北朝鮮との国交回復?!
先日、アメリカ合衆国政府は、イランに利益代表部を設置する決定を下した。アメリカとイランは、テヘランの米国大使館占拠事件後に国交を断絶しており、それから30年以上もの間、国交を回復はしていない。
しかし、イランは、アメリカに対して、在米パキスタン大使館内に利益代表部を設置しており、米国内のイラン人や対イラン貿易の管理・保護を行っているわけで、イランの石油市場もまた資源獲得における重要性を鑑みれば、今までイランにアメリカが利益代表部すら設置していなかったのが不思議なぐらいである。
このニュースを聞いて、日本国内においても、北朝鮮との国交樹立を求める声は高まっており、それでなくても利益代表部ぐらいは設置すべきであるという意見もある。
現在のところ、日本は北朝鮮に対して部分的な経済制裁を実施しているのみならず、日韓条約の関係上、(あくまでも正式には、であるが)北朝鮮の国家承認もしていないという立場であるがゆえに、利益代表部の設置の緊急性があるわけではないが、現にアメリカは、在平壌スウェーデン大使館に利益代表部を設置している以上、日本もまた設置するのが適切であるという意見に関しては、私も理解する範疇にはある。
ところが、日本の場合、国交正常化はおろか、利益代表部の設置についてでさえ、次の2点において慎重にならざるをえない。
1.利益代表部の設置は、日本による北朝鮮の国家承認を黙示的に行ったのと同じであり、日韓基本条約に抵触しかねず、事前に韓国と調整する必要がある。
2.日本の北朝鮮国内における利益代表国は中華人民共和国であり、利益代表部を設置するならば、在平壌中国大使館内に設置することになるが、中国との関係において不都合が生じる懸念がある。
とくに2の問題に関しては、瀋陽の日本領事館に対する中国警察当局の侵入事件があったぐらい、「日本利益代表部」の機密保持に懸念があるわけで、利益代表国を変更することが望ましいと、私は思っている。そういう意味では、スイスやスウェーデンといった伝統的な中立国、または、イギリスのような西側諸国に利益代表国を変更した方が良いという結論に至る可能性は十分あるだろう。
しかし、あえて私はこう提言したい。
イランかキューバを北朝鮮国内における日本の利益代表国とする。
キューバ大使館かイラン大使館内に日本利益代表部を設置する。
意外に思われるかも知れないが、反米世論・反米政権が世界一強烈なイランや、カストロ率いる反米政権のキューバは、「親日」なのである。当然、日本とイランは非常に友好的な外交関係を維持してきており、カストロは親日家であるという説もある。
なぜこの2国を提唱したいのか、といえば、理由は次のとおりになる。
1.対日感情が極めて良好である。
2.北朝鮮との関係において、比較的波が少ない関係を維持することができる国である。
3.6カ国協議のメンバーではない。
4.日本とイラン、日本とキューバの外交関係強化につながる。
5.アメリカと国交がない。
特に4.日本-イラン・日本-キューバの外交関係強化である。対北朝鮮外交を通じて、これらの国々との関係強化を図り、日本外交の質の強化をもたらしたいという願いが強く私にある。
ただ、踏まえておかねばならないのは、これは拉致問題解決に直結する措置ではない。あくまでも北朝鮮との貿易や「日本官憲が北朝鮮にいる」という状態を作り上げることが目的なのであって、それ以上の効果を期待することは無理だ、ということである。
ここまで言えば「それなら、北朝鮮との国交正常化を図れ」という意見もあるだろう。拉致問題解決に向けて国交正常化を先に行い、自由往来を求めることで交流を深めて解決するのが早道だという人がいる。ところが、国交正常化が行われたところで、人々の自由往来どころか情報収集も期待することは不可能である。ましてや拉致問題の解決など、国交正常化を行ってもまったく意味がない。イギリスのようなアメリカに近い西側諸国のみならず、スウェーデンのような中立であってですら、旅行者はもとより外交官ですら、北朝鮮当局の許可がない限りは、市内の自由行動は許されない。そのような状態で拉致問題の解決を国交正常化を行って実現することなど、可能性としてはゼロと断言するしかないのである。
北朝鮮への重要な支援国である中国やロシアが参加している6カ国協議ですら、核問題で進展がほとんど見られない。いわんや、拉致問題をや、というところである。
ちなみに、「国交回復=自由往来可能」という人に申しておきたい。
日本人は、短期観光の場合、ノービザで入国可能という国が非常に多いため、よく誤解されるのであるが、国交回復と観光目的の入国は別である。国交がない国であっても、入国先の政府が入国を許可すれば、ビザが発給され、入国が可能となる。もっとも、国交がないために、日本に領事館がなく、第三国で一時滞在を行うか、あるいは郵送でビザを入手しないといけないわけだが、入国そのものには関係ない。
逆にいえば、国交があっても入国が厳しい国もある。サウジアラビアは、メッカ巡礼目的以外に観光ビザを発給しない。この点、誤解があるので、特に注意をしていただきたいと願うばかりである。
さらに余談。日本は、国連加盟国で国交がない国は、唯一、朝鮮民主主義人民共和国だけであり、その他の国に関しては、ソマリアのように実効支配を行っている統治機構が存在しないという理由で「有名無実」になっている国を除いては、すべて国交がある。
