り」問題だそうです。
同氏らが指摘するによると、SECの直近の規制部門のディレクターはJP Morganの法務部のトップに、その前任者はDeutsche Bankの法務部のトップに、そのまた前任者はCredit Suisseのマネージングディレクターのポジションに、天下りしたそうです。またMarkopolos氏がMadoffスキームの問題を指摘した際に対応をしたSECのリスク分析部門のトップの前任者も、ウォールストリートに天下りをしていたそうです。
また、金融危機が発生して以来、SECがもっとも注力した規制強化は「空売り規制」だそうですが、その目的が、金融危機を引き起こした張本人である「金融機関の保護」と、本来なら保護されるべきであり危機の原因と無関係な「投資家への懲罰」であったことは、同機関の問題を、端的に示していると言えるかもしれません。
そもそも「空売り規制」は、株価下落の防止に何の効果もないばかりか、潜在的買い手を一掃することで、むしろ状況を悪化させることが多いように思います。また、企業破綻は過剰なレバレッジによって引き起こされ、株式の空売りが企業破綻を直接引き起こすわけではありません。
にも拘らず、短期的株価対策と銘打って、空売り規制を導入することは、企業経営者のモラルハザードを助長し、将来的に問題をますます大きくしてしまうのではないかと思います。(短期的にも株価対策にならないので、まさに「踏んだり蹴ったり」ですが。)
ただ公正を期すために加えておくと、イギリスや日本を含む、世界の主だった金融規制当局は、空売り規制の導入には後ろ向きであったようです。それでも規制が実行されたのは、世論に後押しされた政治家からの強い圧力があったためだと言われています。
金融機関は「潰せない」か
NY Timesは上で紹介したOP-EDの続きとして、同じ寄稿者による「How to Repair a Broken Financial World(壊れた金融界の修復方法)」という論表も載せています。その中で取り上げられていたのが、元Goldman Sachs CEOのHank Paulson氏率いる米財務省による、金融機関救済の問題点です。
大手証券のLehman Brothersが、アメリカ政府に見捨てられてカオスの中で破綻したことで、世界中の金融市場が大混乱に落ち入り、実体経済もそこから急速に冷え込んで行ったのは、以前にも書いた通りです。Lehmanを破綻させたことは、米財務省及びFEDの最大の失敗だったという評価は、今では広く定着しつつある気がします。
しかし寄稿者は、アメリカ政府がその後に金融機関の破綻防止のためにとった対応の幾つかは、更に問題であると指摘しています。
例えば2008年11月24日に、政府はCitigroupに$20bn(約1.8兆円)の公的資金を投入していますが、それと同時に、同社の$306bn(約28兆円)に及ぶ資産への「政府保証」を発表しました。そのような大盤振る舞いが必要だった理由は、同社の「株価急落」だったそうで、それ以外の理由は一切説明されなかったそうです。
28兆円という金額は、アメリカのGDPの2%に及ぶ額であり、農業、教育、エネルギー、ホームランドセキュリティ、住宅、都市開発、交通の、各省庁の年間予算の総額を上回る規模だそうです。しかも資産を保証すると言うことは、業績改善から何のアップサイドも享受出来ないまま、納税者をリスクに晒すことになります。
NY Timesの寄稿者は、経営ミスを犯した金融機関は「破綻させるべき」だと断言しています。経営ミスをおかせば企業は破綻し、株主と経営者は一掃される。これは資本主義経済に、あるべき姿であり、モラルハザードを回避する、もっとも有効な手段だということだと思います。
ただし、Lehmanのケースのように、大手の金融機関を無秩序に破綻させると、金融市場が無意味に混乱してしまいます。Lehman破綻の被害は数多く報道されていますが、ここでもう一つ上げると、同社をプライムブローカーとして使っていた世界中のヘッジファンドが、Lehmanを通じて行っていた取引が「行方不明」になり、巨額の損失計上を迫られました。
では「大き過ぎて潰せない」金融機関のモラルハザードを防ぐには、どうすればよいのか。それは、全株式を国が取得して、明確に国有化することだというのが、寄稿者の主張です。国有化は経営者にとってもっとも避けたい事態でしょうから、理に適っていると言える気がします。
金融危機の解決策
これまでのアメリカ政府の対応では、銀行株の下落防止にもクレジットクランチ収束にも至っておらず、次期オバマ政権は、金融危機対策の積み増しを迫られることが必至という状況にあります。では具体的に何をどうすればよいのか、NY Timesへの寄稿者達は、以下のように指摘していました。
