ついに1米ドル=100円台にまで進んだ円安。日本のメディアには「あなたの生活に影響は?」というような記事が連日並んでいるが、読者の皆さんは影響を感じていますか? 上海にいる私は実感しています。好物のとんかつを、おいそれとは食べられなくなりました。

 2013年1月、上海有数の繁華街・南京西路にある日系百貨店地下のフードコートに、日本の有名とんかつチェーン店が入居した。オープン早々、早速食べに行ってみると、オーダーを受けてからその場で揚げるとんかつは、日本で何度も食べた懐かしい味そのまま。キャベツもたっぷりついていて、うれしくなってしまった。値段はロースかつ御膳が62元、持ち帰り用のロースかつ弁当が52元だ。

 私はかれこれ20数年、中国語圏で暮らしているのだが、ものの値段についてはどうしても「円ではいくらになるのか」と考えてしまう。円・人民元相場は過去2年ほど、ほぼ1元=12円台で推移してきたので、それに照らすと弁当は620円で、御膳は750円。弁当の方なら、ワンコインに少しだけプラス、の水準で収まる。この店がオープンした2013年1月は既に安倍政権の発足後で円安が進行し始めており、1元=14円台に突入していたのだが、「また円高に振れるかもしれないし、去年(2012年)までの12円で計算しておけばいいや」などと自分をだましながら、時折とんかつを楽しんでいた。

 ところが1米ドル=100円を突破すると、円・人民元レートも16円台に突入。この原稿を書いている時点では17円にならんとする水準にまで来ている。こうなると、620円だった弁当は880円と、ワンコインからはほど遠い値段に…。750円だった御膳は1050円と、1000円の大台を突破してしまった。言うまでもなく店頭価格が値上がりしたわけではないのだが、心理的な負担は大きい。もちろん、とんかつだけでなく、円換算ではあらゆるものの値段が上がったわけで、円安で私の財布のヒモは随分きつく締まったのである。