台湾とは国交はないが、これは台湾を国家とし承認していないからであって、事実上の領事館を設置しており、普通の外国のように自由往来ができる状態であることは、すでにご存じの方も多いであろう。
しかし、イランは、アメリカに対して、在米パキスタン大使館内に利益代表部を設置しており、米国内のイラン人や対イラン貿易の管理・保護を行っているわけで、イランの石油市場もまた資源獲得における重要性を鑑みれば、今までイランにアメリカが利益代表部すら設置していなかったのが不思議なぐらいである。
このニュースを聞いて、日本国内においても、北朝鮮との国交樹立を求める声は高まっており、それでなくても利益代表部ぐらいは設置すべきであるという意見もある。
現在のところ、日本は北朝鮮に対して部分的な経済制裁を実施しているのみならず、日韓条約の関係上、(あくまでも正式には、であるが)北朝鮮の国家承認もしていないという立場であるがゆえに、利益代表部の設置の緊急性があるわけではないが、現にアメリカは、在平壌スウェーデン大使館に利益代表部を設置している以上、日本もまた設置するのが適切であるという意見に関しては、私も理解する範疇にはある。
ところが、日本の場合、国交正常化はおろか、利益代表部の設置についてでさえ、次の2点において慎重にならざるをえない。
1.利益代表部の設置は、日本による北朝鮮の国家承認を黙示的に行ったのと同じであり、日韓基本条約に抵触しかねず、事前に韓国と調整する必要がある。
2.日本の北朝鮮国内における利益代表国は中華人民共和国であり、利益代表部を設置するならば、在平壌中国大使館内に設置することになるが、中国との関係において不都合が生じる懸念がある。
とくに2の問題に関しては、瀋陽の日本領事館に対する中国警察当局の侵入事件があったぐらい、「日本利益代表部」の機密保持に懸念があるわけで、利益代表国を変更することが望ましいと、私は思っている。そういう意味では、スイスやスウェーデンといった伝統的な中立国、または、イギリスのような西側諸国に利益代表国を変更した方が良いという結論に至る可能性は十分あるだろう。
しかし、あえて私はこう提言したい。
イランかキューバを北朝鮮国内における日本の利益代表国とする。
キューバ大使館かイラン大使館内に日本利益代表部を設置する。
意外に思われるかも知れないが、反米世論・反米政権が世界一強烈なイランや、カストロ率いる反米政権のキューバは、「親日」なのである。当然、日本とイランは非常に友好的な外交関係を維持してきており、カストロは親日家であるという説もある。
なぜこの2国を提唱したいのか、といえば、理由は次のとおりになる。
1.対日感情が極めて良好である。
2.北朝鮮との関係において、比較的波が少ない関係を維持することができる国である。
3.6カ国協議のメンバーではない。
4.日本とイラン、日本とキューバの外交関係強化につながる。
5.アメリカと国交がない。
特に4.日本-イラン・日本-キューバの外交関係強化である。対北朝鮮外交を通じて、これらの国々との関係強化を図り、日本外交の質の強化をもたらしたいという願いが強く私にある。
ただ、踏まえておかねばならないのは、これは拉致問題解決に直結する措置ではない。あくまでも北朝鮮との貿易や「日本官憲が北朝鮮にいる」という状態を作り上げることが目的なのであって、それ以上の効果を期待することは無理だ、ということである。
ここまで言えば「それなら、北朝鮮との国交正常化を図れ」という意見もあるだろう。拉致問題解決に向けて国交正常化を先に行い、自由往来を求めることで交流を深めて解決するのが早道だという人がいる。ところが、国交正常化が行われたところで、人々の自由往来どころか情報収集も期待することは不可能である。ましてや拉致問題の解決など、国交正常化を行ってもまったく意味がない。イギリスのようなアメリカに近い西側諸国のみならず、スウェーデンのような中立であってですら、旅行者はもとより外交官ですら、北朝鮮当局の許可がない限りは、市内の自由行動は許されない。そのような状態で拉致問題の解決を国交正常化を行って実現することなど、可能性としてはゼロと断言するしかないのである。
北朝鮮への重要な支援国である中国やロシアが参加している6カ国協議ですら、核問題で進展がほとんど見られない。いわんや、拉致問題をや、というところである。
ちなみに、「国交回復=自由往来可能」という人に申しておきたい。
日本人は、短期観光の場合、ノービザで入国可能という国が非常に多いため、よく誤解されるのであるが、国交回復と観光目的の入国は別である。国交がない国であっても、入国先の政府が入国を許可すれば、ビザが発給され、入国が可能となる。もっとも、国交がないために、日本に領事館がなく、第三国で一時滞在を行うか、あるいは郵送でビザを入手しないといけないわけだが、入国そのものには関係ない。
逆にいえば、国交があっても入国が厳しい国もある。サウジアラビアは、メッカ巡礼目的以外に観光ビザを発給しない。この点、誤解があるので、特に注意をしていただきたいと願うばかりである。
さらに余談。日本は、国連加盟国で国交がない国は、唯一、朝鮮民主主義人民共和国だけであり、その他の国に関しては、ソマリアのように実効支配を行っている統治機構が存在しないという理由で「有名無実」になっている国を除いては、すべて国交がある。
台湾とは国交はないが、これは台湾を国家とし承認していないからであって、事実上の領事館を設置しており、普通の外国のように自由往来ができる状態であることは、すでにご存じの方も多いであろう。