①短期の株価動向に基づく政策判断を止める
市場株価は上下するものであり、それに対応するために政策決定を急ぐのは愚である、との指摘です。実際2007年や2008年には、ワシントンが東海岸時間の日曜夕方までに対策発表を急ぐケースが多かったですが、これはアジア市場が開く前の発表を目指していた為と言われます。
株式市場の下落は、金融機関のバランスシートを悪化させ、年金運用にも多大なダメージとなることなどを考えると、政府の判断も一部は理解できます。しかし、その結果の政策が拙速で、問題の根源的解決に至らなければ、意味がない気がします。
②格付機関への「お墨付き」を取り払う
S&PとMoody'sの二大格付機関が、政府公認のステータスをもらっていたのは、過去に大失敗をしたことがないためだと聞いたことがあります。今回の経済危機によって、その状況は一変しており、現在のスキームは修正されるべきである気がします。
寄稿者達は、信用格付がそんなに重要であれば、公的機関によって提供されるべきであり、少なくとも債券の発行者(と仲介者である証券会社)からフィーを受け取るという仕組みは、禁止されるべきだと主張しています。これは「利害の一貫性」を担保するために、絶対に必要なことだと思います。
③クレジットデフォルトスワップ(CDS)を規制する
何十兆ドルの規模にも拡大し、オフバランスシートで取引される主要デリバティブ商品のCDSですが、証券会社はその機能やリスクを投資家や規制当局に詳しく説明していないと、寄稿者は主張しています。
また、Lehmanの破綻によって、「保険の売り手」にそもそも支払い能力が無いケースが多いことが明確になりました。これは誰が考えてもおかしな話であり、CDSの売り手に対して十分な支払い能力を持つことを要求すべきである、と指摘しています。(それは実質的に、CDS市場の大幅な縮小を引き起こすのではと思います。)
④銀行の資本規制を強化する
米SECは2004年に、証券会社版の自己資本規制を設けたそうですが、それは大手証券の暴走を防ぐことは出来ず、5大証券のうち3社が実質破綻に追い込まれてしまいました。生き残ったMorgan StanleyとGoldman Sachsは、銀行持ち株会社に転身し、「Basel II」と呼ばれる国際的な銀行に課せられる自己資本規制に従うことになりました。
しかしBasel IIは、「銀行は破綻を避けるために、自らリスクアセットの査定を厳しく行うはずだ」という理念に基づいた規制であるそうで、その前提条件が非常に疑わしい状況にある気がします。銀行の資本規制強化はシステム全体のレバレッジ低下に繋がるため、重要な点だと思います。(ただしレバレッジの低下は、経済成長の減速を意味することも理解しておく必要があると思います。)
⑤「大き過ぎて潰せない」会社は解体せよ
最近Citigroupが、自社の解体案を発表しましたが、これはまさに、この主張に沿った動きである気がします。かつて世界最大の金融機関であったCitigroupは、国際的な商業銀行のCitibank、大手保険会社Travelers、大手投資銀行のSalomon Brothers、大手証券のSmith Barneyなどが合併して出来た会社ですが、商業銀行と投資銀行部門だけを残す方向で調整しているようです。
住宅ローン最大手のCountrywide、大手証券のMerrill Lynchなどを次々に吸収していったBank of Americaも、2009年1月に入って、政府から追加の公的資金を受入れており、今後の動向が注目されます。
⑥SECからの天下りを禁止する
これは追加コメントの必要はないかと思いますが、寄稿者達は、経験ある投資家を規制当局に入れることは重要なので、逆方向のドアは開けておくべきだと指摘しています。ただし受入れるべきは証券会社の幹部ではなく「信頼ある投資家」だとしており、証券業界との癒着断絶の重要性を強調しています。
結論
今回の金融危機を乗り越えるために重要なことは、以前から書いている通り、ウォールストリートの周辺に存在した「利害一貫性の欠如」という構造上問題を、徹底的に解消することであると思います。
証券会社は、株主利益の最大化のためにレバレッジを利用して投資をしたり、CDSのような金融商品を売ったのだと主張するかもしれませんが、その結果が政府による救済であり、世界的な経済危機では、「そもそもウォールストリートを経済のドライバーと位置づけること自体がおかしい」と批判されても、仕方が無い気がします。
投資利益の最大化(最適化)という単純なインセンティブを持つ投資運用会社やヘッジファンドの中に、構造的問題に対して早期に警鐘を鳴らしたり、逆張りのポジションを取って投資家に利益をもたらした所が多くあった点も、興味深いと思います。
