地方自治の不思議
地方財政には、「普通会計」「特別会計」の2種類があります。そして、「特別会計」はさらに「その他の特別会計」と「公営事業会計」と分かれます。
「普通会計」とは、「一般会計」とほぼ同一だと考えてよいでしょう。
これは、税金で運用される一般的項目で、歳入は「地方税」「国庫支出金」「分担金及び負担金」「使用料及び手数料」等です。歳出は、「議会関係」「総務関係」「民生関係」「衛生関係」「警察消防関係」「土木関係」「農林水産関係」「商工業関係」「教育関係」と「公債費」です。
「その他特別会計」とは、特定の目的に関して独立して会計をつくるものです。
歳入は、病院ならば「診療報酬」、上下水道なら「水道料金」といった、受益を受けた住民から直接徴収したカネと、一般会計から繰り出した資金です。
「公営事業会計」とは、公営企業法という法律がありますが、この規定によって運営されている自治体の事業の会計です。「企業局」とかそういう名称で独立しているケースですね。
これは、民間企業を経営する感覚ができないですし、また、「利益」を考慮する面もありますから、経営を行いやすい比較的大きい自治体に設置されていることが多いようです。
この会計については、財務諸表は2つに分けられます。
「収益的収支」・・・一般企業とほぼ同じ財務諸表を使います。日常のオペレーションに関する会計は、こちらでカウントします。これが設置されたのは、「民間の経営センス」の導入により、どんぶり勘定の経営をやめ、効率的な運営をすることを目的としています。もちろん「利益」(赤字の場合は「損失」)が計上されます。
「資本的収支」・・・これは、設備投資や企業債関係の会計です。修繕や債務償却を「利益」で計上すると、「必要以上に条件が悪くなる」という危険性がありますから、大掛かりなものについては、こちらを使います。
ここで注意しなければならないのは、いくら「民間の経営センス」といっても、元々は「行政サービス」ですから、純粋に黒字というわけにはいきません。従って、自治体が義務的な負担を負ったり、あるいは補助金を入れて、最終利益を黒字にするケースが多いです。
自治体病院の縮小・閉鎖について、「赤字」と書かれていますが、赤字額は新聞報道に掲載されますが、では、その赤字の具体的な原因はどこにあるのか?
実は、これがものすごく不明確なのです。
「自治体がカネを入れても、収益的収支で赤字になった」のか、それとも「自治体がカネを入れないと赤字になる」のか、あるいは「設備投資が過大であり、債務償還が厳しくなった」のか。その部分を誰も発表しないために、縮小・閉鎖に賛成側にも「いったい、どこがどうして赤字なのか」という意味で信頼できませんし、反対側にも「赤字を垂れ流す気なのか?」ということになります。
ゆえに、特に自治体病院の縮小・閉鎖問題で反対に立つ人は、この部分を調べた上で、具体案を提示して、住民の賛同を得るのがいいでしょう。ちなみに、このデータは、総務省のホームページにアップされていますから、そちらをご参考ください。(かなり細かいデータまでありますよ。)
さて、私が上記の話で触れなかったものがあります。
『地方交付税』
地方交付税は、税収能力が低い地方自治体の財政を補填するために、国から支給されるものです。
これは「標準税収入額」を「標準財政規模」を割った値(財政力指数)が1.0を下回ったときに、その不足分を補填する形で支給されます。従って、この指標が1.0を超えている東京都・軽井沢町や、原発自治体は、地方交付税が支給されていません。
「標準税収入額」とは、住民税や負担金等、地方自治体が独自で徴収できるはずの収入です。
「標準財政規模」とは、人口や地理的要件、インフラ状況等を考慮して「最低、この予算が必要」とされる金額のことです。
これらの数値は、すべて計算式があります。指数は総務省が決めますが、その計算式に実際の数値を当てはめれば、自動的に出るものです。
「三割自治」という言葉があります。これは、地方財政において自治体が自由に使えるカネや権限が行政や立法の3割しかないという意味合いで使われます。
国庫支出金、都道府県支出金、その他国からの補助金といった「入り」の面で、半分以上を依存している自治体も決して少なくありませんが、実は、地方財政の歳出予算についても、「国からの委託業務」「都道府県からの委託業務」が入っているのです。国道建設の費用は、国から自治体に支給され、自治体が主管となって行う、ということです。