ただヘッジファンドも、業界全体では2008年は市場リターンを大きくアウトパフォームしたようですが、一方ではMadoff氏のようなスキームも存在し、「いかがわしい存在」という評価が拭いきれていない気がします。そうした評価を払拭し、怪しいファンドを一掃するには、より厳しい情報開示規制を受入れるべきではと感じます。(大手ファンドは既に自主的にSECに登録しています。)
アメリカの金融業界は、世界中からの憧れの存在から、批判と不信の対象に転落してしまいました。今週には歴史的なオバマ政権が誕生しますが、同政権が今回明らかになった問題に本格的にメスを入れて、世界からの信頼回復を得られなければ、まさに「End of the Financial World」になってしまうかもしれません。
マクロ経済も2009年には更なる悪化が予想されますが、そんな中でも金融業界が「資金の融通機能」を早々に回復して実体経済の回復に道筋を付けるとともに、世界の投資家からの信任を回復するような大胆な改革を実行することを、期待したいと思います。
以下抜粋
NY Times OP-ED
The End of the Financial World as We Know It
By MICHAEL LEWIS and DAVID EINHORN
January 3, 2009
"Good God, the world seems to be saying, if they don’t know what they are doing with money, who does?"
"The Madoff scandal echoes a deeper absence inside our financial system, which has been undermined not merely by bad behavior but by the lack of checks and balances to discourage it."
"The fixable problem isn't the greed of the few but the misaligned interests of the many."
"Obviously the greater the market pressure to excel in the short term, the greater the need for pressure from outside the market to consider the longer term. But that's the problem: there is no longer any serious pressure from outside the market. "
NY Times OP-ED
How to Repair a Broken Financial World
By MICHAEL LEWIS and DAVID EINHORN
January 3, 2009
"If a failing firm is deemed "too big" for that honor, then it should be explicitly nationalized, both to limit its effect on other firms and to protect the guts of the system."
"Our leaders have framed the problem as a "crisis of confidence" but what they actually seem to mean is "please pay no attention to the problems we are failing to address."
"It doesn't matter how transparent financial markets are if no one can understand what's inside them."
"If the S.E.C. is to restore its credibility as an investor protection agency, it should have some experienced, respected investors (which is not the same thing as investment bankers) as commissioners."
2009年は、そんな混乱の中で始まりましたが、NY Timesの年初(1月3日)のOP-ED、「The End of the Financial World as We Know It」の中で寄稿者は、「世界は、アメリカ金融界への自信を“ほぼ”喪失してしまったようだが、まだ修正のチャンスはある。では“何が”修正されるべきだろうか」という問いかけをしていました。
このOP-EDに寄稿したのは、後にLTCMを立ち上げたJohn Meriwether氏が率いた元ボンド王国Salomon Brothers(現Citigroup)の内情を描いた名著「Liar's Poker」の著者であるMichael Lewis氏と、昨年Lehman Brothersの問題を公に指摘して物議をかもしたヘッジファンド、Greenlight CapitalのマネージャーであるDavid Einhorn氏です。(後者の話はこのブログでも取り上げたと思います。)
しかし実際は、寄稿者達も大いに認める通り、ウォールストリートの現場にいた人達や、業界を外から眺めていた人の中には、問題に早々に気づいていた人も少なくなかったように思います。(ここではウォールストリートを、本来の意味である「証券業界(証券会社+証券会社を傘下に持つ銀行」という定義で使います。)
「問題」は知られていたか
クレジットバブルの崩壊を予測した人物としてよく知られているのは、サブプライムローン問題を予期して莫大なリターンを挙げ、先日アメリカ議会の公聴会での発言を求められた、ヘッジファンドPaulson & Coのマネージャー、John Paulson氏ではないかと思います。
同氏はLBOや住宅市場が絶好調であった2004年くらいから、住宅ローン債やハイイールド債に対する格付機関の判断を疑い、信用バブルに「逆張り」することで、巨額のリターンを投資家にもたらしたと言われています。(ヘッジファンド業界誌Alpha Magazineなどによると、同氏のヘッジファンドは、2008年にも数十パーセントのリターンを上げたようです。)
NY Timesの論説の中では、空前の額の「ねずみ講詐欺」であることが昨年末に発覚した、元NASDAQ会長Bernard Madoff氏による投資スキームについて、長年に渡って証券取引委員会(SEC)に違法性の可能性を指摘し続けていたと言う、ボストンの投資運用会社Rampart (RIMCO)の元投資担当者Harry Markopolos氏の話が取り上げられていました。
Markopolos氏はSECに対し、Madoff氏の投資戦略から判断して、同氏が主張しているリターンは「数学的に」実現不可能であり、客の注文をフロントラン(顧客注文を受けた際に、自己ポジションで先に同様のトレードをする違法行為)して得ているか、単純なねずみ講(預託したお金をリターンと言って既存投資家に配分する)かのどちらかだと、再三指摘していたそうです。
大手証券のGoldman SachsもMadoff氏との取引を控えていたという話を聞くと、Markopolos氏以外にもMadoff氏のスキームに気づいていたであろう人が、ウォールストリートには少なからずいたことが伺えます。
にも拘らず問題の拡大を事前に防げなかったことや、「証券業界の人達は、問題を明らかにすることにほとんど関心を示さなかった」ことは、寄稿者が指摘するように、今回の金融危機を引き起こした問題の本質と、深く関連している点だと思います。
「Greed is bad?」
映画「Wall Street」の中で、Michael Douglas氏演じる投資家Gordon Gekkoが、「Greed(貪欲さ) is Good」と高らかに宣言し、そのスピーチがあまりに印象的で且つ金融犯罪者の言い訳のように描かれていることもあってか、メディアの論調は、金融危機の原因は「ウォールストリートの貪欲さ」であったというものが、圧倒的に多いように見受けます。
今回の金融危機に際して、証券会社の過剰な利益追求が問題であったことは疑いないですが、寄稿者も、そして奇しくもGordon Gekkoも主張していた通り、貪欲さは経済成長の原動力でもあり、そのことは共産主義経済の破綻や、バブル後の日本のように、福祉国家も経済成長(または天然資源)なしには財政破綻を免れないことからも、明らかな気がします。
よって寄稿者は、ウォールストリートの一部の人間達の貪欲さを批判しても問題解決には繋がらない、むしろ、その貪欲の暴走をコントロールできなかった「利害の一貫性が欠如したシステム」こそが問題の本質であり改革されるべき点である、と指摘しています。