ゆえに、地方財政は、国・都道府県・市区町村の間において「重複部分」がかなり発生している、というわけです。
そこで「地方交付税」の話になります。
これをどう受け止めるのか、ということで、地方交付税の位置づけが変わります。
地方交付税の「定義」については、先ほど「税収能力が低い地方自治体の財政を補填」と書きました。これを『独自で徴税できない自治体に対して、国が財政援助をしている』としているのか、あるいは『住民税をいったん国で徴収してプールしておき、所得の再分配のように、累進で分配する』としているのか、この2つで考え方が違ってきます。
前者だと「依存している財源」となりますし、後者だと「本来は自主財源である」となります。
そもそもの定義は一応、「本来は自主財源」です。
しかしながら、この「地方交付税」を前者で捉えているのがいます。財務省・総務省・比較的強い自治体です。
これらは、「地方交付税」を「依存財源」として「三割自治」を住民にアピールすることで、「できるだけ自主財源を増やして、国のいいなりにならない行政をしよう」というわけですが、要するに、住民に対して増税を図っている、ということです。
比較的強い自治体は、財政力が強いために、地方交付税をもらう可能性が低くなりつつあります。そして、人口が多く、企業も多いので、「税をとる」ことが比較的容易なのです。
一方、「地方交付税」を後者で捉えているのが、東京都と弱小自治体です。
東京都は、石原知事が「東京で集めた税を東京に一銭も落とさずに、全部地方に回すのはけしからん!」ということですが、弱小自治体は「本来、自分たちのカネなんだから、減らすなんて言語道断だ!」ということで、「国に対して、もっと地方交付税をよこせ」と言っているわけです。弱小自治体は、人口も少なければ企業もほとんどないですから、財源移譲も増税も効果がありません。限界集落を多く抱えている弱小自治体に至っては、地方交付税がないともはや運営すらできない状況にもなります。
その自治体が増税を模索しているかどうかは、この「地方交付税」に対する国への取り組みを調べることで、ある程度わかってくる、ということですね。
「普通会計」とは、「一般会計」とほぼ同一だと考えてよいでしょう。
これは、税金で運用される一般的項目で、歳入は「地方税」「国庫支出金」「分担金及び負担金」「使用料及び手数料」等です。歳出は、「議会関係」「総務関係」「民生関係」「衛生関係」「警察消防関係」「土木関係」「農林水産関係」「商工業関係」「教育関係」と「公債費」です。
「その他特別会計」とは、特定の目的に関して独立して会計をつくるものです。
歳入は、病院ならば「診療報酬」、上下水道なら「水道料金」といった、受益を受けた住民から直接徴収したカネと、一般会計から繰り出した資金です。
「公営事業会計」とは、公営企業法という法律がありますが、この規定によって運営されている自治体の事業の会計です。「企業局」とかそういう名称で独立しているケースですね。
これは、民間企業を経営する感覚ができないですし、また、「利益」を考慮する面もありますから、経営を行いやすい比較的大きい自治体に設置されていることが多いようです。
この会計については、財務諸表は2つに分けられます。
「収益的収支」・・・一般企業とほぼ同じ財務諸表を使います。日常のオペレーションに関する会計は、こちらでカウントします。これが設置されたのは、「民間の経営センス」の導入により、どんぶり勘定の経営をやめ、効率的な運営をすることを目的としています。もちろん「利益」(赤字の場合は「損失」)が計上されます。
「資本的収支」・・・これは、設備投資や企業債関係の会計です。修繕や債務償却を「利益」で計上すると、「必要以上に条件が悪くなる」という危険性がありますから、大掛かりなものについては、こちらを使います。
ここで注意しなければならないのは、いくら「民間の経営センス」といっても、元々は「行政サービス」ですから、純粋に黒字というわけにはいきません。従って、自治体が義務的な負担を負ったり、あるいは補助金を入れて、最終利益を黒字にするケースが多いです。
自治体病院の縮小・閉鎖について、「赤字」と書かれていますが、赤字額は新聞報道に掲載されますが、では、その赤字の具体的な原因はどこにあるのか?