例えば、投資銀行のCEOが過剰なリスクを取りつつ莫大なボーナスをもらっていた事が、よく批判の対象になります。しかし、仮にそのCEOが「こんな商売は無責任だから、弊社では参加を見送る」と宣言していれば、そのCEOがクビになり、他のCEOに取り替えられていただけだろう、と寄稿者は指摘しています。
実際、私が過去に在籍した投資銀行でも、経営陣があまりに保守的で、レバレッジドレンディングに後ろ向きであったために、何人かのインベストメントバンカーが、「顧客のニーズを満たせない」(金儲けができない)と言って、別の投資銀行に移籍して行ったことがありました。(その会社は後に非常にアグレッシブな経営者を部門トップに据えて、レバレッジドレンディングを積極化させました。)
また、今回の金融危機は、債券部(Fixed Income)が扱う分野で主に発生しましたが、某欧州系投資銀行の債券部でリスクマネージャーをしている友人は、自分達はリスクの過大さを再三指摘したが、トレーダー達はこんなに儲かる取引をなぜ控えなければいけないのか、取引を止めれば他社に遅れを取ってしまうぞと強く主張し、最終判断は、トップマネジメントに任されたと言っていました。
債券業務は金融数学が絡む複雑な分野であり、業務経験がない経営者がリスクの本質を理解していなかった可能性は否定出来ません。しかしウォールストリートのトップ達は、短期的利益の最大化のために、リスクがあると知りながらゲームを続けていた(続けざるを得なかった)可能性が高いと思います。
要するに、企業の長期利益よりも、短期的な利益の最大化を重視する風潮を作り出し、そのことをチェックできなかったシステムこそが問題だという話になると思います。では、そういった外部のチェック機能として期待される「信用格付会社」や「規制当局(SEC)」は、なぜウォールストリートの暴走を止められなかったのでしょうか。
信用格付の「信用」度?
債券取引の世界では、公平な立場から信用リスクを計測して、AAAなどの格付を付ける「信用格付会社」が存在します。代表的なところはS&PとMoody'sであり、民間企業でありながら、アメリカ政府からも公認格付機関としてのお墨付きを得ています。
しかしNY Timesの寄稿者達や、ヘッジファンドのPaulson氏が指摘している通り、格付機関はサブプライムモーゲージ債の信用格付を明らかに間違っていたばかりか、その事業ノウハウの根幹とも言える企業の信用リスクの計測すらも、大いに誤っていたことが、今回の金融危機で明らかになりました。
例えば、CDSで実質破綻に追い込まれた大手保険のAIG、住宅金融大手のFannie MaeとFreddie Mac、流動性危機を経験したGE、地方債保険会社のAmbacとMBIAは、格付機関からAAAの信用格付を得ていたそうです。(GEは今でもAAAです。)またLehman BrothersやMerrill Lynchといった証券大手も、投資適格(安全な投資先)という評価をされていたそうで、NY Timesの論説で寄稿者は、「まるで格付が高ければ高いほど、金融破綻への貢献度が大きくなるようだ」とシニカルに指摘しています。
格付機関のチェック機能が効かなかった理由は、人材不足の問題もさることながら、格付機関の利益の源泉が、上記のような金融機関が生み出す金融商品にある為だと思われます。評価をする側が、評価をされる側からの収入に依存している。まさに「利害の一貫性の欠如」と言える気がします。
実際ヘッジファンドのPaulson氏は、格付機関の評価に依存しない独立したリサーチが、サブプライム問題の発見に繋がったと言っていますし、2002年には、別のヘッジファンドGotham Partnersが「MBIAは本当にAAAか?」(当然答えは「No」)というレポートを出していたそうです。
このような明らかな構造上の問題にも拘らず、全債券市場が、格付に依存した形で取引をしていたわけですが、ガイドラインとしての格付の重要性は理解できるものの、現在の格付機関のポジショニングは、改革を余儀なくされるのではと感じます。
規制当局の「天下り」
格付会社は民間企業なので、百歩譲って、金儲けに走ってしまったことは仕方が無いとしても、投資家を保護する目的で設立され、証券業界を監督する立場にあった証券取引委員会(SEC)は、なぜ事前にMadoff氏のスキームを摘発したり、証券会社が過大なリスクを取って市場を危機に晒すことを抑えることが出来なかったのでしょうか?
寄稿者によると、その理由は単純に「天下り」問題だそうです。
同氏らが指摘するによると、SECの直近の規制部門のディレクターはJP Morganの法務部のトップに、その前任者はDeutsche Bankの法務部のトップに、そのまた前任者はCredit Suisseのマネージングディレクターのポジションに、天下りしたそうです。またMarkopolos氏がMadoffスキームの問題を指摘した際に対応をしたSECのリスク分析部門のトップの前任者も、ウォールストリートに天下りをしていたそうです。
また、金融危機が発生して以来、SECがもっとも注力した規制強化は「空売り規制」だそうですが、その目的が、金融危機を引き起こした張本人である「金融機関の保護」と、本来なら保護されるべきであり危機の原因と無関係な「投資家への懲罰」であったことは、同機関の問題を、端的に示していると言えるかもしれません。
そもそも「空売り規制」は、株価下落の防止に何の効果もないばかりか、潜在的買い手を一掃することで、むしろ状況を悪化させることが多いように思います。また、企業破綻は過剰なレバレッジによって引き起こされ、株式の空売りが企業破綻を直接引き起こすわけではありません。
にも拘らず、短期的株価対策と銘打って、空売り規制を導入することは、企業経営者のモラルハザードを助長し、将来的に問題をますます大きくしてしまうのではないかと思います。(短期的にも株価対策にならないので、まさに「踏んだり蹴ったり」ですが。)
ただ公正を期すために加えておくと、イギリスや日本を含む、世界の主だった金融規制当局は、空売り規制の導入には後ろ向きであったようです。それでも規制が実行されたのは、世論に後押しされた政治家からの強い圧力があったためだと言われています。
金融機関は「潰せない」か
NY Timesは上で紹介したOP-EDの続きとして、同じ寄稿者による「How to Repair a Broken Financial World(壊れた金融界の修復方法)」という論表も載せています。その中で取り上げられていたのが、元Goldman Sachs CEOのHank Paulson氏率いる米財務省による、金融機関救済の問題点です。
しかし寄稿者は、アメリカ政府がその後に金融機関の破綻防止のためにとった対応の幾つかは、更に問題であると指摘しています。
例えば2008年11月24日に、政府はCitigroupに$20bn(約1.8兆円)の公的資金を投入していますが、それと同時に、同社の$306bn(約28兆円)に及ぶ資産への「政府保証」を発表しました。そのような大盤振る舞いが必要だった理由は、同社の「株価急落」だったそうで、それ以外の理由は一切説明されなかったそうです。
28兆円という金額は、アメリカのGDPの2%に及ぶ額であり、農業、教育、エネルギー、ホームランドセキュリティ、住宅、都市開発、交通の、各省庁の年間予算の総額を上回る規模だそうです。しかも資産を保証すると言うことは、業績改善から何のアップサイドも享受出来ないまま、納税者をリスクに晒すことになります。
NY Timesの寄稿者は、経営ミスを犯した金融機関は「破綻させるべき」だと断言しています。経営ミスをおかせば企業は破綻し、株主と経営者は一掃される。これは資本主義経済に、あるべき姿であり、モラルハザードを回避する、もっとも有効な手段だということだと思います。
ただし、Lehmanのケースのように、大手の金融機関を無秩序に破綻させると、金融市場が無意味に混乱してしまいます。Lehman破綻の被害は数多く報道されていますが、ここでもう一つ上げると、同社をプライムブローカーとして使っていた世界中のヘッジファンドが、Lehmanを通じて行っていた取引が「行方不明」になり、巨額の損失計上を迫られました。
では「大き過ぎて潰せない」金融機関のモラルハザードを防ぐには、どうすればよいのか。それは、全株式を国が取得して、明確に国有化することだというのが、寄稿者の主張です。国有化は経営者にとってもっとも避けたい事態でしょうから、理に適っていると言える気がします。
金融危機の解決策
これまでのアメリカ政府の対応では、銀行株の下落防止にもクレジットクランチ収束にも至っておらず、次期オバマ政権は、金融危機対策の積み増しを迫られることが必至という状況にあります。では具体的に何をどうすればよいのか、NY Timesへの寄稿者達は、以下のように指摘していました。
①短期の株価動向に基づく政策判断を止める