実は、これがものすごく不明確なのです。
「自治体がカネを入れても、収益的収支で赤字になった」のか、それとも「自治体がカネを入れないと赤字になる」のか、あるいは「設備投資が過大であり、債務償還が厳しくなった」のか。その部分を誰も発表しないために、縮小・閉鎖に賛成側にも「いったい、どこがどうして赤字なのか」という意味で信頼できませんし、反対側にも「赤字を垂れ流す気なのか?」ということになります。
ゆえに、特に自治体病院の縮小・閉鎖問題で反対に立つ人は、この部分を調べた上で、具体案を提示して、住民の賛同を得るのがいいでしょう。ちなみに、このデータは、総務省のホームページにアップされていますから、そちらをご参考ください。(かなり細かいデータまでありますよ。)
さて、私が上記の話で触れなかったものがあります。
『地方交付税』
地方交付税は、税収能力が低い地方自治体の財政を補填するために、国から支給されるものです。
これは「標準税収入額」を「標準財政規模」を割った値(財政力指数)が1.0を下回ったときに、その不足分を補填する形で支給されます。従って、この指標が1.0を超えている東京都・軽井沢町や、原発自治体は、地方交付税が支給されていません。
「標準税収入額」とは、住民税や負担金等、地方自治体が独自で徴収できるはずの収入です。
「標準財政規模」とは、人口や地理的要件、インフラ状況等を考慮して「最低、この予算が必要」とされる金額のことです。
これらの数値は、すべて計算式があります。指数は総務省が決めますが、その計算式に実際の数値を当てはめれば、自動的に出るものです。
「三割自治」という言葉があります。これは、地方財政において自治体が自由に使えるカネや権限が行政や立法の3割しかないという意味合いで使われます。
国庫支出金、都道府県支出金、その他国からの補助金といった「入り」の面で、半分以上を依存している自治体も決して少なくありませんが、実は、地方財政の歳出予算についても、「国からの委託業務」「都道府県からの委託業務」が入っているのです。国道建設の費用は、国から自治体に支給され、自治体が主管となって行う、ということです。
ゆえに、地方財政は、国・都道府県・市区町村の間において「重複部分」がかなり発生している、というわけです。
そこで「地方交付税」の話になります。
これをどう受け止めるのか、ということで、地方交付税の位置づけが変わります。
地方交付税の「定義」については、先ほど「税収能力が低い地方自治体の財政を補填」と書きました。これを『独自で徴税できない自治体に対して、国が財政援助をしている』としているのか、あるいは『住民税をいったん国で徴収してプールしておき、所得の再分配のように、累進で分配する』としているのか、この2つで考え方が違ってきます。
前者だと「依存している財源」となりますし、後者だと「本来は自主財源である」となります。
そもそもの定義は一応、「本来は自主財源」です。
しかしながら、この「地方交付税」を前者で捉えているのがいます。財務省・総務省・比較的強い自治体です。
これらは、「地方交付税」を「依存財源」として「三割自治」を住民にアピールすることで、「できるだけ自主財源を増やして、国のいいなりにならない行政をしよう」というわけですが、要するに、住民に対して増税を図っている、ということです。
比較的強い自治体は、財政力が強いために、地方交付税をもらう可能性が低くなりつつあります。そして、人口が多く、企業も多いので、「税をとる」ことが比較的容易なのです。
一方、「地方交付税」を後者で捉えているのが、東京都と弱小自治体です。
東京都は、石原知事が「東京で集めた税を東京に一銭も落とさずに、全部地方に回すのはけしからん!」ということですが、弱小自治体は「本来、自分たちのカネなんだから、減らすなんて言語道断だ!」ということで、「国に対して、もっと地方交付税をよこせ」と言っているわけです。弱小自治体は、人口も少なければ企業もほとんどないですから、財源移譲も増税も効果がありません。限界集落を多く抱えている弱小自治体に至っては、地方交付税がないともはや運営すらできない状況にもなります。
その自治体が増税を模索しているかどうかは、この「地方交付税」に対する国への取り組みを調べることで、ある程度わかってくる、ということですね。