市場株価は上下するものであり、それに対応するために政策決定を急ぐのは愚である、との指摘です。実際2007年や2008年には、ワシントンが東海岸時間の日曜夕方までに対策発表を急ぐケースが多かったですが、これはアジア市場が開く前の発表を目指していた為と言われます。
株式市場の下落は、金融機関のバランスシートを悪化させ、年金運用にも多大なダメージとなることなどを考えると、政府の判断も一部は理解できます。しかし、その結果の政策が拙速で、問題の根源的解決に至らなければ、意味がない気がします。
②格付機関への「お墨付き」を取り払う
S&PとMoody'sの二大格付機関が、政府公認のステータスをもらっていたのは、過去に大失敗をしたことがないためだと聞いたことがあります。今回の経済危機によって、その状況は一変しており、現在のスキームは修正されるべきである気がします。
寄稿者達は、信用格付がそんなに重要であれば、公的機関によって提供されるべきであり、少なくとも債券の発行者(と仲介者である証券会社)からフィーを受け取るという仕組みは、禁止されるべきだと主張しています。これは「利害の一貫性」を担保するために、絶対に必要なことだと思います。
③クレジットデフォルトスワップ(CDS)を規制する
何十兆ドルの規模にも拡大し、オフバランスシートで取引される主要デリバティブ商品のCDSですが、証券会社はその機能やリスクを投資家や規制当局に詳しく説明していないと、寄稿者は主張しています。
また、Lehmanの破綻によって、「保険の売り手」にそもそも支払い能力が無いケースが多いことが明確になりました。これは誰が考えてもおかしな話であり、CDSの売り手に対して十分な支払い能力を持つことを要求すべきである、と指摘しています。(それは実質的に、CDS市場の大幅な縮小を引き起こすのではと思います。)
④銀行の資本規制を強化する
米SECは2004年に、証券会社版の自己資本規制を設けたそうですが、それは大手証券の暴走を防ぐことは出来ず、5大証券のうち3社が実質破綻に追い込まれてしまいました。生き残ったMorgan StanleyとGoldman Sachsは、銀行持ち株会社に転身し、「Basel II」と呼ばれる国際的な銀行に課せられる自己資本規制に従うことになりました。
しかしBasel IIは、「銀行は破綻を避けるために、自らリスクアセットの査定を厳しく行うはずだ」という理念に基づいた規制であるそうで、その前提条件が非常に疑わしい状況にある気がします。銀行の資本規制強化はシステム全体のレバレッジ低下に繋がるため、重要な点だと思います。(ただしレバレッジの低下は、経済成長の減速を意味することも理解しておく必要があると思います。)
⑤「大き過ぎて潰せない」会社は解体せよ
最近Citigroupが、自社の解体案を発表しましたが、これはまさに、この主張に沿った動きである気がします。かつて世界最大の金融機関であったCitigroupは、国際的な商業銀行のCitibank、大手保険会社Travelers、大手投資銀行のSalomon Brothers、大手証券のSmith Barneyなどが合併して出来た会社ですが、商業銀行と投資銀行部門だけを残す方向で調整しているようです。
住宅ローン最大手のCountrywide、大手証券のMerrill Lynchなどを次々に吸収していったBank of Americaも、2009年1月に入って、政府から追加の公的資金を受入れており、今後の動向が注目されます。
⑥SECからの天下りを禁止する
これは追加コメントの必要はないかと思いますが、寄稿者達は、経験ある投資家を規制当局に入れることは重要なので、逆方向のドアは開けておくべきだと指摘しています。ただし受入れるべきは証券会社の幹部ではなく「信頼ある投資家」だとしており、証券業界との癒着断絶の重要性を強調しています。
結論
今回の金融危機を乗り越えるために重要なことは、以前から書いている通り、ウォールストリートの周辺に存在した「利害一貫性の欠如」という構造上問題を、徹底的に解消することであると思います。
証券会社は、株主利益の最大化のためにレバレッジを利用して投資をしたり、CDSのような金融商品を売ったのだと主張するかもしれませんが、その結果が政府による救済であり、世界的な経済危機では、「そもそもウォールストリートを経済のドライバーと位置づけること自体がおかしい」と批判されても、仕方が無い気がします。
投資利益の最大化(最適化)という単純なインセンティブを持つ投資運用会社やヘッジファンドの中に、構造的問題に対して早期に警鐘を鳴らしたり、逆張りのポジションを取って投資家に利益をもたらした所が多くあった点も、興味深いと思います。
ただヘッジファンドも、業界全体では2008年は市場リターンを大きくアウトパフォームしたようですが、一方ではMadoff氏のようなスキームも存在し、「いかがわしい存在」という評価が拭いきれていない気がします。そうした評価を払拭し、怪しいファンドを一掃するには、より厳しい情報開示規制を受入れるべきではと感じます。(大手ファンドは既に自主的にSECに登録しています。)
アメリカの金融業界は、世界中からの憧れの存在から、批判と不信の対象に転落してしまいました。今週には歴史的なオバマ政権が誕生しますが、同政権が今回明らかになった問題に本格的にメスを入れて、世界からの信頼回復を得られなければ、まさに「End of the Financial World」になってしまうかもしれません。
マクロ経済も2009年には更なる悪化が予想されますが、そんな中でも金融業界が「資金の融通機能」を早々に回復して実体経済の回復に道筋を付けるとともに、世界の投資家からの信任を回復するような大胆な改革を実行することを、期待したいと思います。
以下抜粋
NY Times OP-ED
The End of the Financial World as We Know It
By MICHAEL LEWIS and DAVID EINHORN
January 3, 2009
"Good God, the world seems to be saying, if they don’t know what they are doing with money, who does?"
"The Madoff scandal echoes a deeper absence inside our financial system, which has been undermined not merely by bad behavior but by the lack of checks and balances to discourage it."
"The fixable problem isn't the greed of the few but the misaligned interests of the many."
"Obviously the greater the market pressure to excel in the short term, the greater the need for pressure from outside the market to consider the longer term. But that's the problem: there is no longer any serious pressure from outside the market. "
NY Times OP-ED
How to Repair a Broken Financial World
By MICHAEL LEWIS and DAVID EINHORN
January 3, 2009
"If a failing firm is deemed "too big" for that honor, then it should be explicitly nationalized, both to limit its effect on other firms and to protect the guts of the system."
"Our leaders have framed the problem as a "crisis of confidence" but what they actually seem to mean is "please pay no attention to the problems we are failing to address."
"It doesn't matter how transparent financial markets are if no one can understand what's inside them."
"If the S.E.C. is to restore its credibility as an investor protection agency, it should have some experienced, respected investors (which is not the same thing as investment bankers) as commissioners."
by harry_g
| 2009-01-19 01:51
| 投資銀行